洗礼の日
洗礼の日。僕は父に手を引かれ、町一番の教会に連れていかれた。
「これからお前は一人前の男になるんだぞ、ロイ」
父の手に力が籠った。
「メシアがどんな祝福を与え給うたとしても、お前は俺の誇りだ。自慢の息子だ」
父さんは僕に話しかけるけれど、顔は見せてくれなかった。去年、隣のリーナお姉ちゃんが洗礼を受けたときと同じだった。
お姉ちゃんは教主様に”道化師”だと言われていた。教主様は首を振り、ため息をついた。
みんなを笑わせてくれたお姉ちゃんが、ピエロっていうのはぴったりで、カッコいいと思った。
だけど次の日、リーナお姉ちゃんは町を出て行った。
この街にはもういられない、とおじちゃんが言っていた。
荘厳な鐘が鳴る。ステンドグラスが色とりどりに輝いて、たくさんのロウソクが灯されていた。
大勢人がいたけれど、誰も音を立てなかった。
ただ一人、祭壇の教主様が声を上げる。
「ライネルの息子ロイ。前へ」
教主様は真っ白なヒゲの下に金色の首飾りを下げていて、お香の匂いがした。
頭に手をかざす。
眩しい光がさして、僕は思わず目を閉じた。
「これは……!」
教主様の声がした。
額が熱を持って、なにかを焼き付けられるようだった。
「すばらしい……! 神の御業が降りた!」
シスターたちの歓声が上がった。父が駆け寄ってきた。
「死霊術師だ……この町では初めてだ!」
興奮を抑えきれない、教主様の声。
僕は何が起きたのかわかっていなかった。
「ロイ、お前は選ばれたんだ」
僕は抱き寄せられた。鼻をすする音が聞こえた。
「お集まりの皆さん! ご覧ください、この神の祝福を! おお敬虔なるライネル。そなたの喜捨、清貧、信仰が神に届いたのだ!」
鐘の音をかき消さんばかりの拍手が聞こえた。
「喜捨こそ祝福の第一歩です! 神は応えます!」
それから祭壇に、見たこともないほどたくさんの果物が並べられた。
「お好きに食べなさい」
とシスター長が言ったので、僕はぶどうを3房食べた。
それから焼いたばかりのお肉と、クルル鳥の卵も食べた。金ピカの指輪を貰い、サラサラの服を着せてもらった。
おじちゃんとおばちゃんが駆け込んできて、銀の燭台を僕に渡した。
「どうかリーナを! ロイ、お願いします!」
そう叫ぶ2人はシスターたちに追い出されてしまった。




