第一章 第一話
街に着くまでです。世界観について少し説明があります。
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「大丈夫か?」
俺は助けてやった男にそう声をかけた。しかし男はどこか戸惑っているようだった。
「(言葉がわからねえのか?まいったな、おれはユーリア語しか話せないしな……)」
そう思っていると男が着ている緑のローブの中で何かをしていた。なんだ?なにしてんだ?
「あ……ありがとう、助けてくれて……」
普通に喋った。なんだ話せるじゃねえか
☆
「qqwoeo?」
「(や、やばい……何言ってるのか全然わからん……)」
この世界に来てからはシルバとしか話してなかったからこの世界の住人と言葉が通じるかを考えていなかった。シルバはいわゆるテレパシーのようなもので会話する存在だったようなので言葉の問題はなかったのだ。
しかし、意志疎通ができないままだとまずいな。助けてくれたこの人も困ったような顔をし始めた。どうすれば……!
「(そうだ、この手があるか……!)」
俺は身に着けていた腕時計に翻訳の機能を付与した。
この世界に来てからはあまり役に立たなくなっていた腕時計だが、こんな時に役に立つとは。
そして俺は声を出した。
「あ……ありがとう、助けてくれて……」
●
「それにしてもお前はなぜあんなところで赤炎牛に追いかけられていたんだ?」
「あの牛、赤炎牛っていうのか……いや、街道を歩いていたら後ろから走ってきたんだ」
俺はさっき助けてくれた人とデカい銀色の狼の背中に乗って走っていた。彼の街まで乗っけっててくれるようだ。実にありがたい。
「そういえば自己紹介がまだだった。俺の名はセーサだ。さっきは本当に助かった、ありがとう」
「いいってよ。そうかセーサか、俺の名前はべイルだ。よろしくな」
少し遅いがお互い自己紹介をした。この人の名前はべイルというみたいだな。若干薄くはあるが茶色が混じった黒髪をしている。顔つきは人によっては無愛想に思える感じだな。実際話してみると良い人だけどな。
「そういえばお前は旅をしてるんだっけ?」
「ええ、ちょっと故郷を飛び出してきたもので。ド田舎に住んでいたからあまり故郷以外の場所については詳しくないんですよ」
「へえ、じゃあ知らないことも多いんだな」
「はい、そりゃもう」
俺はシルバに言われたようにでっち上げの経歴を言った。確かにこの設定の方がこの世界の常識を知らないことの言い訳になるな。それに異世界から来たっていうよりは信憑性はあるし、頭がおかしいとか言われる心配もない。ある意味シルバの言ってた通りだったな。
「いや、お前がここらの言葉を話せて良かったよ、なんせ俺はユーリア語しか話せないからな」
「ユーリア語?それがここら一帯で使われている言語なのですか?」
「あれ?お前ユーリア語を知らねえのか?それと敬語は堅苦しいから使わなくても良いぜ」
「あ、わかった。それじゃあべイル、ユーリア語って何だ?」
「ユーリア語っていうのはな、ガイラル大陸での西側、ユーリア圏で使われる言語体系のことだ」
べイルの話をまとめるとこういうことのようだ。この世界にある大陸の一つのガイラル大陸の西側がユーリアと呼び、東側を陽和と呼ぶようだ。ちなみに西側の下あたりはムルファーン、東側の下がハドゥーンと呼ぶそうだ。そこいらで使われる言語の体系をその地域の名前で呼ぶようだ。
「まあ、単にその地域で使われる言語が似通っているからそう呼んでいるだけなんだけどな。でも違う地域と比べれば意志疎通は断然しやすいんだ。それとガイラル以外の大陸だがさすがにそこまでは知らん」
「いや、それぐらい教えてくれれば十分だ」
「(ずいぶんと複雑だな。でも同一地域内なら言語が似通っているから意志疎通がしやすいというのは良いな。前の世界ではすぐ隣の国でもよくわからない言語だったりしたしな。でもそれ以外の地域だと意志疎通がしにくくなるな。でも翻訳機能を付けた道具を身に着けてれば問題はないしな)」
「ところでべイル、もう一つ聞きたいんだが……」
「何だ?」
「さっきの力は何だったんだ?」
そう、俺が今気になるのはさっきの光景だ。氷の壁を作りだし、それを自在に操る。まさに魔法としか思えない、いや、魔法以外の何物でもないだろう。
「さっきの?理術のことか?」
理術!
名前は違ったがそう違うものじゃないだろう。
「あれって理術っていうのか?俺の故郷じゃああいうのは無くてな。驚いていたんだ」
「理術が無い!?お前の故郷はどんな田舎だったんだよ!?」
凄い驚かれた。どうやらこの世界では理術とやらはこの世界ではかなり馴染みが深いモノのようだな。
「うーん、それについての説明は少し複雑だから街についてからな?」
説明はしばらくお預けのようだ。うーむ、俺としては凄く気になるが助けてもらった身だから言うことは聞いておくか。
●
「着いたぞ」
どうやら街についたようだ。いやあ、ローって狼すんげえ速さで走るもんだから怖かったよ。
「ここが街か……」
「そうだ」
べイルが狼から降りる。
森に囲まれた街の光景が広がる。森の中にあるといっても村とは言えないくらいには発展した都市だった。
「ようこそ、森の中の都市、ブレナへ」
べイルが少しおどけた感じでそう言った╾╾
理術の詳細は次か次の次くらいです。




