穴に落ちて……あなたは、誰?
ひゅううううっと、吸い込まれるように私は落ちていった。
「だ、誰か、助けてぇえええええ!!」
もう一度、声を張り上げる。
もちろん、助ける者など……とそのとき、ふわりと、何かが横切った。
とん、という音と共に、私は着地した。
ううん、私じゃない。
「大丈夫?」
「ふ、ふええ?」
ちょっと跳ねた茶髪に黒縁眼鏡をつけた……い、イケメンっ!?
彼がにこっと笑って。
「怪我はない?」
私はその素敵な笑顔にやられて、答える代わりに首を横に振った。
「よかった」
「え、えっと……そ、その、下ろして……くれませんか?」
「あ、ごめん。つい」
ちょっと待って、つい、何ですか?
突っ込む前に彼はすとんと、私を地面に立たせてくれました。
ついでにいうと、さっきまでお姫様だっこされてました。ええ。
うう、思い出すだけで、顔が火照る……。
「どうして、君はここにいるの?」
彼が尋ねてきました。
「え、えっと、友達と肝試しに来てて」
「関心しないな。こういう場所に興味本位で来るなんて、それこそ呪ってくださいって言ってるようなもんだよ?」
「で、でも……多数決でこうなっちゃったんです……」
改めてみると、背も私より高め。あ、でもカズ君よりはやや低いのかな? うん、トール君と同じくらい。
「他の皆は?」
「その、途中ではぐれちゃって……」
ふうっとため息のように息をつくと、彼は。
「じゃあ、一緒に探してあげる」
「ほ、ホントっ!?」
思わず嬉しそうな声を上げちゃいました。
「うん、君と一緒に居たいし」
いや、その台詞を今、ここで言うんですか?
誤解されても知りませんよ?
「た、助かります、はい……あ、名前! その前に、あなたは幽霊じゃないですよねっ!?」
重要なことなので確認する。
彼はくすすと笑って。
「幽霊じゃないよ。僕は浅樹ラナ。列記とした青陵大学の学生です」
「青陵……大学?」
確かそこって、電子工学に力を入れてて、並みの偏差値じゃ入れないっていう……。
「君は?」
「あ、私は柊サナって言います。葉月短大のデザイン学科に所属してます」
「葉月短大? 僕の大学の近くだったよね?」
「え、ああそういえば……」
いわれて気づいた。
確か、一駅分離れてるんじゃなかったっけ?
「じゃあ、遊びに行こうとしたら、すぐにでも行けるってことか」
ちょっと嬉しそうなのは、気のせいですか?
いや、それよりも……生きた人に出会えてホッとしたら……。
「あ、あの……」
「あ、タメ口で構わないよ。で、どうぞ?」
「い、一緒にトイレ、行きませんかっ!!」
仕方ないじゃないっ!!
急に行きたくなっちゃったんだものっ!!
くすっと笑って彼……ううん、ラナさんは。
「いいよ。確かこの先にあったはずだから」
「あ、ありがとうございますっ!!」
「だから、タメ口でいいよ?」
「あ、ありがと……」
こうして、私はラナさんという心強い味方を手に入れたのでした。
いえ、味方と合流を果たしたのでした。




