第二十一章『子守』
まるで夢を見ているような気分だった。
それとも、本当に夢のなかだろうか。
真っ暗な道なき道を掻き分けて光が差しこんでいる方へ、まっすぐと進んでいく。
すると、道の開けた場所にでる。そこにあったのは大きな滝だった。その滝を月光が照らし、幻想的な風景を作りだしている。
僕がそんな光景に見惚れていると、歌声が聞こえた。これは――そう、子守歌だった。僕は熱に浮かされるように、その歌声がする方向へ誘われていく。
そこにいたのは着物を来た少女――あれは間違いない。相田美崎だった。
相田美崎が腕に赤子を抱きながら、子守歌を歌っている。
「こんばんわ」
僕に気がついた相田美崎がにっこりと微笑んでくる。その笑みは背筋が凍るほどに美しく、何より恐ろしい。
「こんな時間にお散歩ですか?」
赤子を抱いたまま、ゆっくりこちらへ向かってくる。
――やめろ! 来ないでくれ!
本能がここから逃げだすことを求め、暴れだす。しかし、僕の体は金縛りにあったように、ピクリとも動かない。そうしている間にも、彼女はやってくる。
「そういえば、行方不明になった子なんですけど……」
相田美崎の口許が歪む。
「この子に似てませんでした?」
彼女の腕に抱かれていたのは、昨夜に僕らが殺したアレとそっくりな姿をしていた。
そして、ソレは目を覚ますと同時に僕に襲いかかってくる。
僕は叫び声をあげながら、その夢から逃げだした。




