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七ー6


「スルーしていましたけど……愛人さんのアリバイは……?」


月歌が思いだしたように呟く。


「そういえば、忘れていました」


秘書はしまったと焦る。


「あ、でも、犯人が同一犯なら妊婦さんがお嬢さんを襲った前後に旦那様の殺害なんて現実的じゃ……」

「それもそうですね。初期ならまだしも、もうすぐ生まれるのではないか、と思うほどです」


まあ様子だけは見に行くかとたずね、雨田が音を立てないようにノブを捻ると、部屋の鍵は開いていた。

こそっと開けて中の様子を見るかとこっそり覗く。愛人は倒れていた。しかも腹部から血を流していた。

雨田がドアを大きく開き、生存を確認する。


「生きてますか!?」

「う……男が急に入ってきて!」

「刺されたんですか?」


腹部から血が出ているので、血が苦手な様子の秘書がガタガタと震えている。


「突き飛ばされただけ……はぁ……腹いたぁ……手間はぶけたってのに……結局は病院行かないと……」


愛人は体調が悪いと言ってトイレへいく。医者を呼ぼうにも、この天候では警察とほぼ同時になるだろう。

雨田達にできることはないので、後ろ髪をひかれながらも部屋から出ることにする。


「情報が足りないし、待つしかできないか……」

「そうですね」


もどかしい気持ちで1日が経過する。ようやく警察が到着して捜査が入る。


「お久しぶりです」


いつもの2人に月歌と雨田は軽い挨拶をする。雲松は捜査の邪魔をされたくないのか、露骨に嫌そうな顔をしている。


「ああ、こうなる予想はしてた」


雨田が同一犯による事件が3件起きたことを説明した後、いつものように鑑識が該当の場所を調べる。


「ふんふん、まず最初の事件は男が車椅子のお嬢さんを狙ったんだって?」


雲松がメモを始める。


「ええ、窓から飛び降りているので、屈強な男、明かりを付けずに移動ができる……夜目がきく、かつ別荘の間取りに詳しい。そう考えたほうが妥当かと」


月歌は、窓から男が逃げた。外は嵐が吹き荒れる夜だった。しかし、男が濡れたまま徘徊して当主を殺害した場合、雨に床が濡れた痕跡があったか、把握する間もなく現場保全していた為に定かではない。

仮に男が着替えたとしても、着替えはどうしたのか?

間取りに詳しいなら犯人はこの別荘が無人の時に出入りしたか、あるいは身内の中にいいる。


「きゃああああああ!」


メイドらしき女性の悲鳴が聞こえ、頭上を見ると2階の窓から白いものがぶちまけられて、雲松が白い粉まみれになる。

キラキラと輝く。まるでダイヤモンドダストのように……


「すみません!お砂糖をこぼしてしまいました!」


頭を洗いに洗面所を借りに行くが、玄関先で転んだ。


「なんで俺ばっかこんな目に……」


彼は日ごろから運が悪いんだろうと察し、雨田は憐れみの目を向けながら見送った。


「綺麗でしたね!お砂糖がダイヤモンドダストみたいで!」


車椅子を漕ぎながら、滅多に見られないロマンチックな景色に歓喜している。


「……なるほど」


「警部、少し気になる点が」」

「気になる点?」


鑑識の男性が、最初に男があらわれた部屋のトイレのふたと便座があがっていたという。


「え、その部屋って」


彼女が襲われたのですぐに部屋を変えてからは使っていない。

それなら便座があげられたのは、襲われる前ということになる。


「まさか、あの子が実は男性で歩けるとか言わないですよね?」

「あはは……犯人じゃなければ、どちらも聞くのはリスキーですね」




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