34-5 あらたなる頼朝軍団
急速に広がった頼朝軍団の領国。
もともと規模が小さく、人材にも恵まれなかった頼朝軍にとって、領国経営と部隊再編は急務であった。
秀長は、旧織田家臣の登用や新軍団の設立により、“信と自律”を柱とした体制強化を進めていく。
頼朝が自らの決意を家臣たちに伝えた後、筆頭家老・羽柴秀長が静かに進み出た。
その顔には、これまでの激戦をともにくぐり抜けてきた者の安堵と、新たな責務を担う覚悟が宿っていた。
秀長「拙者からも、皆々のこれまでのご奮闘に対し、心より御礼申し上げまする。
この度、頼朝様のご意向を受け、あらたなる軍団の陣容についてご提案申し上げる。
領国が短期間で広大となり、もはや一城一城の采配のみでは手が届かぬほどになりました。
ゆえに、今後は各地の地理・民情を知る将を中核とし、より自律的に政と軍を動かせる“方面軍”を設けたいと存じます。
――すなわち、主君の信を受け、己の知略と責任で領を治める“真の将”による軍団制でございます」
その言葉に、家臣たちの間に静かな熱気が走った。
“信頼”を基にした体制――それは、この頼朝軍の根幹に据えられてきた理念でもあった。
■軍団設立と軍団長
秀長「まずは、荒木村重殿」
秀長は、旧織田家の摂津方面軍団長で、頼朝軍に降った荒木村重に声をかけた。
秀長「此度、頼朝様に正式に臣下の礼をお取りいただいたこと、頼朝軍すべての者が心より感謝しておりまする。
元来治めておられた摂津はそのまま安堵とし、さらに西近江の朝宮城、山城の槙島城を加増いたしたく存ずる。
今後は、西国方面軍の軍団長として、かの地の統治と西からの脅威への備えをお願い申し上げたい」
村重「ははっ! この荒木村重、ようやく真の主君と巡り合うことができましたぞ!
旧領の安堵のみならず加増まで賜り、重ねて御礼申し上げます!この村重、残る織田領である丹波、そして畿内方面からのいかなる侵攻も、必ずや食い止めてご覧にいれます!」
荒木村重は、調子の良い言葉を並べながらも、その声音の奥には、どこか計りかねぬものがあった。
その軽妙さは忠義とも打算とも取れぬ――だが今は、それでよかった。
秀長「次に、飯坂猫殿」
秀長は、頼朝軍の財政を支えてきた女将へと向き直った。
秀長「ここまで我が軍が戦を続けられたのは、貴殿を筆頭とする内政官の方々の昼夜を問わぬ働きあってこそ。
異を唱える者など、この軍団にはおりませぬ。
これまでの功に報いるべく、伊勢国すべてを猫殿の管轄とし、今後は伊勢方面軍軍団長として、伊勢の地をさらに豊かに発展させていただきたい」
猫「それは、何とも名誉なことでございます!
本当は、わたくしだって戦に出れば、結構強いのですけれど……まぁ、仕方ありませんね!
これまで通り、経済の発展、兵士の皆様への食料や武器弾薬の調達は、この猫と伊勢の内政官の面々にお任せくださいませ!」
飯坂猫は、明るく快活に笑い、場の空気を和ませた。
家臣たちの間にも、自然と微笑が広がる。
秀長「そして、前田利家殿」
秀長は、かつての織田家の同僚であり、今や頼朝軍の柱石となった勇将に声をかけた。
秀長「利家殿には、我が軍団に合流いただいてから間を置かず、尾張の発展や、新設・梓様の部隊の参謀としての働きなど、要所要所でご尽力賜り、旧臣一同感謝に絶えませぬ。
利家殿のお力とご人徳、もはやこの軍団の誰もが認めるところ。
つきましては、今後は若狭・越前をお任せし、北陸方面軍軍団長として統治をお願い申し上げる。
人員については、旧織田家臣の中から選りすぐりの者たちをお預けいたす」
利家「はっ! まことにありがたき幸せにございます!
京で何か異変が起きた際には、この利家、ただちに越前より駆けつけまするぞ!」
前田利家の声に、堂内の空気が引き締まった。
その力強さは、戦場を知る者の覚悟そのものであった。
秀長「あらたに設立する方面軍は、以上でござる」
■頼朝直轄軍の城代任命と部隊新設
秀長は一呼吸おき、声を整えて続けた。
秀長「次に、頼朝様直轄の軍団編成と、その拠点についてお知らせいたします。
まずはじめに……。
世良田元信殿、そして里見伏殿。これまでの抜群のお働きぶり、そして誰もが疑うことのない将としての力量を鑑み、あらたな軍事拠点の城代を任命いたしたい。
また、元信殿はこれまでの副将の任を解き、配属された城にて部隊長も兼ねていただくこととする」
<新たな頼朝軍団>
新設軍団
西国方面軍:[軍団長] 荒木村重 /[拠点] 摂津全域、槙島城、朝宮城
伊勢方面軍:[軍団長] 飯坂猫 /[拠点] 伊勢全域
北陸方面軍:[軍団長] 前田利家 /[拠点] 越前、若狭
近江・伊賀・山城方面(頼朝直轄)
長浜城(第四狙撃隊):[城代] 赤井輝子(譜代衆)
安土城(第一突撃隊):[城代] 源桜(頼朝娘)/[後見] 北条早雲(譜代衆)
音羽城(第五狙撃隊):[城代] 里見伏(譜代衆)
伊賀上野城(第七突撃隊):[城代] 世良田元信(新参衆)
二条城(第一狙撃隊):[城代] 太田牛一 /[駐留] 源頼朝隊
美濃・尾張方面(頼朝直轄)
大垣城(第二・四突撃隊):[城代] 源頼光(一門衆)/[駐留] 渡辺綱隊(第四)
岐阜城(第二狙撃隊):[城代] トモミク(譜代衆)
那加城(第三狙撃隊):[城代] 源義経(一門衆)
清州城(第六狙撃隊):[城代] 武田梓(一門衆)
犬山城(第三・五・六突撃隊):[城代] 太田道灌(新参衆)/[駐留] 大内義興隊(第五)、犬塚信乃隊(第六)
頼朝軍団の新たな配置命令、そして論功行賞が一通り終わると、頼朝が再び立ち上がった。
頼朝「今宵は、ささやかながら宴の用意がある。
今や織田もかつての勢いを失い、残るは河内・丹波の四城のみ。
もはや以前のように、我らが領内へ大規模な波状攻撃を仕掛けてくることもあるまい。
今宵は皆、しばし戦や任務のことを忘れ、ゆるりと過ごすがよい。
年が明ければ、わしはこの那加城を発ち、二条城へと赴くつもりじゃ。
わし自身も、今宵はこの那加城との別れを惜しみながら、皆と共に、美味い酒を心ゆくまでいただくとする!」
頼朝の言葉に、那加城の評定の間は大きな歓声に包まれた。
長き戦を共にした将たちの顔には、誇りと安堵の笑みが浮かんでいた。
■娘・桜との上洛
評定が終わり、家臣たちはそれぞれの控えの間へと向かい始めた。
頼朝は、その中から娘・桜を見つけ、声をかけた。
頼朝「桜。この場に早雲殿を呼べなんだこと、まことに残念じゃ。
皆がこうして落ち着いて過ごせるのも、早雲殿が西をしっかり睨んでくれておるおかげじゃ。
何よりも、そなたがここまで立派な女将・城代となれたのも、早雲殿あってこそ。
わしが京へ向かう途上、安土城へ立ち寄り、早雲殿ともゆっくり話をしたいと思うておる。
その折には、とっておきの美味い酒を土産に持参するつもりじゃ。
……桜と共に安土を経由し、上洛を果たしたいと考えておる。
わしが那加城を出立する年明けまで、この城に残ってはくれまいか」
桜「はい、父上!」
桜は嬉しそうに頷いた。
桜「安土城まで、そして上洛も父上とご一緒できると伺い、まことに嬉しく思いまする!
安土城も、この短い間に随分と復興いたしました。
父上にも、あの天守からの素晴らしい景色を、ぜひご覧いただきたく存じます!」
頼朝「そうか、それは楽しみじゃな!」
源桜の伊勢・山城平定戦での目覚ましい活躍は、北条早雲から詳しく報告を受けていた。
会うたびに、心身ともに著しい成長を遂げていく娘の姿に、頼朝はこれから始まるさらに厳しき戦いに備え、改めてその決意を固めるのであった。
お読みいただきありがとうございました。
いよいよ頼朝は、京への道を歩み始めます。
果たして、朝廷を力で抑え込むことができるのか。
あるいは多くの武家を滅ぼし、日ノ本に覇権を唱えねば静謐は成し遂げられぬのか――。
この後の展開も、どうぞお付き合いくださいませ。




