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不思議道具作成者  作者: スター
第1章 幻想への慣れ
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第三話

 

 「なあべイル。俺にも理術ってのを教えてくれないか?」


 仕事が終わってからの帰り道で俺はべイルにそう頼んだ。


 「理術を?うーん、ちょっと難しいと思うぞ」


 「何でだ?呪文を唱えればいいんだろ」


 「確かに一見そう見えるだろうが実際にはそう簡単じゃねえんだ。理術ってのはな、制定言語の単語のどれを頭文字にするかで属性が変わると言っただろ」


 「あー、そう言ってたな」


 「だからこそ、その単語を頭文字に置いた場合にできるであろう文章のパターンを覚える必要性がある。何より、その属性について習熟する必要がある。それに己の中にある界力を制御する訓練も必要だ。素人だと低レベルな術なら使えるだろうがそんな高度な術は使えないと思うぞ」


 「低レベルな術っていうと?」


 「少し涼しくするのとか気持ち暖かい熱気を発生させるとか、微風を生じさせるとか、そんな所かな」


 う、うわあ、生活にちょっと便利なくらいのことしかできないのかよ……


 「まあでも、技術だからな。勉強と訓練をすれば誰でも使えるようになる。もちろん才能のある奴の方が色々とメリットはあるけどな」

 

 成程、学べば使えるようになるのか。それだけ聞くと素晴らしいモノだな。


 そうしている内に孤児院に着いた。





 「あ、おかえりべイル兄ちゃん、セーサおじさん!」


 入ったら孤児院の子たちが走りよって来た。相変わらず元気だな。


 「ラル、ミリ、早く寝ないと起きられなくなるぞ」


 「「はあーい!!」


 そういって子どもたちは自分たちの部屋へ帰っていった。


 「悪いな、まだまだ元気いっぱいな年頃でな」


 「いいって、子どもはあれくらい元気な方が健康的で良いし」


 そんなことを話し、俺は部屋に戻った。




 「さて、今日の成果だが……」


 俺は部屋の中で他の子どもたちが寝静まった頃に、今日わかったことを整理することにした。

 まず、理術。これは制定言語と呼ばれる言語を用いて詠唱することで発動するというものだった。話を聞く限りだと学びや訓練は必要だが、逆に言えば教育を受ければ誰もが同等……とまではいかなくともある程度は使えるようになるという立派な技術といえるものだった。気になる事があるといえば肝心の制定言語とやらがアルファベットだったということだ。まあその点は偶然だと思おう。

 次が理術協会だ。べイルはそこで仕事を受けていた。最初俺はあれは所謂冒険者ギルドのようなものかなと思っていたが、どうもそういうのとは何かが違う気がした。この点は明日べイルに聞くとしよう。

 で、最後が今日貰ったお金だ。いつまでもここに居続ける訳にはいかないし、ある程度まで貯めたら出ていくことにしよう。さすがに長くいたら迷惑になるだろうしな。しかし、この金が余所の国でも使えるかが問題だな。以前の世界のファンタジー作品はその辺がかなりぼかされていたしな。

 「まあこれらの事は明日確認するとして、俺もそろそろ寝るか。その前にトイレに行くか」


 俺は部屋を出てトイレに向かい、用を済ませた後、部屋に戻ろうとしていた。そんな時。


 「ん?あれはべイル?」


 廊下の向こうの方でべイルがどこかへ向かって歩いていた。


 「(こんな時間に何してんだ……?)」


 気になったのでこっそり後をつけてみた所、ある部屋に入っていった。


 「(んー、これ以上見るのはさすがに失礼だな。仕方ない、今度それとなく聞いてみるか)」


 そうして俺は部屋に戻り、寝ることにした。





 俺は皆も寝静まったようなのであの部屋に向かった。

 

 「リリ、開けても大丈夫か?」

 

 「べイル?うん、いいよ」


 扉を開けた先にはリリがベットの上でこちらを見て微笑んでいた。


 リリ╾╾俺と同じ頃にこの孤児院で育ったいわゆる幼馴染の少女だ。髪は背中まで伸びていて、この国の人らしい若干赤みがかった茶髪で、優しい顔つきをしている。

 

 リリは昔から体が弱かった。小さい頃から体調を崩すことが多かったが、最近は寝込むことが多くなっていた。


 医者にも見てもらったが、これは体質的なもののようでどうにもならないようだ。


 最初俺は理術でどうにかならないかと思い、色々と探したりもした。だが、医療に使える理術は確かに存在するが、この国ではまだ研究が進んでいないということが分かった。それが分かった時、自分でその研究をしようとした。だが、俺はまだ理術士としてはそれほど高い地位にいる訳ではない、そのため、その資料の閲覧は許されなかった。

 ならば発展している国に行けば。とも思ったが、そんな長期間孤児院を空けるわけにはいかない、他にも子どもたちがいるし、俺の収入が院を支えてもいるのだ。


 「リリ、具合はどうだ?」


 「今は苦しくないよ、ごめんね、いつも心配かけて」


 そう言って彼女は申し訳なさそうな顔をした。


 「(リリ、お前がそんな顔をする必要はないんだ)」


 これがただの風邪とかならどうにかなるんだろう。でもリリは体質的に体が弱いのだ。一生それと付き合っていかないといけない。

 ならばリリはどうやって生きていけばよいのか?

 孤児院を出て自立した人たちも自分の生活があるだろうからそう簡単には頼れない。院長にも負担をかけるわけにはいかない。


 ……この世界は不公平だ。生まれてから、親の愛情を受けて育ち、働き、誰かを愛し、子を成し、そして看取られて眠る。でもなにか一つがなんらかの理由で欠けているだけで、その道筋から零れ落ちてしまう。もちろんそこから這い上がれる奴だっている。でも全ての人が同じ様にできるわけではない。

 ましてや……リリのように生まれた時から何かが欠けてしまっていたら╾╾どう生きれば良いのだろうか。


 俺は儚げな雰囲気のリリを見ながら改めて誓った。


 必ず、支えつづけると╾╾








 ある程度物語が進んだら、このお話の後半を少し修正すると思います。

 追記:お金に関しては金貨とかにするか、国ごとに変えるか悩みましたが、下手に金融について書こうとすると、話が進まなくなる気がしたため、どんな貨幣なのかはあえてぼかしてあります。

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