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第36話 孤児

至高の食べ物である串焼きを食べながら街を進んで行く。


「邪魔だ!近づいてくるな、しっしっ」


飲食店と思われる一角で声が聞こえて来た。

結構激しい声だったので何事かと思い様子を伺ってみるが、そこには小さくてうす汚れた子供の天使が放り出されていた。


「メルエ、あれはどうしたんだろう?」


「ああ、あれはおそらく孤児でしょう。悪魔や魔獣との戦い等で親を亡くした子供が行き場を無くして、ああやって生きるために残飯を求めてお店の軒先に来るのですよ」


「見る限り、誰も気にしている様子はないんだけど」


「それは、ああいった孤児はそれほど珍しくは無いからです」


「孤児を救う様なところはないの?」


「ごく一部の神殿では孤児の受け入れをしている様ですが、実際には、ほとんどありません」


「ここは僕のパパの領地だよね」


「はい、そうです」


「パパは優しいし、とてもあの子達を放っておく様な性格だとは思えないんだけど」


「はいラファルエル様は非常にお優しい領主様です。他の土地に比べると、貧しい領民はかなり少ないと思われます。過度の税を課したり、理不尽な命令を下したりと言う事は、ほとんどありませんので。たた、ああいった孤児は、領地というより天界全体の問題ですので救済するという事は実際には難しいのです」


「それは、天界全体に孤児がいるってことかい?」


「そうです。この街だけでもあの子供以外にもいるはずですので、天界全体ではどれだけの孤児がいるかわかりません」


「孤児は、食べ物がなくなったらどうしてるの」


「ほとんど、そういった場合餓死しているかもしれません」


「きゃ〜!ごめんなさい。もうしません、ごめんなさい」


メルエと話している間にも、先ほどの孤児が再度店に入ろうとして、店の天使に蹴り飛ばされて追い出されていた。

見ていられない。ムカムカして我慢ができない。ただの弱い者いじめにしか見えない。

悪魔には慈悲の心が無い。弱い者、弱者は虐げられ、救済するものなどいない。

しかしここは天界だろ。天使の住む街だろ。俺の家族は皆愛に溢れている。天使のくせにこんな事でいいのか?いいはずがない。

パパにも事情があるのだろう。そうでなければこの様な状況を放置する事ができる様な性格では無いはずだ。それともこれが当たり前になりすぎて何も感じなくなっているのか?

初めてメルエと外出した初日でこれだ。今後もこの様な場面に出会い続けるかもしれない。正直俺には我慢出来ない。

俺は、飲食店の前まで行き


「食事をお願いしていいですか?3人分」


「はい、もちろんです」


先ほど迄孤児を相手にすごい形相をしていた天使は、満面の笑みを浮かべて、俺を出迎えた。

この天使達も生活があり、これが商売というものなのは十分に理解できる。なのでこの店の天使には腹は立たない。立たないがこれまで何も知らずに過ごして来た自分には猛烈に腹が立つ。


「メルエ、食事にしよう」


「ですが、ファルエル様先程串焼きを・・・」


「メルエお金はあるよね。3人分」


「3人分ですか?それはもちろんありますが・・・ファルエル様まさか!」


「君、大丈夫かい?」


「えっ?わたしですか?」


「うん君だよ。怪我は無いかい?」


「は、はい、大丈夫です」


「それじゃあ、お腹は空いているかい?」


「はい、あっ、いいえ」


『グゥ〜ウ』


「お腹は嘘がつけないよね。僕たちと一緒に食事をしてもらえないかな」


「えっ!?でもわたしお金を持っていません」


「うん、大丈夫。僕がお願いして一緒に食べてもらうんだからお金は気にしなくていいよ」


「失礼ですが、坊ちゃん、こいつを一緒に食べさせる気ですか?」


「うんそうだけど、何か問題があるかな」


「申し訳ありませんが、他のお客様の邪魔になりますので、この子供と一緒はご遠慮願います」


「う〜んそうか。じゃあしょうがない、メルエこの子を連れてさっきの串焼き屋さんまで行こうか」


「は、はい。かしこまりました」


「それじゃあ君も一緒に来てくれるかな。あっちに至高の食べ物があるんだ。きっと気にいるよ」


「はい」


俺は孤児と思しき子供を連れて、先程の串焼き屋に向かう事にした。

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