プロローグ:過去
城が少しずつ炎に包まれていく。
大人は逃げまどい、子供は泣きわめく。
城を守るはずの騎士団は全滅し、この大地にいる人間達は死に行く運命だった。
ここを攻めるものたちは、魔族と呼ばれる人間にとって天敵の種族。
生き残りはいないはずだった。
「リリス様、もうそろそろ人間たちも死に絶えましょう。誰か戯れに生け捕りにしておきましょうか。」配下の魔族、コーザが言った
生け捕りと言ってもただ目の前で八つ裂きにされるだけである。
「いや、よい。」
彼女リリスは初めからやる気はなかった。人間の土地を侵略しても、ただ魔族は恐ろしいと評判がたつだけで、屍が横たわる大地が増えるだけ。そう思っていた。
「ん、なんだ?」
少し離れた所に一人11〜13歳の子供がいた。周りの配下は城下町に行っていて一人だけ。運が良ければここにも来れただろう。その運もリリスのところにいるという不運に消されてしまったが。
「どういたしましょうか?」
魔族は好戦的だというが、確かにこの配下は子供を八つ裂きにしたいという感じだった。
「好きにしろ。」
興味無いという感じで無機質にリリスは言った。
毎回毎回この繰り返し。今回は珍しかったがまたいつものように死体が出る。後の処理のため城へ向かおうとしたときだった。
「そんなバカな・・・」
その子供は、鈍い光を放つナイフで魔族の首を切っていた。
人間と魔族は外見は皮膚の色以外あまり変わらない。ただ身体能力が断然違っている。人間が赤ん坊だとすれば、魔族は大人並で、しかも魔力と呼ばれる魔法の源も魔族のほうが多い。
他の種族と比べてもかなり身体能力が高い魔族を殺すこの子供は何者か。
それにこの子供の眼はリリスが味わったことのないほどの殺気を帯びていた。
「貴様が指揮官か」
子供らしからぬ口調に少し驚いたが、返事をした。
「ああ、そうだ。」
配下のものは殺されたが、リリスは魔族の王族の血が入った貴族である。そう簡単には負けないはずだ。リリスが愛用の剣を抜こうとしたときだった。
ドサッ
子供は倒れていた。どうやら体力の限界だったようだ。
しかもちょうど他の配下達が、来たところだった。
「どうなさいましたリリス様?すでに城は落ちましたぞ。」
「何だ?こいつ。リリス様、やっていいですかこのガキ?」
「おいおい。なんでコーザがやられているんだ?まさか人間の子供にやられたのか?」
どうしたものかとリリスが考えていると、思いついたことがあった。
「ああ、すぐ行こう。それとこの子供は放っておけ。」
「しかしリリス様、こいつはコーザを殺したのですぞ。」
「戯れだ。それとも私の命令に不服があるのか?」
「いえ・・・」
配下達は従うしかなかった。魔族は力が上下関係を示している。配下の彼らが何をしようと意味がないのである。
「まさか、初めての命令がこれだとはな。」
リリスが人間に興味を持った日のことであった。
この子供はいつしか動乱の渦に巻き込まれることになる。そして魔族にとっての死神になる事をまだリリスは知らない。
初めて小説を書きますがよろしくお願いします。