19-4 血は流れても……
姉川方面は、頼光隊の鬼神のごとき攻撃が敵を薙ぎ払う。
番場方面は、再び意を決した源桜が咆哮する。
だが、増援の波は終わらない――突破の代償は、ますます重くなる。
そこに一筋の光は、越後の友軍からもたらされた……。
■姉川の砦の攻防
姉川に築かれた砦を守る織田軍は、羽柴秀吉隊、磯野員昌隊に加え、周辺地域の織田に味方する国人衆たちも増援として駆けつけており、その守りは堅い。
それでも、源頼光は自軍の犠牲を顧みることなく、砦に猛攻を加える。
頼光「頼朝殿の部隊に、被害を出してはならぬ! この砦は、我が隊のみで何としても突破するのだ!」
頼光隊の、鬼気迫るほどの気迫は、後方から進軍する頼朝にも、ひしひしと伝わってくる。それ故に、頼光隊の損害も軽視できない状況でもあった。
頼朝「大砲を用意いたせ! 頼光隊を援護する! 急げ!」
頼朝隊は大砲による砲撃を開始し、砦の一つ目の城門を粉砕する。
満身創痍ながら勢いが止まらない頼光隊は、山頂の砦へ退却していく敵兵への追撃の手を緩めない。最後の城門を破壊すべく、急な斜面を駆け上がっていく。
その頼光隊の進撃を見ていた頼朝は、すぐさま頼光隊への伝令を送る。
頼朝「頼光殿へ伝えよ! 頼光隊は城門から距離を取り、我らの砲撃と射撃で城門を砕き、守りを削ぐ、と! 頼光隊の突撃は、頃合いをみてからじゃ! 今は、我らと合流するように、そう伝えよ!」
伝令が、頼光隊へ届いたか、届かないか、まさにその時であった。
砦背後の尾根筋を伝い、富田重政の旗が突如翻った。後方の山陰から新たな織田軍の増援部隊が、斜面を駆け上がる頼光隊の後背へと襲いかかる。
頼光隊は、前面の城門・織田軍の守備兵、そして背後から現れた富田重政隊に挟撃される形となった。多くの兵たちが、次々と富田隊の凶刃に倒れ始める。
頼朝「あの織田の増援は、いったいどこから現れたのだ!」
頼朝は叫んだ。
頼朝「目標、後方の富田隊へ変更! 射撃を、あの増援部隊に集中させよ! 何としても、頼光隊を援護するのだ!」
挟撃を受けながらも、頼光隊は、城門への攻撃の手を緩めない。すでに頼光隊の兵一人一人が死兵と化していた……ついに、頼光隊は最後の城門を破壊する。
頼光隊は、背後に食らいつく猛獣を引きずったまま、前面の砦内へ突撃を敢行した。
頼光「狙うは、目の前の羽柴秀吉、ただ一人! 者ども、かかれぇぇーーーっ!」
狭い山頂の砦の中で、両軍入り乱れての、壮絶な白兵戦が始まった。兵数を大きく減らしながらも、頼光隊は鬼神の如く突撃を続ける。
頼朝隊の本格的な射撃を受けはじめた富田隊は、頼光隊の背後の兵を倒す以上に、自らの部隊が倒され始める。
秀長「頼朝様! 後方の織田の増援は殲滅いたしました!」
秀長からの報告が届く。
秀長「ですが、頼光隊は砦内にて、羽柴秀吉隊と激しく交戦中! なおも、突撃を敢行しております!」
秀長にとっては、実の兄が率いる部隊に対する、猛獣のごとき味方の部隊からの攻撃を報告する、という役目であった。
頼朝「…つらき思いをさせるな、秀長」
秀長「とんでもございません、頼朝様! 主君は、頼朝様ただお一人! 主君のためであれば、この命、喜んで捧げる所存にございます!」
頼朝「かたじけない、秀長……。では、我が隊もこれより突入し、頼光殿を援護する! そして……秀吉隊を殲滅させる! …良いな」
秀長「御意!」
砦内で激戦を繰り広げる頼光隊に頼朝隊が合流し、両翼から秀吉隊を攻撃する。富田隊の残党、そして磯野隊が壊滅。羽柴秀吉隊もついに支えきれず、砦を放棄し、長浜城へ敗走していった。
姉川の砦を突破し、長浜城への道は開かれた。しかし、すでに頼朝軍は傷つき、特に頼光隊は、甚大な被害を受け、頼朝隊、義経隊もまた、少なからぬ損害を被っていた。
■番場の苦戦
桜「おおおおーーーっ!!」
番場方面では、トモミク隊の参戦で押し戻した織田軍に対して、源桜が二次攻撃を敢行していた。咆哮しながら、織田軍へと突撃を繰り返す。
だが、織田軍が集結する番場の地では、頼朝軍が倒す敵兵以上に織田軍の断続的な増援の兵が上回っていた。そのため、頼朝軍の被害は大きくなるばかりであった。
桜の目には、番場の砦の脇をすり抜け、長浜方面への織田軍の断続的な増援が目に入る。
桜「父上……! この、力なき桜を、お許しください!」
桜は、馬上から、敵味方の兵が入り乱れて倒れていく光景を見つめながら、悔しさに唇を噛んだ。
だが、その時であった。前方の織田軍の動きに変化が生じた。一部の軍勢が、慌ただしく兵を引き始めているのが見えた。
桜「何がございましたか!」
桜が尋ねると、斥候が駆けつけ、報告した。
伝令「上杉景勝殿が、越前へ出兵された模様! それを受け、織田軍は軍勢の一部を、急ぎ越前方面へと割いておりまする!」
*越前一乗谷城に向けて二手に分かれて進軍する上杉軍
桜「そうでしたか!」
桜は、刃こぼれした太刀を投げ捨て、新たな太刀を抜き放つ。
桜「早雲様から、退却の命があるまで織田勢へ突撃をかけます! 皆さま、続いてください!!!」
何度、突撃を繰り返したか、もはや分からない。それでも、源桜は、残る力全てを振り絞るかのように、部隊の将兵たちに檄を入れた。
桜「かかれぇ! 敵を押し戻すのは今です!」
桜は、再び、自らの騎馬に力の限り鞭を打ち、前面の織田軍へと、猛然と突撃を再開していった。
お読みいただきありがとうございました!
頼朝軍の双璧・北条早雲隊、源頼光隊をもってしても、織田軍が本気で築いた壁を越えられないところ、上杉景勝が動き出しました。
次回、長浜城、番場の砦を攻略する事はできるのか!
どうぞお楽しみに!




