16 響の膝枕作戦
「うーん! やっぱり花菜みたいには上手くできないなー」
「味付けはレシピ通りなんだから、後はコツだよぉ」
あれから数日響の部屋で二人、食後に本日作った夕食の感想を語っていた。
何日かチャレンジしてみて、初日よりはマシになってきたのだが……やはり花菜のものにはまだまだ程遠く敵わなかった。
花菜は美味しいと褒めてくれるのだが、如何せん相対的に花菜の料理が美味し過ぎる。
「やっぱり、花菜の料理が一番美味しい……」
「一番は言い過ぎだよぉ……」
事実嗜好に合っているのか、響は心から花菜の料理が好きだった。
母親のものと比べても、花菜の方が好みの上で勝っているかもしれない。
母親に不義理かと思い、口には出していなかったが……。
「そんなことない、花菜はもっと自信を持っていいと思う」
「響ちゃんが喜んでくれるのは、嬉しいよ?」
花菜が困ったように笑いながら答えた。
響は至って真剣なのだが、いまいち伝わっている気がしない。
「本当に、毎日ありがとう……」
食事を作ってもらっている身としては、誠実に感謝するのが筋だと感じて素直に謝辞を述べる。
謙虚は美徳であるが、正しく花菜に認識して欲しい。
それ程花菜に伝えたかった。
「そうだ」
いいことを思い付いたとばかりに声をあげる。
「ねぇ、花菜ちょっといいかな?」
「えっ、なに……?」
座っている花菜の元へとクッションごとにじり寄る。
こういうとき顔に出るのだろうか、花菜に少し警戒されるようになった。
「これ」
響は自分の太もも……現在は制服から着替えてショートパンツから露出した太ももを叩いた。
「膝枕してあげる」
「ええっ⁉ なんで、急に⁉」
「頑張ってる花菜へのご褒美?」
「なんで疑問形なの⁉」
首を傾げながら答えた響に対して花菜は当然といった回答を返すが、思わずといった感じで声も上ずってしまっている。
「膝枕って、ご褒美になるんじゃないの? 恋人同士だと夢的なものだって聞いたことあるし」
「確かに……そうかも……だけど……」
花菜は声を絞り出す。
もう一押しすれば、いけるのではないだろうかと響は考えた。
「まぁ、私はあんまり女子っぽい身体つきじゃないから寝心地は悪いかもだけど……」
「そういう……ことじゃ、なくてぇ……」
途切れ途切れの言葉を紡ぎ、こればかりはと譲ろうとしない花菜。
「そ、そうだ! 響ちゃん! 響ちゃんが私のお膝使ってよ!」
「えっ……私が? それこそ、なんで?」
花菜の唐突な、それも何故か逆転の提案に響は戸惑いを覚える。
「私は響ちゃんに膝枕できると、嬉しいよ!」
「えっ、そっ……そうなの?」
「それに響ちゃんは日頃クラス委員や学校で頑張ってるのに、最近はお料理まで頑張ってるんだよ! それこそご褒美だよ!」
花菜の力説が続く。
響は花菜の目から視線を外して、ストッキングに覆われた太ももに目をやる。
制服のスカートから伸びるのは、自分とは違って女性らしい肉付きだ。
自分の物より遥かに寝心地が良さそうなそれは、響の心を擽るのに十分だった。
「…………分かった」
じっと目を向けて響の動向を伺っていた花菜に対して、響は肯定の意を返した。




