表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/36

第15話:風の尾根と、静かな手応え

無頼の牙パーティーが灰色の丘陵を攻略してから十五日目。

アレン・ヴォルドは朝の光の中で道具ベルトを丁寧に確認し、小型のノートをポケットにしまった。

黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日の集中を込める。

ここ最近のクエストで、回復魔法を連発する負担は相変わらずだったが、仲間たちとの連携に少しずつ手応えを感じ始めていた。


ギルドの入り口では、三人がすでに集まっていた。

ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。

「アレン! おはよう! 今日は『風の尾根』の翼蛇退治だぜ! 高い場所で戦うことになるらしい!」


レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。

「ははっ、ガルドは相変わらず張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」


バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。

「アレン、今日は肉の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」


アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。

「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。風の尾根は風が強いので、足場に注意してください」


ガルドが豪快に胸を叩く。

「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いで勝負だ!」


クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして笑顔で待っていた。

「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは風の尾根の翼蛇群ですね。風が強いので気をつけてください。アレンさんたちの回復魔法なら、きっと大丈夫だと思います!」


ミリアは地図を渡しながら、いつものように追加情報をくれた。

「尾根の先端に大きな親蛇がいるらしいです。最近、無頼の牙の成功率が高いってギルド内で話題になってますよ。このパーティー、どんどん目立ってほしいんです。頑張ってくださいね!」


アレンは丁寧に礼を言った。

「ありがとうございます、ミリアさん。いつも本当に助かります」


ガルドが親指を立てる。

「おう! ミリアちゃん、期待しててくれ! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」


レオンがくすくす笑う。

「受付嬢の期待を背負うとはな。アレン、回復、よろしく頼むぞ」


バーンがのんびり頷く。

「まあ、戦いが終わったら飯だな」


四人は馬車に乗り、風の尾根へと向かった。

尾根は高く、強い風が吹き荒れ、足場が不安定だった。

翼蛇の群れが風に乗って滑空し、鋭い牙と尾で襲いかかってきた。


「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前で引きつける!」


ガルドが大剣を構えて突進した。

翼蛇の尾がガルドの胸を切り裂き、血が飛び散る。


「アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」


アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。

緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、傷を癒していく。

同時に支援魔法でガルドの力を強化し、動きを少し速くする。


「ガルドさん、風に流されないように! レオンさんが風を操ってくれれば……」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、翼蛇の飛行を乱す。

「おいおい、また無茶かよ。アレン、俺にも強化を!」


バーンが盾で尾攻撃を受け止め、斧で翼蛇を叩き落とす。

「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」


戦闘は風の強い尾根で長引いた。

翼蛇の群れが風を利用して素早く動き、ガルドとバーンが何度も傷を負う。

アレンは汗を浮かべながら回復魔法を懸命に連発した。

精神力が消耗していくのを感じつつも、仲間たちの傷を一つずつ癒し、支援を重ねていく。


「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」


「了解です……回復、続けます!」


緑色の光が何度も閃く。

アレンの魔法がなければ、この風の強い場所での戦闘はすぐに苦戦していただろう。

レオンが風魔法で翼蛇の軌道を乱し、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。

ガルドが大剣で親蛇を狙い、ようやく大きな翼蛇を倒した。


親蛇が倒れると、残りの群れも勢いを失い、次々と落ちていった。

尾根に静けさが戻る。


ガルドが息を荒げながら大笑いした。

「ははっ! 勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら危なかったな!」


レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。

「ははっ、相変わらず無茶だったが、今日は風に負けずに戦えたぞ」


バーンがのんびり笑う。

「いい運動になった。今日は飯を豪華にしようぜ」


アレンは汗だくになりながら、軽く微笑んだ。

「みんな、無事でよかったです……少しずつ、息が合ってきたと思います」


ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。

「お前がいるおかげで、俺たちはもっと無茶できるんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」


ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから明るく手を振ってきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか?」


ミリアの緑の瞳が輝いている。

アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は嬉しそうに頷いた。

「すごいですね……無頼の牙の名前、最近本当にあちこちで聞きますよ。このパーティー、どんどん目立ってほしいです!」


その時、近くで他の冒険者たちの会話が聞こえてきた。

「無頼の牙、風の尾根を無事にこなしたらしいな」「男ばかりなのに、だんだん本格的に強くなってきてるって話だぞ」


アレンはそれを聞いて小さく息を吐いた。

まだ小さな変化だが、無頼の牙の存在が確実にギルドに広がり始めている。


その夜、『鉄の杯』で四人は勝利を祝った。

ガルドがジョッキを高く掲げて叫ぶ。

「無頼の牙に乾杯!」


レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。

「ふっ、ギルドの視線が増えてきたな。アレン、お前の回復が効いてるぞ」


バーンが肉を頬張りながらのんびり言う。

「アレン、これからもよろしくな」


アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。

風の尾根での激しい戦い。

回復魔法を連発する毎日。

ミリアをはじめとする受付嬢たちの視線。

そして、男ばかりの熱い仲間たち。

追放されてからわずか十五日。

無頼の牙での日々は、確実に周囲の注目を集め、静かに前進を続けていた。


明日もまた、回復を連打する日々が続く。

でも、今はこの仲間たちと一緒に、ゆっくりと強くなっていける気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ