#82
全く―――なにやってんだよ……
あんたの嘘―――もうバレッバレなんだよ……
そりゃ、あんたとは喧嘩ばっかしやってきたけど……
私達の仲って、そんなんじゃないだろ?
だったら言えよ……言ってよ―――苦しかったら……
言ってよ―――悩んでいるんだったら……
私一人じゃ解決できないけれど、何かできることだってあるだろ……?
見損なうなよ―――見損なっちゃ、困るよ……
仲間って言うのは、そう言うもんなんだろ……?
必至に誤魔化そうとしていたクシナダの“鴈”は、その仲を“悪友”とまでしていたエルフの女性に、立ち処にして見抜かれていました。
そう―――シェラザードには視えてしまっていたのです……。
クシナダの身体……いえ、容量の許容範囲を越えて染み出ている、闇の力が……
しかしその事は、同じく黒キ魔女の方でも視えていた―――……
ふ・う……シェラさんが上手くフォローに入ってくれましたか。
どうやらクシナダさんの異変に気付かれたようですね。
しかし……これほどの強力な闇の力―――私は見たことがありません……。
ここは、師に相談するのも一つの手―――
けれどそれは、立ち処にしてクシナダさんも気付く処となるでしょう。
被害を最小限に抑えるには、私達だけで解決しなくてはならなくなるでしょうか……。
このPT内で、“彼女”と一番絆を深めさせている者―――と、謀略に長けた“新たなる知恵ある者”との間では、その情報を共用させてはいないながらも、最善の手を尽くす策が講じられ始めたのでした。
それに……やはり同じ頃―――“ある者”の魂の奥底では……
〔今の力の波動―――“ヤツ”か……〕
〔以前、公主からも言われた様に、私達がルベリウスと対峙していた一方で、かの元凶と見られる者と対峙し、須すべからく封印した―――と、言っていたが……〕
〔その封印も、彼の者自らの意志であるとも言っていた……〕
〔余程の自信家―――なのか……それとも或いは……〕
〔何か、私達にも知られたくないような事情があり、それが水面下で進行しているのか……〕
〔ここは一つ、あやつらの協力を、今一度仰ぐべき……だろうな。〕
ヒヒイロカネの魂の奥底で眠る、“もう一つの魂”……緋鮮の覇王―――
この存在も、クシナダを侵蝕した闇の力の持ち主、ニュクスの事に気付きました。
……が、無用の混乱を避ける為、彼女達の仲間内でも対処できる準備を促せるようにしたのです。
* * * * * * * * * *
その―――また一方で……
「そうか―――ご苦労……。」
「魔王様、非才の身としては、なぜニュクスなる者は優勢でありながら、突如として敗北を認めた……降伏をしたのでしょうか。 私めには、その理由が判りかねます。」
「“予測”を立てるのならいくらでも可能だ。 しかし、真実はそのうちの一つでなくてはならない。」
「僭越ではございますが―――魔王様が……我らが主上であるあなた様が導き出されておられる“解”―――なにとぞどうか、私めにもお教え願えませんでしょうか。」
魔王の側に仕え、助言や補助的事務を着々とこなす者―――『執事』……その称を【オルブライト】と言いました。
しかもこの『執事』は、かの『侍従長』と同じ、黒豹人族の出身であり―――また、ノエルの5人の姉弟の1人でもあった……
そうした、確かな仕事に励んでくれる者への褒賞か―――魔王は、既に導き出していた自らの解を、執事に耳打ちする……。
その、あまりにも突飛な解の在り方に、執事は目を丸くするのでしたが……
解を導き出していた者の行動は、早めなくてはならない―――また、新たに来れる脅威の前に、手立てを講じなくてはならない……
それも―――深く……静かに…………
* * * * * * * * * * * * *
そして―――――――
#82;黙示録の始まり
またしても、前触れすらなく突如として開始される“侵攻”―――
これまでの“騒ぎ”が、様子見であったかとでも言う様に、量も質も桁外れの“超”獣達が襲い来る……。
しかし、これでも“先遣”“先鋒”の意味合いが濃い―――としながらも、一つ対処を間違えば侵略の“足がかり”を作ってしまう為か…………
「緊急―――緊急―――! 至急、クランランクA以上は、強襲している“超”獣に対処せよ!」
「クランランクがAか……それならオレ達も―――」
「(……)いや―――ここは、他の人達に任せよう。」
「シェラ―――?」
「言いたい事……って、判るよ。 けれど私達は、ササラを含めても5人しかいないんだ。」
「そうですね……私達のクランを除く、他のAランクはほとんどが大所帯ですから……。」
「多分、このクランがA指定なのは、この私がいるからでしょう。 それに、シェラさんの言われる通り、たったの5人で今回襲来したラプラスに対抗するなど無謀の極み……。」
「ならば―――どうしようと……」
「“弱き者達”の為に……住人の皆さんの避難誘導を最優先させるべきです。」
クランメンバー全員の意見の一致を見て、シェラザード達の行動指針は決定しました。
しかもササラは、“使い魔”という情報網を駆使し、魔界各地が同時侵攻を受けている事を知っていたのです。
だから、自分達が最後の砦となる選択をした―――……
その場で、『その事』を口にしなかったのは、皆が皆『その事』を、どことなく判っていたから……
* * * * * * * * * * * *
そして……マナカクリムの住人全員の避難誘導を終わらせて―――
「さて……と―――さあ、話してもらいましょうか。」
「(えっ?)シェラザード……様?」
「―――――――――……………………。」
「ど―――どうしたのですか? 急に……クシナ―――」
「シルフィ、黙ってて。 クシナダ―――あんた、判ってたよね? こいつら……ラプラスが大挙して押し寄せてくるの……」
「わ―――私……は……私は、知らないわ……そんな事。」
「でしょうね―――けど、あんたの内に巣食ってる“何者か”は、知っているはず……。」
この時が“機会”とみたか、『グリマー』であるエルフの王女が、自分達の仲間の一人に対し、今回の出来事に『心当たりがある』かのような問い詰め方をしてきた―――
けれども、誰も止めなかった……
“ある事象”から幾許か経ったこの頃に於いては、仲間の一人である鬼道巫女への、ある容疑は強まるばかり……だったのです。
すると―――
……………………
「フ・フ・フ―――気付いておったか。 しかし、気付きおきながらも“わたくし”を邪魔しなかった事に関しては、評価してやろう……。 だが、このタイミングは判らなかった―――何しろ、『リンク』を断っているのでな。」
明らかに、『いつも』聞いている声ではない―――
それだけで、自分達の目の前にいる“何者か”が自分達の仲間であるクシナダではない事を、知りはしました……が―――依然杳として、その正体は知れていない……
「『リンク』を……? どう言う事なのでしょう?」
「『リンク』を“断つ”―――と、言う事は。 “わたくし”が本来いた場所との“繋がり”を“断った”……つまり―――」
「そうする事により、あなたが『死んでいるか』『生きているか』不明とする為……」
「その通り―――」
「けど……そんな事をして、どうしよう―――って? 意味が―――」
「“意味”ならありますよ……。 まあ、飽くまでの可能性としての話しにはなりますが―――」
「言ってご覧なさいな、【死せる賢者】の弟子―――」
ササラもまた、同じ師を持つ先達と、ほぼ同質・同等の解に辿り着いていました。
自ら認める敗北―――降伏を申し入れておきながらも、350もの歳月、ただ大人しくしていただけの強者……
本当は、薄皮を破る様に、這い出てこれたと言うものを……
一体、なぜ―――?
けれど、“それ”こそが、この者の―――
350年前、この魔界の侵略を命ぜられた者の、『本当の目的』だったのなら……
つづく




