第七話⑥
「よし、それじゃあ、洞窟の奥を探索するぞ」
真黒さんが、そう言って洞窟内に入って行った。
私やみんなは、真黒さんの後を追い、洞窟に入って行った。
私達は、美妃ママを倒したことで、安心しきっていた……。
グサッ
真黒さんの身体を1本の刃が貫いた……。
(え?)
刀を突き刺していたのは、守神様だった……。
(な、なんで? 美妃ママを倒したから、守神様も消えたはずでは……)
「フッフッフッフッ ハ~ハッハ~」
私達の背後、洞窟の入り口の方から、笑い声が聞こえた。
私達が振り返ると、そこには美妃ママの男性マネージャーがいた。
「残念さ、探偵さん。そんな簡単に油断するなんて……。それは、単なる刀ではないのさ。あなたには、遅効性の毒が効かなかったようだからね……。今度は、即効性の毒を仕込ませてもらったよ……、その刃にね……フッ」
守神様は、真黒さんの身体から刃を引き抜き、そのマネージャーの横に移動した。
「な、なるほどな……、どうりで美妃ママに警戒しても意味がなかったわけだ……。お前が黒幕だったんだな……」
真黒さんか刺された腹部を押さえながら言った。指の間から血が滴り落ちている。
「その通り……。僕の名前は増田慎人。僕が本当の『ビショップ』さ。守神は、僕の誓約霊。彼には、毒を作り出す能力があるんだ。その能力で、かき氷に遅効性の毒を仕込ませてもらったのさ。」
ビショップがそう言うと、真黒さんは膝から崩れ落ちた。
私は真黒さんのもとに駆け寄り、彼の身体を支えた。すると、私の全身が緑色に輝き、その光が真黒さんの傷を癒した。
「なるほどね……。かき氷の毒もその光で浄化したようだね……。仕方がない、おいで……『ハスティン』」
ビショップがそう言うと、金色のウェーブがかかった髪に青い目の少女が煙のように現れた。
「『ハスティン』は、アメリカで天才占星術師だった女の子……。可哀想なことに、12歳という若さで亡くなってしまった。彼女も僕の誓約霊さ」
(この人……前と全然印象が違う。これが本性……。それに、キザな言い回しをするけど、色々と丁寧に説明してくれるから助かる……)
ビショップは、更に続けた。
「ハスティンは、予言や占いを100%的中させるほど、高い霊力を持っているのさ。美妃ママの占いもハスティンが行っていたもの……。美妃ママは、僕の傀儡でしかない……。マインドコントロールが解けた今の彼女は、有名な占い師であったことすら覚えてないだろう……」
(美妃ママが、この人にマインドコントロールをかけてられていた!? あの時、守神様が消えたのは、私達を油断させる罠だったということ……? )
「おしゃべりは、これくらいにしよう……。ハスティン」
ビショップがそう言うと、ハスティンが黒いオーラを放ち始めた。彼女は悲しそうな目をしていた。
ボコ、ボコ、ボコ……
地中から大量のゾンビが出現した。
「ハスティンは、一度に大量の霊を従わせることができる。阿形も吽形も…… ハスティンが操っていたのさ」
ビショップが言った。
「大量にお出ましか……」
真黒さんがそう言って身構えると、社長が一歩前に出た。
「ワシに任せんしゃい」
社長が構え始めた。あの第四話で見せた必殺技を撃つつもりだ。
「かめ○め波~!」
(か、完全にパクりだ…… 大丈夫かな、これ?)
社長が撃った必殺技は、数十体のゾンビと守神様を一瞬で消滅させた……。
あとに残ったのは、ビショップとハスティンだけだった。
「ま、まさか…… ここまでとは…… さ、流石は……の力……」
ビショップが、言ったことを私達は正確に聞き取れなかった。
「ハスティン!!」
ビショップがそう叫ぶと、ハスティンは更に数十体のゾンビを呼び出した。
そのとき、私は微かな声を聞き取った。
「……release ……Please release me.」
(……リリース ……解放? これは……ハスティンの声? ハスティンは今の状況を望んでいない……? )
ハスティンを見ると、彼女の頬を一筋の涙が伝っていた。
(ハスティンも操られているだけなんだ…… 本当は、こんな戦いを望んでいない……)
大量のゾンビ達を社長と真黒さんが駆逐していく。ビショップは、そちらに気を取られていた。
私はその隙にハスティンのもとに駆け寄り、彼女を抱きしめた。私の目からも涙が溢れた……。
「Why?…… Why are you shedding tears?」
「I …… I want to help you !」
そのとき、私の全身が緑色に輝き出し、その光がハスティンを包み込んだ。
悲しげだったハスティンの表情が、穏やかになっていった。
そして、ハスティンの全身が薄くなり、彼女の霊体は天に昇り始めた。
「I can acsend to heaven thanks to you. I will make a prophecy for you. You will soon have a wonderful romance. 」
(え? え~!? それって、もしかして…… )
「さぁ、残ったのはお前だけだ、ビショップ!」
真黒さんがそう言い、ビショップの額に向かって「デコピン」の構えをした。
「ヒィィ……」
ビショップは怯えていた。
(あれ、既視感? また、この流れ……?)
しかし、美妃ママのときとは違い、真黒さんはすぐにデコピンを放った。阿形や吽形に放ったよりも優しく、そっと指を放った……。
ビシュン
ビショップは、吹き飛んで岩壁にぶつかり、気を失った。
「う~ん、力の加減が難しい……」
真黒さんがそう言った。
気絶したビショップを社長と麗亜さんに任せ、私と真黒さん、それにブルーちゃんは再び洞窟の奥に向かった。
洞窟の奥の行き止まりには隠し扉があり、その中には行方不明だった4人の子ども達がいた。食事や水は与えられていたようで、4人とも元気な様子だった。
こうして、古宇都村の「神隠し事件」は解決した。
翌日
私達は、村長から報酬を受け取り、母の車で帰路に就いた。
古宇都村では、なぜか上海蟹の養殖が盛んだったので、私はそれを青木さんのお土産にした。
(なんか、長い3日間だったなぁ~)
真黒さんは、車酔いしたり、命を失ったり……散々だったので、古宇都村に来るのは、もう懲り懲りらしい……
私はハスティンの言葉を思い出していた。
『You will soon have a wonderful romance. 』
(素敵な恋愛かぁ~)
私は、真黒さんをチラッと見た。
「う、ヤバい……吐きそう……」
真黒さんは、また車酔いしていた……。
(あらら……)
真黒探偵事務所
(なんか、久しぶりに帰ってきた気がするなぁ……。青木さん、蟹を喜んでくれるかな……)
ガチャ
私は事務所の入り口のドアを開けた。
「ただいま~ 青木さん、蟹がありましたよ!」
しかし、事務所の中は静まりかえっていた。
(あれ? 青木さん、帰ったのかな……? でも、入り口の鍵がかかってなかったし、事務所の明かりも点けっぱなし……)
そのとき、真黒さんが言った。
「おい……、これ……」
真黒さんは、私に1枚の紙を差し出した。
そこには、こう書いてあった。
『青木あかりは預かった』
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