18、かけがえのないもの
それから美弥の姿を見てから俺は体育館を後にした。
そして歩く。
その際に俺は上田先生に聞いた。
「何故俺を受け入れてくれたのか?」と。
すると上田先生は「保護者として信頼出来ると思いましたから」と言う。
「それ以外にも久留米さんがよく言っていますよ」
「え」
「『お兄ちゃんは信頼出来る』って」
その言葉に俺は美弥を見る。
美弥はニヤッとしていた。
コイツという。
俺は苦笑しながら美弥を見る。
すると上田先生が「それに当時の林田さんの担任の先生が心配していました」と俺に微笑んだ。
「黒崎昇先生ですか?」
「はい。今は教頭先生になられています」
俺は「そうなんですね」と言う。
そうか。
黒崎先生はお元気なんだな。
考えていると「林田」と声がした。
俺達は驚きながら背後を見る。
「久しぶりだな」
「黒崎先生。お久しぶりです」
スーツ姿の白髪のオールバック。
黒崎先生が居た。
俺は苦笑する。
黒崎先生は直ぐに厳つい顔をした。
それから「林田。お前という奴は」と言う。
俺の人生を見た結果だろう。
「はい」
「都会に出るのは構わない。だが7年も音信不通になる馬鹿者がどこに居る」
その正論に俺は何も言えなくなる。
それから「はい」と言う。
黒崎先生はかつての話だが。
俺を鬱状態から救ってくれた恩師だ。
だから心配されて当たり前なのだ。
「流石に短絡的すぎました。全てが、です」
「その結果、聞いた噂によるとお前は鬱状態になったらしいな」
「はい。まさにその通りです」
黒崎先生は溜息を吐く。
美弥と未来が「弱い姿は久しぶりに見た」と言いながら俺を見てくる。
俺は「だろうな」と2人を見る。
黒崎先生が俺に向く。
「久留米達の保護者らしいな」
「はい。俺の知り合いです」
「そうなんだな」
それから黒崎先生は美弥達を見てから「彼女達はとても優秀だぞ。皆勤賞も視野だ」と言う。
そんなに凄いんだな。
美弥と未来は。
そう考えていると「お前の妹だな。やはり頑張る点はな」と黒崎先生は言う。
俺は頷きながら2人を見てから「はい」と言った。
☆
それから俺は上田先生と恩師と別れ。
駐車場に向かう。
着替えに行ったりした美弥達を見送り俺は待っていると「あの」と声がした。
見ると男子生徒が居た。
どっかで見た様なツラだな。
「はい?」
「アンタさ。誰なんだ」
そう言う男子生徒。
身長が高くすらっとしている。
首も長いが顔立ちがとても整ったイケメン。
あ、この子は。
「バレーボール部の?」
「そうだ。俺は長嶺海斗。アンタなんなんだ」
俺に詰め寄る少年。
意味が分からないまま見ていると「長嶺くん?」と美弥が現れた。
美弥は目を丸くしている。
「久留米さん...」
「どうしたの?」
美弥に対して赤面する長嶺海斗。
俺はその姿に「成程」と呟く。
それから長嶺海斗は俺を睨んでから美弥を見た。
美弥に対して「何でもないです」と言う。
そして歩いて去って行った。
俺は「青春だな」と呟く。
「お兄ちゃん。どしたの?何で長嶺くんと?」
「あ、ああ。いや。何でもない」
「?」
少なくとも俺が言うべきでは無い。
そう考えながら居ると「お待たせしました」と未来も現れた。
俺はそんな美弥達を連れてそれぞれの家に送り届ける。
家に帰るなり頭痛がした。
☆
俺が7年勤務していた菓子メーカーは本当にブラックだったのでこうして時たまに頭痛がする。
病院には行かなくて良いとは思うが。
だけど我慢は身体に毒だよな。
そう考えてから俺は表に出てから農作業のばあやの手伝いをしてから居ると「雪ちゃん」とばあやが言ってきた。
俺は「ああ。どうした?ばあや」と話す。
「アンタが戻って来てくれて生活が楽しいよ」
「ばあや?」
「孫が帰って来てくれた。それだけで私は幸せなのさ」
その言葉に俺は眉を顰める。
そうして居ると笑みを浮かべたばあやが「はい。お小遣い」と言ってお金を渡してきた。
俺は「いやいや。ばあや。俺、子供じゃないから」と苦笑しながら鍬を置く。
ばあやは「私にとっては雪ちゃんは宝物さ。だから受け取って」と言う。
困惑しながらも俺は告げた。
「ばあや。ありがとう」
そんな感じで、だ。
俺の言葉にばあやは笑みを浮かべてから手拭いで顔を拭いてから空を見上げる。
結論から言ってばあやの病気は手術しなくて済んだ。
だが心配から今度は胃潰瘍になったという話を聞いた。
愚かな存在だよ俺は。
「ばあやってさ」
「うん?」
「じいやとどうやって巡り会ったの」
「爺様とかい?そうやねぇ。爺様はそれこそ仕事熱心の人だったよ」
「うん」
「それで爺様がある日、漁に出て行くって嘘を吐いてね。そして爺様は結婚指輪を買って来たんだ」
その言葉に俺は赤くなるばあやを見る。
そしてばあやは「嬉しかったね。今でも大切にしているよ。お金が無かったから豪華なものじゃない。だけど私にとっては意味のある指輪なんだ」と言う。
俺は「そうだったんだね」と言いながらばあやを見る。
「だけど事故で亡くなってしまって。私達に試練が訪れたね」
「そうだな。今思えばそれがきっかけで家を出たってのもあるから」
「雪ちゃんが7年間お金を送り続けてくれたお陰で私の治療費は軽かったよ」
「それぐらいしか出来なかったから」
ばあやは涙を浮かべていた。
それから「爺様に会いたいね」と言う。
俺はそんなばあやの背中を気がつくと摩っていた。
そしてばあやを見ていると「こんにちはー」と声がした。
「唯華じゃないか」
「おすそ分けに来ました」
唯華から果物を貰う。
するとそんな唯華にばあやが「上がって行かないかい?唯華ちゃん」と言う。
唯華は「良いんですか?」と笑顔になる。
「構わないよ」
「じゃあ失礼します」
それから唯華は俺を見る。
そして前を見てから家から中に入った。




