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8-2 兄弟の再会、逆襲の咆哮

稲葉一鉄を退けても続く、織田の波状攻撃。弾薬尽きる小牧山で、義経はなお撃ち続けた。

そして夜明け――

犬山と大草、二方から頼朝軍が動き出す。

義経の咆哮、道灌の突撃、桜の進軍――

今、反転の刻が始まる。

■再出撃準備


頼朝軍主力が武田軍救援に向かった隙に、織田軍は頼朝軍団の本拠地美濃に猛攻をかけてきた。

留守居の指揮を任されていた義経は、小牧山にて死闘を繰り広げていたが、頼朝軍主力の帰還まで織田軍の突破を許さなかった。


そして頼朝軍主力が帰還した今、逆襲に転じるべく、準備を整えていた。頼朝と秀長は、大草と犬山から、いったん進軍を止めて小牧山に踏みとどまる織田軍を挟撃して追い払う作戦を考えている。


大草城には、南信濃遠征を終えた頼朝隊、トモミク隊、赤井輝子隊が結集。いずれも兵数は出撃当初より減ってはいたが、総勢数万の規模は保ち、士気も高い。


犬山城には小牧山で死闘を繰り広げた義経隊、太田道灌隊、そして岐阜から駆けつけた北条早雲隊が合流した。



犬山城下にて、義経隊と合流した早雲を驚かせたのは、長期の激戦を経た義経隊が、いまだ最大の兵力を維持していたことだった。


早雲「さすがは義経殿!その用兵の妙、尋常ではありませぬな!」


織田軍の波状攻撃を受け続け、殿軍しんがりを務め、整然と激戦地から引き上げてきた義経隊の姿を見て、北条早雲も驚きと称賛を隠せずにいた。


早雲「わしは幼いころ父から義経殿の武勇伝を聞いて育った。それを今の世で目にできるとは……!光栄の至りですわい! がはは!」


今の世では義経よりも遥かに年長である早雲から、「幼き頃の英雄」と呼ばれるのも、奇妙な感覚ではあった。


義経「いえ、道灌殿という強き盾が無ければ、わが隊は早々に壊滅していたでしょう」


義経は謙遜しながらも、ちらりと妻・梓へと視線をやった。


(そなたの支えがあってこそだ)


言葉には出さないが、二人の間には深い理解があった。


挿絵(By みてみん)



間もなく頼朝から犬山城下に布陣する義経隊に早馬が届く。「小牧山へ向け再出陣せよ」との合図だ。


義経隊、太田隊、早雲隊はいよいよ反撃の鬨の声を上げ、再び小牧山へ突き進む。



■小牧山での逆襲


小牧山に残る織田軍も、羽柴秀吉、堀秀政ほりひでまさ、柴田勝家、堀直政といった、織田軍が誇る精鋭部隊は、まだ健在であった。


しかし、頼朝軍本隊が布陣している報を受けた織田軍は、むやみに進軍することを止め、頼朝軍を迎撃する構えを見せる。


義経「――守りは、ここまでだ!」


その叫びと同時に銃声が怒涛となる。

義経は、ここまでの耐える戦いから解き放たれたかのように、苛烈な砲撃を織田軍に浴びせかけた。


挿絵(By みてみん)


織田軍は義経軍の苛烈な攻撃に対して防御の構えを強いられていたが、義経隊の後方に見える、太田道灌隊、北条早雲隊の騎馬隊の大軍に恐れを抱いていた。


挿絵(By みてみん)


しかし頼朝軍は、騎馬隊の突撃に先立ち、大草方面から展開した大規模な鉄砲隊によって、側面からの一斉射撃を加えた。義経隊をはるかに上回る銃列だった。


輝子「留守をねらうなんてね、おとこの風上にもおけないよ!遠慮なく撃ち払いな!」


大草方面から第一陣を任された赤井輝子隊の射撃を皮切りに、後続の部隊が隊列を前に出しながら断続的に間合いを詰めながら射撃を織田軍に加えていった。


挿絵(By みてみん)


騎馬隊の突撃を恐れる織田軍は思い切った動きをとれないままに、犬山方面と大草方面の容赦ない砲撃に大混乱となる。


道灌「ころあいじゃの、早雲殿」


早雲「参るとしよう。桜殿……!」


早雲は傍らの源桜に目配せを送った。


桜「はい……!みなさま、これより突撃をかけます。私に続いてください!

突撃!」


源桜を先頭に、北条早雲、太田道灌の騎馬隊が一斉に小牧山に布陣する織田軍に襲い掛かった。


挿絵(By みてみん)


これまで義経たちを苦しめてきた織田軍は、頼朝軍の全軍に近い部隊の攻撃を受け小牧山から撤退。頼朝軍に対し、組織的な反撃を行う部隊を失い、戦線は崩壊に至った。




■頼朝の新たなる決意:清州城への侵攻


織田軍の主だった部隊を、小牧山周辺から完全に追い払い、目の前には、織田信長自らが布陣する清州城が迫っている。


頼朝は、各部隊長を、小牧山の麓に急ぎ招集した。


義経が頼朝の本陣に到着した。南信濃へ向け、那加城を出陣したのが、まるで遥か遠い昔のことのように感じられる。


頼朝「義経!」


頼朝は、駆け寄ってきた弟の手を、強く、強く握りしめた。


頼朝「よくぞ……! よくぞ、織田の猛攻を凌ぎきってくれた!大義であったぞ、義経! まことに、大義であった!」


義経「兄上!……兄上こそ、よくぞお戻りくださいました!」


かつて、あれほど憎み、その命を奪うことまで考えていた自らの弟。その弟と、今、こうして手を取り合い、互いの無事を素直に喜び合っている。この数奇な運命を、頼朝は感慨深く受け止めていた。


挿絵(By みてみん)



頼朝は小牧山の麓で軍議を開き、集まった諸将を前に声を張り上げる。


頼朝「みなのもの――!」


頼朝は、集まった将たちの顔を見渡し、張りのある声で言った。


頼朝「よくぞここまで戦い抜いてくれた!この頼朝、心より、皆に感謝する!」


頼朝は一息置き、険しい表情に戻る。


頼朝「このまま、軍を那加へ帰還させることもできる。

しかし……わしは……

目の前の織田信長を蹴散らし、あの清州城を、我らの手で攻め落としたいと考えておる」


挿絵(By みてみん)


集まった部隊長からどよめきが起こった。

義経と頼朝、ついに戦場で再会。

その手には、兄弟の絆と信頼があった。

目指すは織田信長の本陣・清州城。

次章、信長の牙を抜く逆襲が幕を開ける。

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