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亜里野ストーリー  作者: 与志野 音色
2章 体育祭編
23/68

23話 覚醒


廃工場に、静寂が戻った。


抹殺斗は翔馬に背を向け、フンペチのいる方向へ歩き出す。


その瞬間だった。


——ギィ……。


背後で、鉄を踏む足音がした。


抹殺斗の眉がわずかに動く。


(……馬鹿な)


ゆっくり振り返る。


そこに——


立っていた。


血だらけだった翔馬が、まるで何事もなかったかのようにゆっくりと、当然のように直立していた。


抹殺斗は初めて、はっきりとした驚愕を見せる。


「……立てる状態じゃなかったはずだ」


だが翔馬は何も答えない。


視線だけが、異様に深い蒼で満たされていた。


(何だこいつは……何故気が復活……いや、先程以上に気が高まっている……?)


まるで底のない井戸のように、

静かで、重く、深い圧力。


そこに“亜里野翔馬”の気配がほとんど無い。


抹殺斗が警戒し一歩後退する。


「亜里野……いや……誰だお前は」


翔馬の唇が、ゆっくり動いた。


「なるほど……蒼の気……理解を深めたようだな」


翔馬は自身の身体を舐めるように見回した。

呼吸も脈動も、先ほどとはまるで違う。


抹殺斗の脊髄に、冷たいものが走る。


(何だこいつ……イカれたか?

いや違う……これは別の……)


「とは言えまだまだ不完全……俺が自由になったのがいい証拠だ」


「何だと……?何の話だ」


翔馬が一歩、前へ出た。


「少し……味見と行こう。」


床が——沈んだ。


メリッ。


踏みつけただけで鉄板が凹む。


(このドス黒い蒼の気……どこから出てきて……いやそれより……負傷が消えている……あいつの祝福はdouble stepではなかったのか?)


抹殺斗の心が一瞬、揺らいだ。


だがすぐに怒気が混じる。


「調子に乗るなよ亜里野……何をしたのかは知らんがお前が勝てる道理はない!」


抹殺斗は拳を握りしめ、蒼光を纏う。


「お前が奥の手を隠していた様に……まだ俺は祝福を使っていない!」


翔馬の蒼の気が微かに揺れた。

その目が抹殺斗を捉える。


抹殺斗は片手を前にかざし、低く呟く。


「祝福——抹殺。」


瞬間、抹殺斗の掌に黒混じりの蒼い光線が収束する。


「触れた物の命を奪う、これが俺の祝福だ。」


光線が激しく脈動し——


バシュッッ!!!!


一瞬で翔馬の真横を通り過ぎた。


「……ほう」


工場の床が、光に触れた瞬間消滅する。

焼けるでも砕けるでもなく、まるで初めから存在しなかったかのように。


抹殺斗が確信する。


(奴が何をしたのかは知らんが……これで終わりだ!!)


「褒めてやる……俺に祝福を使わせたのはな!」


ドッッ!!!


蒼い閃光が一直線に翔馬へ向かう。


だが——


翔馬は、その光線を正面から掴んだ。


音もなく。

表情も変えず。

ただ指先で光を握り潰すように止めた。


抹殺斗の顔から血の気が引く。


「……は?」


光線の残滓が蒼い煙となって消える。

抹殺斗は咄嗟に後退し、追撃を放つ。


バシュッッ!!バシュッッ!!!


連続で放たれる“抹殺”の光線。

触れた柱や壁には、次々と穴ができる。


だが翔馬は一歩も動かない。


光線は全てが彼の周囲で霧散し、

圧倒的な蒼の気が打ち消していた。


抹殺斗は歯を食いしばる。


(馬鹿な……!手に驚異的な密度の蒼の気を込めて俺の祝福を相殺している!?)


翔馬がゆっくり歩き始める。


抹殺斗は反射的に距離を取ろうとするが——


(……いないッ!?)


翔馬の姿が消えた。


抹殺斗の背後に、いつの間にか立っていた。


(さっきよりも……!!数段……!!)


抹殺斗は蒼の気を全開にし、拳を振り抜く。


「死ね!!亜里野翔馬ッッ!!!」


ガッッッ!!!!


しかし腕が止まる。


翔馬の片手が、抹殺斗の拳を掴んでいた。

抹殺斗の拳を握り潰すような圧力。


「ぐっ……!」


翔馬は無表情のまま、握った拳をねじる。


ミシッ……!


抹殺斗の腕から嫌な音が響く。


「……ウッッ!!!」


抹殺斗は即座に距離を取ろうと祝福を爆発させるが

翔馬がその胸に軽く手を置いた。


トンッ。


その一瞬。

抹殺斗の全身に衝撃が走り、

巨体が吹き飛び壁に叩きつけられる。


ドガァアアアアン!!!!


壁が大穴を開け、粉塵が舞う。


「ガハッッ!!!」


抹殺斗は呼吸を乱しながら立ち上がる。


(押されてる……!?俺が……!?)


翔馬がゆっくりと首を鳴らしながら歩く。


「ンー……出力は……悪くない方か」


その歩みは静かだが、

一歩ごとに工場の床が沈んでいく。


抹殺斗は呼吸を整え、再び拳を構える。


(ふざけるな……祝福を発現させて僅か三ヶ月ちょっとでこんな芸当が出来る筈がない!!)


だが対する翔馬は——


ただ、無言で抹殺斗を見つめていた。

その瞳の蒼だけが異常なほど深く、重かった。


次の瞬間——


二人の蒼の気が激突した。


廃工場全体が震え、蒼の衝撃が波のように広がる。


そして抹殺斗は理解する。


(こいつ……次元が違う!努力で何とかなるレベルじゃない!)


その何かは、祝福の光線すら握り潰し、

抹殺斗を力で押し返していた。


戦いは、完全に様相を変えた。


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