第39話 決意
「ママ、今日僕は街に行ってきたんだけどね、そこで困っている子を見かけたんだ」
「困っている子?どんな子なのかしら」
「お店で追い出されているところを見かけたんだけど、パパとママを魔獣に殺されたんだって」
「そう。ファルエルちゃんは、そう言う境遇の子供を初めて見たのよね」
「それでね。僕その子と友達になったんだ」
「そう、それはよかったわね」
「それでね、僕は困っている友達を放っておく事は出来なかったんだ」
「ファルエルちゃん、放っておく事が出来なかったって、その子の事をどうしたの?」
「うん、一緒に家に連れて来たんだ」
「えっ?家に?どこにいるのかしら」
「今、メルエに頼んでお風呂に入れてもらってるんだ。それでねママ、お願いがあるんだ。その子をこの家に置いて欲しいんだ」
「う〜ん。ファルエルちゃんの気持ちはわかるんだけど、それはちょっと難しいわね」
「どうして難しいの?」
「その子と同じ境遇の子はいっぱいいるの。残念だけどその子達を全員助ける事は出来ないのよ」
「ママ、それはわかってるよ。でもねいっぱいいるからって、その子を助けない理由にはならないんだよ。僕はどうしても助けてあげたいんだ」
「う〜ん。ファルエルちゃんが優しいのはわかるんだけど」
「ママ僕はね、パパの領地のそういう境遇の子を認めない。認める事は出来ない。僕はどうしてでもその子達をみんな助けたいんだ」
「それはねファルエルちゃんの気持ちはわかるんだけど」
「ママ、僕は将来、この土地の領主になるかもしれない。僕の将来の領民には、そんな思いはさせたく無い。僕の全てをかけてでも、全員を救って見せる。僕にはパパとママがいる。でもあの子達にはいない。それならパパとママがいる僕がやらなくてどうするんだろう。お願いです。あの子を助けて下さい。今は何の力もないけど、死ぬほど努力して大きくなったら絶対にみんなを幸せにして見せます。お願いします」
「・・・・・・・・・・・」
??
ママからの返事がない。やはり難しいのだろう。だけど俺は諦めるわけにはいかない。
「・・・・・ファルエルちゃん。ファルエルちゃんがお願いをして来るのは読み聞かせをねだって来て以来ね。それがお願いをして来たと思ったら、他の子達を救いたいだなんて。しかも4歳のファルエルちゃんがそこまで考えているなんて考えもしなかったわ。初めは、ファルエルちゃんが一時の思いつきで言っているんだと思っちゃったの。それで難しいって言っちゃったんだけど、ファルエルちゃんの気持ちを聞いてママも決めました。その子を家で面倒をみましょう。パパは私が説得してあげるわ」
「ママ・・・ありがとう。本当にありがとう。それでね、その子はルシェルって言うんだけど、家に来る代わりに仕事を与えて欲しいんだよ。その方が本人も気兼ねなくいれると思うから」
「ファルエルちゃん、そこまで考えていたのね。ところでその子は女の子だったのね」
「えっ?女の子?」
「違うのかしら。さっきルシェルちゃんって言ったわよね。ルシェルちゃんって女の子の名前だと思うんだけど」
「女の子?う〜んよくわからない」
「ファルエルちゃん、お友達なのに女の子かどうかもわからないの?」
「うん、全然気にしてなかった・・・」
「女の子とは気づかずに助けようとしたのね。ファルエルちゃんらしいわね。それじゃあその子に会わせてもらっていいかしら」
「うん、まっててね。すぐ呼んでくるよ」
そう言って俺はルシェルを呼ぶ為に部屋を出て風呂場に向かう事にした。
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