第七話④
翌朝
私と真黒さんは、森の中にある神社に来ていた。
私達は古びた鳥居をくぐり、境内に入った。
「ここがその祠ですね」
真黒さんは、祠の周りを1周してから、扉の正面に戻ってきた。
扉の上の注連縄は、割と新しいものなのだが、ほどけて切れかかっている。
真黒さんは、躊躇いもなく祠の扉を開けた。
祠といっても、内部は三畳ほどの広さがあった。中央には、全部で三段の階段状の棚があり、最上段にロウソクの燭台や御神体を納めるお宮があった。お宮の扉は開かれており、御神体の像が祀られていた。床や棚には、破れた御札が何枚も落ちていた。
「やはりな…… 御神体に皹が入っている……」
真黒さんが言った。
「どういうことですか?」
私は真黒さんに尋ねた。
「元々、ここに封じ込められていた怨霊の封印が解かれているってことだ」
「怨霊……」
「ああ…… 昨日、村長に聞いたんだが、この神社に祀られていたのは、落武者の霊だったらしい……。追手を恐れた村人達に殺された落武者だ。そいつを殺した後に疫病や災害が多発したから、神社を建立したそうだ……。なんとも自分勝手な村人達だ……」
(え、そうなの? 知らなかった……)
「御神体の像に皹が入ったことで封印の力が弱まり、その落武者の怨霊が解き放たれたんだろう……」
「確かに…… この祠からは何も感じませんからね」
私がそう言うと、真黒さんがワイシャツの襟元をバタつかせた。
「それにしても、午前中とはいえ、かなり暑いな……」
(そりゃ、そうだよ~ そんな格好をしてれば暑いでしょ……)
真黒さんは、真夏にも関わらず、いつもの「探偵コスプレ」だった。夏にスーツの上着を羽織ったら、さすがに暑いだろう……。
「じゃあ、この近くに甘味処があるんです。そこで、かき氷でも食べましょう」
私はそう言って、真黒さんを甘味処に案内した。
甘味処
「私は、イチゴ味ください」
「俺は、ブルーハワイで」
私達は店先の長椅子に座り、かき氷を注文した。
「はいよ、200万円ね! ハッハッハ~」
お店のおばちゃんが、特に面白くない冗談で返してきた。
暫くして、私達のかき氷が来た。
そのとき
「あら…… 探偵さんじゃない……」
店の奥から美妃ママが出てきた。
「どうですか、調査は順調ですか?」
美妃ママがそう言ったとき、青くなった舌がチラッと見えた。
(美妃ママもブルーハワイを食べてたんだ……)
「順調だい! もうすぐ解決しそうだい!!」
真黒さんが答えた。
(ま、真黒さん、そんな強がりを…… まだ、ほとんど何も分かってないのに…… あと『だい』って語尾は何なの? どうしたの? )
「それは……嘘。私には分かるんだから…… オーホッホッホ~ あ、頭が痛い……」
(かき氷を急いで食べたのかな? 頭がキーンと痛くなるよね……)
「増田! 行くわよ」
美妃ママは、男性マネージャーに言った。
「それじゃあ、探偵さん…… またお会いしましょう。オーホッホッホ~ あ、頭が痛い……」
「あ、待ってくださいよ~、美妃さ~ん」
増田という男性マネージャーは、よろよろと走りながら、美妃ママの後を追って行った。
2人が去ってから、私達は夢中でかき氷を食べた。頭がキーンと痛くなった。
「真黒さん…… これから、どうするんですか?」
かき氷を食べ終えてから、私は尋ねた。
「ああ、ブルーが神隠しに遭った子どもたちの行方を探している……」
真黒さんがそう言ったとき、ブルーちゃんが真黒さんのもとに戻ってきた。
ブルーちゃんは、真黒さんの誓約霊で、探索能力にかけては超一流だ。
「紅白、見つけたゾナ~。 村の外れに小さな洞窟があったゾナ~」
ブルーちゃんが言った。
(『ゾナ~』…… ブルーちゃんも、その語尾は何なの? どうしたの? しかも、それサン○オのやつじゃない?)
洞窟
私達は、その洞窟の入り口に着いた。
真黒さんが探偵ハットを脱ぎ、額の汗を拭った。
(真黒さんの汗が尋常じゃない…… やっぱり、その格好暑いんだよ。上着を脱げば良いのに……)
「じ、じじい」
真黒さんがそう言うと、
「はいよ」
真黒さんの誓約霊の社長が現れた。
「麗亜さん」
私も念のため、誓約霊の麗亜さんを呼び出した。
「チィース」
麗亜さんは、眠そうな顔で言った。
(え、寝てた? 寝てたの? 誓約霊って眠るの!?)
洞窟に入ると、その中は真夏にも関わらずとても涼しかった。私と真黒さんがスマホのライトで洞窟の内部を照らした。何が出てくるか分からないため、私達は慎重に歩みを進めた。真黒さんの足取りがふらふらしていた。
(真黒さん、大丈夫かしら? もしかして、夏バテ? )
私達が5分ほど歩くと、行き止まりに辿り着いた。
「おそらく、この先に何かあるゾナ~」
ブルーちゃんがそう言ったとき
ゴゴゴゴゴ……
入り口の方から音が聞こえた。
(え? な、何? ま、まさか……閉じ込められた?)
「ちょっと、見てくる……」
麗亜さんが言った。
「ブルーも行くゾナ~」
ブルーちゃんが麗亜さんを追いかけた。
そのとき
真黒さんが急に私に抱きついてきた。
(え、え、え~? キャー!!! 何? 急なラブコメ展開? 真黒さんは変な人だけど、私を変えてくれた人。憧れの気持ちはあるけど…… でも、ダメダメ 私はまだ未成年だし…… 真黒さんの気持ちは嬉しいけど……)
私がそんなことを考えていると、真黒さんの体がずれ落ちた。
ドサッ
そして、社長が言った。
「こ、紅白っちが……、死んだ……」
(そ、そんな……)
私は、目の前で起きた出来事の衝撃が大き過ぎて、叫ぶことすらできず茫然としていた……。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。





