カティラス侯爵家の夜会に対するメイナー伯爵令嬢の心配
「それでカティラス家の夜会はどうでしたの?」
昼休み。
今日も何故か一緒に昼食を取っているメイナー伯爵令嬢が訊いてきた。
この話が聞きたいから一緒に昼食を、と言ったのだろうか?
ちなみに、昼休みの前の授業が刺繍の授業だったのだ。
「どう、とは?」
「問題はありませんでしたか? カティラス侯爵令嬢に絡まれたりはなさいませんでしたか?」
「挨拶しただけで他は特に話しかけられたりはしませんでしたよ」
マティスがいなければ彼女にとってアナスタシアは絡む価値もない相手だろう。
「本当ですか?」
「ええ、本当ですよ。向こうも他の来客の方々のお相手もなさらなければなりませんでしたし、大規模な夜会でしたから」
ヴィクトリアが言い添えたことでようやくほっとしたようだ。
「そうですか。それならよかったですわ」
「心配してくださってありがとうございます」
カティラス侯爵令嬢に絡まれていたことを知っているから心配してくれたのだろう。
何だかんだと気を配ってくれるメイナー伯爵令嬢は優しい人なのだ。
途端にメイナー伯爵令嬢が挙動不審になる。
「そ、それは、ええ、さすがに、ど、同級生としては当然かと」
何故かヴィクトリアはそんなメイナー伯爵令嬢に生温かい視線を向けている。
「はい。ですからありがとうございます」
「どういたしまして。」
つんとしてメイナー伯爵令嬢が告げる。
アナスタシアもその反応に慣れてしまって気にならなくなった。
どうしてそんなふうな反応をするのかはわかないままだけど。
メイナー伯爵令嬢に訊いても教えてはくれなさそうだ。
わかっていそうなヴィクトリアは何も言わない。
本人が言わないことなら勝手に訊くのも憚られる。
特に気にならないし、不利益を被るわけではないので別にいいかと思っている。
だから気にせずにサンドイッチを食べる。
今日もまた美味しい。
ヴィクトリアも気にすることなくサンドイッチを食べている。
今日は二人で同じランチボックスをカフェで購入したのだ。
二人で美味しいわね、と微笑み合う。
アナスタシアに視線を戻したメイナー伯爵令嬢が何事もないかのように話を戻した。
「わたくしも参加できればよかったのですが」
「カティラス家はその辺り厳しいですからね」
「実際昔騒ぎがあったようですからね。仕方ありませんわ」
やはりカティラス侯爵家のその騒動は有名なようだ。
そしてあの厳しい制限が許されるほどの大事になったのだろう。
アナスタシアは詳しくは知らない。
それとも知っておいたほうがいいのだろうか?
「とにかく何事もなく終わってよかったですわ」
アナスタシアが訊く前にメイナー伯爵令嬢が話をまとめてしまった。
またそのうちヴィクトリアに聞いてみよう。
恐らくロンバルトも知っているだろうから彼でもいい。
「ありがとうございます」
「私もほっとしています」
「もし、何か困ったことがあれば、相談してください。お力になれることもあると思いますわ」
存外本当にメイナー伯爵令嬢は面倒見がいい。
「ありがとうございます」
アナスタシアは笑顔でお礼を言う。
だが何故かメイナー伯爵令嬢の顔が曇った。
「本当に相談してくださいね?」
どうやら義理として受け取ったと思ったようだ。
これは本当に相談しても大丈夫なやつだろう。
「はい。何かあったら相談させていただきます」
「遠慮はなしですからね?」
「はい」
アナスタシアが頷けばメイナー伯爵令嬢はようやく安心したように表情を緩めた。
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