↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/47

第1話 自動戦闘

第1章 違和

 冷たい感触で、目が覚めた。


 背中に硬いものが当たっている。

 土だ、と分かるまで少し時間がかかった。


 仰向けのまま瞬きを繰り返し、ゆっくりと上体を起こす。


 森だった。

 見渡す限り、木と草。

 聞いたことのない鳴き声が、あちこちから聞こえる。


「……ん?」


 記憶を探る。

 最後にいた場所も、ここに来た理由も思い出せない。


 ただ、ここが知らない場所だということだけははっきりしていた。


 足元で、何かが跳ねた。


「なんだ……?」


 蛙だ。

 緑色で、普通の蛙に見える――


 が、背中に小さな羽が生えている。

 驚いて身構える間もなく、蛙は大きく跳躍した。


 だが、空中で失速するように速度を落とし、ふわりと地面に降りる。

 妙な動きだった。


 こんな蛙、知らない。


 そのとき、遠くで破裂音のような音がした。


 重く、低い音。

 何かが弾けたような――そんな感じがした。


 気づけば、音の方へ歩き出していた。


 自分が何を期待しているのかも分からない。

 ただ、ここに一人でいるよりは、何かがある方がマシだと思っただけだ。



 木立を抜けた先で、人影が見えた。


 一人だ。

 少女が、杖を構えている。


 次の瞬間、地面に光が走った。


 魔法陣のようなものが浮かび、弾ける。

 周囲にいた敵らしき影が、まとめて吹き飛んだ。


 横たわる死骸は明らかにおかしい。

 やたら大きいウサギで、やたら長い爪が生えてる。


「モ、モンスター?!」


 俺の声に気づいた少女がこちらを見る。

 一瞬だけ警戒したような顔をして、すぐに表情を緩めた。


「あなた、一人?」


 問いかけられて、頷く。


「危ないよ。この辺」


 短く言ってから、周囲を見回す。


「冒険者には、見えないね」


 断定だった。


「しばらく一緒に動こう。放っておけないし」


 こんなわけわからない状況。

 ひとりでいるのは怖すぎる。



 移動中、何度か戦闘があった。


 どれも小規模なものだ。

 少女が杖を振ると、魔法が発動し、敵はまとめて倒れる。


 俺は後ろで、それを見ているだけだった。


 手際がいい。

 少なくとも、慣れている。


 そう思っていると、少女がちらりとこちらを見て、少しだけ胸を張った。



 開けた場所に出た瞬間、空気が変わった。


 大きな大木が、正面に現れる。

 明らかに禍々しい顔がついてる。


 同時に、周囲の茂みが揺れ、変な獣や大きな虫が次々と姿を現した。


 少女が足を止める。

 視線が、戦場を忙しく行き来する。


「……えっと……!」


 言葉が途切れた。


 息が浅くなっているのが、遠目にも分かった。

 杖を握る指が強張り、動きが止まる。


 何かしようとしているのは分かる。

 だが、どれにも手を付けられないまま、立ち尽くしていた。


 詠唱に入ろうとしたらしい。

 だが、途中で言葉が詰まり、何も起こらなかった。


「……っ」


 モンスターがこっちにも近付いてきて、俺は走り出した。


 攻撃を避けるので精一杯で、周囲を見る余裕はない。

 足元の感触と、背後の気配だけを頼りに動く。


 そのときだった。


 視界の右下で、短い音が鳴った。


 電子音のような、聞き慣れない音。

 同時に、緑色の光が一瞬だけ見えた。


「……なんだ、これ……?」


 何か文字がある気がした。

 だが、意味を考える余裕はなかった。


「あれ?」

 少女の声が漏れた。


 次の瞬間、戦い方が変わった。


 少女の身体が、迷いなく動き出す。


 さっきまで止まっていたのが嘘のように、動きがつながっている。

 無駄な動作が消え、狙いが定まる。


 近くの敵から、順に倒れていく。


 大木とは距離を保ったまま、詠唱が通る。

 魔法が正確に叩き込まれ、相手が崩れ落ちた。


 戦場が、整理されていく。


 気づいたときには、周囲に動く影はなかった。


「……やった……!」


 少女が息をついて、声を上げる。


 それを見て、ようやく肩の力が抜けた。



 助かった。

 それ以外の感想は、すぐには出てこなかった。


 ふと、さっきの光を思い出す。


 意識すると、同じ位置に表示があった。

 今度は、はっきりと見える。


【自動戦闘《オートバトル》】


「……オート、バトル?」


 意味は分からない。


 首を傾げていると、少女がこちらを見た。


「あ、そうだ。まだ名乗ってなかったね。私はリナ」


 俺も返そうとして、口を開いた。


「俺は――」

お読みいただきありがとうございます。


本日は第6話まで順次投稿予定です。

明日以降は、毎日3話ずつ更新します。


全90話、完結まで執筆済みです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。