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亜里野ストーリー  作者: 与志野 音色
2章 体育祭編
20/68

20話 revolver


扉を抜けた瞬間、空気が変わった。


体育祭の賑やかな声は完全に遮断され、

まるで世界が切り替わったような静寂が広がっていた。


薄暗い倉庫跡。

壊れた机、折れた鉄骨、錆びついたロッカー。

昔使われていたであろう神界高校の文化祭のゴミまでもが積まれ、ゴミ山のように入り組んでいる。


田野が息を呑む。


「消えた……確かにここに入ったよな……」


与志野は人差し指に蒼の気を集め、周囲を見渡す。


「……気をつけろ」


カン……


どこかで小さく金属音がした。


田野は思わず肩を跳ねさせる。


「な、なんだ今の……」


そのとき——


「こっちです」


何処からか声がした。


ゆっくりと影が動き、

フンペチが廃材の山の上から降りてきた。


暗がりの中でも、その目だけは冷たく光を帯びている。


与志野と田野は瞬時に警戒し、十分な距離を取った。


(マジか……まるで気配が無かった……)


フンペチは構えを取る。


「二人同時でどうぞ。

一人ずつやるのは面倒なので。」


与志野が一歩前に出た。


「田野、俺が前衛だ。お前は後ろで祝福を出して援護してくれ。」


「分かった!」


田野は深呼吸し、祝福を発動させる。


「——来い、my only girlfriend!」


薄い光が集まり、田野の前に少女の姿が顕現した。


フンペチは興味なさそうに目を細める。


「攻撃は出来ない……でしたね。

サポート系……面倒ですので最初に潰します。」


ヒュッ。


フンペチの姿が消え、背後のゴミ山の影から攻撃が飛んでくる。


「ッ!?」


与志野が即座に指で防御する。


ガンッ!!


凄まじい衝撃が二人から走り、鉄骨を吹き飛ばすような風圧が巻き起こる。


田野が目を見開く。


「何だこの威力……!?」


与志野も驚愕していた。


(速い……!!

翔馬ほどじゃねぇが無駄が一切ねぇ!!)


フンペチは無表情のまま、埃を払う仕草だけした。


「……まあまあですね」


次の瞬間、フンペチが田野の背後にいた。


「え……」

「田野ッ!!!!」


与志野が叫び、指を振り抜く。


しかしフンペチは最小限の体のひねりでそれを避け、田野の腹に拳を当てる。


「蒼の気……まだ使いこなせて無いみたいですね、よかった。」


「ゴッ……ハッッ!!」


ドンッ!!!


衝撃が走り、田野が鉄くずの山に吹き飛ぶ。


「てめえ!!」


少女が即座に田野の身体を抱え、傷を癒そうと光を放つ。


田野は苦痛に顔を歪めながら立ち上がる。


「ちくしょう……!あいつ……機械みてぇな動きだ」


与志野は蒼を指に凝縮し、構え直す。


「やべえぞあいつ……まるで隙がねえ」


フンペチは淡々とこちらへ足を進める。

瞬間、フンペチの姿がまた消えた。


「来る!」


空気が裂ける。


(右から——違う、上から!いや、後ろから!!)


与志野の脳が追いつかないほどの速さ。

しかし与志野の指が、反射的に光った。


「thousand fingerrrr!!」


無数の蒼が一点に放たれ、フンペチの頬を掠める。


フンペチの顔がかすかに揺れた。


「……ッ」


ほんの僅か、無表情にヒビが入る。


田野が叫ぶ。


「当たった!!」


与志野は着地しながら息を吐いた。


(翔馬と違って完全に超スピードに任せてる訳じゃねぇ、俺らの視界から消える様に工夫してる……だったら着地点に俺の攻撃を置いておけば……!)


フンペチは自身から流れる血に触れ、うっすらと血を見る。


「……痛い。」


その声だけは冷たいまま、しかし確実にトーンが変わった。


「少し……イラっときました」


殺気が爆発し、蒼の気を解放する。


倉庫全体の空気が凍りつき、

田野も思わず足がすくむ。


(やべぇ……さっきまでとは比べ物に……!)


フンペチが踏み込む。


与志野が叫んだ。


「田野!!お前は絶対に行くな!!

俺が前に出る!!」


田野は震えながらも笑う。


「当たり前だろ……!俺はサポート役なんだ……!

絶対お前を守る!!」


少女が田野の背中を押し、与志野は指を蒼く染めた。


フンペチが手刀を構える。


「貴方のmy only girl friend……死んだ人は治せないらしいですね」


「えっ……どこでその情報……」


その手刀に蒼いオーラが凝縮された。


与志野がそれを見て驚愕する。


「手にオーラを集中……!俺と同じタイプ!?」


「ハズレ。」


ドッッ!!


鉄くずの山に衝撃が響く。

フンペチの無表情な顔がゆらりと揺れ、次の瞬間にはすでに距離を詰めていた。


「終わりです」


その一言に、殺気がまとわりつく。


与志野は指先を蒼く染め、全神経を集中させて迎撃する。


ガンッ!!


指と手刀が激突し、倉庫全体に火花が散る。


(くそ……速さが段違いだ……!

遊びは完全に終わったってことかよ……!!)


田野が蒼の光に包まれた少女とともに後退する。


「与志野……! 無理すんな!」


「無理しねぇと死ぬんだよ!!」


与志野は歯を食いしばり、再び指を構えるが——


フンペチの蹴りが脇腹を捉えた。


「ぐっ……!!」


鉄骨へと吹き飛び、肩口を抉るほどの衝撃が走る。


田野が叫ぶ。


「与志野!!!」


フンペチはゆっくり、無表情のまま歩く。


「辛そうですね。」


その瞬間、与志野の背中に冷たい汗が流れた。


(……マジで殺される……!!)


だが——


田野が前に躍り出た。


「させるかッッ!!」


少女が瞬時に田野の横に並び、蒼い壁を張る。


(蒼の気で生成した壁……)


フンペチは一切の表情変化なく、手刀をそのまま振り下ろした。


バキィィッ!!


光の壁が砕け、田野の身体が浮く。


「ぐっ……!」


壁に叩きつけられ、口から血を吐く。

それでも田野は立ち上がる。


「俺が……時間を稼ぐ……お前はあれを……!」


与志野はその声に、奥歯を強く噛みしめた。


「……分かった!!」


与志野の手が蒼く膨れあがる。


——ビリビリビリッ!!!


空気が震え、蒼の気が指先に吸い込まれていく。


フンペチの足が止まった。


「……まだ何かあるんですか」


与志野が低く呟く。


「revolver fingerリボルバー・フィンガー


蒼の気が弾丸のように指の周囲に纏わりつく。


フンペチが与志野から発せられる異様な蒼の気を凝視する。


(蒼の気の極限集中……?祝福を発現させてから三ヶ月ちょっとでそんな繊細なコントロールが出来る筈が……)


通常なら蒼の気は拡散し、指のような細い部分に極集中など不可能。


だが——


与志野には、それを可能にする繊細なコントロール能力があった。


(成程……元々蒼の気を集中させる祝福の特性……その影響か)


フンペチは無表情ながら、わずかに首をかしげる。


「その蒼の圧……あなた、コントロールの才能がありますね。」


与志野は指を震わせながら笑う。


「知るかよ」


バチバチと青い電流のような蒼が与志野の指先を走る。


田野が必死に叫ぶ。


「与志野に近づくな!!」


少女が光の紐を伸ばし、フンペチの腕を捕縛する。


しかし。


ズバッ!!


一瞬で切り裂かれた。


(所詮はその場凌ぎの防御に特化した技……壊すのは容易い)


田野の顔が歪む。


「クッソ!!」


フンペチが田野の胸に拳を撃ち込む。


「あなた、邪魔です。」


ドガァッ!!!


田野が床を転がる。


「ゥ………!!!アッアァ……!!!」


息ができない。

肋骨がきしむ。

それでも——立ち上がる。


(時間を……稼ぐ!!)


「……my……only……girl Friend……!」


フンペチの目がわずかに細くなる。


フンペチが田野の首に手刀を向けた瞬間。


「田野!!離れろぉ!!」


与志野の叫びが倉庫全体に響き渡る。


指先は蒼の気を極限まで装填し終え、青白い光が脈動している。


指が銃口のように輝いていた。


与志野は腕を振り抜く。


「行けぇええええええッッッ!!!thousand fingerrrrrr!!!」


——だが、いつもとは違う。


revolver fingerによって圧縮された蒼の気が、

解放と同時に弾丸の嵐のように暴れ出した。


ドドドドドドドドドドッ!!!!


蒼の弾が一直線にフンペチへ襲いかかる。


フンペチの目が初めて見開かれた。


「……っ!」


構える暇もない。


蒼い弾丸がフンペチの身体を貫き、金属を破壊するような轟音が廃材置き場に響き渡る。


倉庫の奥の壁が、蒼の衝撃で粉々に砕けた。


田野は倒れこみながら、笑う。


「……やった……か……?」


与志野は肩で息をしながら、指先から煙を出していた。


「っは……これが……revolver finger……俺の全力だ……」


粉塵の中、フンペチの姿はまだ見えない。


だが確かに、奥の壁ごと吹き飛ばした。


粉塵がゆっくりと晴れていく。


壁はえぐれ、床は割れ、

蒼の弾丸が通った軌道だけが直線の廃墟となっていた。


「すごい……なんて威力だ……!」


田野は息を荒げながら呟く。

 

(正直やり過ぎな威力だが……あいつを倒すにはあれしか無かった……)


与志野は指先を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。


「くそ……指が痛え……」


その言葉と同時に。


——コツ、コツ。


粉塵の奥から歩く足音。


「……嘘だろおい……」


現れたフンペチの全身には、蒼の衝撃による裂傷と焦げ跡が刻まれていた。


制服は破れ、腕は痙攣し、

呼吸もわずかに乱れている。


だが——その目は曇りなく冷たい。


「……正直驚きました。

この私に……ここまで損傷を与える人間が抹殺斗さん以外にいたなんて……」


与志野は冷や汗を流す。


「まだ立てんのかよ……!!」


絶望の中、フンペチの蒼の気が煌々と輝いていた。


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