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10 女神との再会(前編)

 何度かメッセージをやりとりして、午後から浮島に行くことになった。


 どうやら、僕たちがバラギアン王国に居ると思っていたようで、グリゴリエルさんに迎えに来てもらう場所が問題になったけど、こちらから浮島に行くと言って納得してもらった。

 ……本当に納得してくれたのかな?

 最後まで疑われてたような気がするけど、言葉で説明するより、実際に転送して見せた方が早いだろう。たぶん。


         ☆


 美味しい昼ご飯を食べて、食後のお茶を飲んで、少しまったりしたタイミングで工作室に移動。

 猫姿のルビィを抱っこして、スズメ姿のトパーズを肩に乗せて、粘土を入れたリュックを背負って、浮島に行く準備は万全。

 忘れ物があったとしても、取りに戻れば良いか。

「コネクトスペース! ……それでは、行ってきます」

「無事のお帰りを、お待ちしております」

 アラベスとマイヤーとエミリーさんが見送ってくれた。

 三人とも、転送魔法にすっかり慣れたのかな?

 魔方陣が光ってるぐらいでは驚かなくなったみたいだ。

「トランスポート!」

 魔方陣に上がって、呪文を唱える。

 足元から光が上がってきて、視界が隅々まで白く染まる。

 光が静まった時にはもう、前にも行ったことがある、白い壁の部屋に居た。



「……あれっ?」

 時間はあってると思うんだけど、部屋に誰も居ない?

 こっそりドアを開けて確認したけど、廊下にも誰も居ないようだ。

 そう言えば……。自分で行くって言ったけど、転送魔法で行くとは言わなかったかな?

 ……もしかして、トパーズに乗ってくるって思われてる?

 応接室の場所はわかるけど、勝手に行くのも違う気がするし……。ここはグリゴリエルさんに聞いてみるか。

 女神からもらった指輪でメッセージを送って——

「グリゴリエルさん、ソウタです。今、前に転送魔法で使った、白い壁の部屋に着きました。このあと、どうすれば良いですか?」

「グリゴリエルです。急いでそちらに向かいますので、そのまま、その部屋でお待ちください」

 トパーズを撫でながら待っていると、ドアが勢いよく開いて、タキシード姿の天使が飛び込んできた。

 ……この人はタキシードが制服なのかな?


 文字通り、部屋に飛び込んできたグリゴリエルさんが、床に浮いている魔方陣を目にした瞬間、そのまま固まってしまう。

「ソッ、ソウタ殿? この魔方陣は、あなたが……?」

「こっちの方が楽だと思って、僕が転送魔法を使いました。あっ、いや。正確に言うと、僕が造ったゴーレムに使ってもらったんですけど」

「転送魔法は天使族だけが使える秘術なのですが、どこでこれを……?」

「グリゴリエルさんが使ってたのを見て、真似したんですけど……。ダメだったでしょうか?」

「えっ? ……えっ⁉ いや、でも、そんなハズは……。魔方陣の構成を、見ただけで真似するだなんて……。呪文の難易度を考えても……。しかし、実際に発動して、ソウタ殿はここに居て……。まさか……」

 ……勝手に使っちゃいけない魔法だった?

 冷静に考えると……。どこにでも自由に行ける魔法なんて、悪用されると大変なことになりそうだし。

「もう、転送魔法は使わない方が良いですか……?」

「ああっ、すみません。気を遣わせてしまいましたね。これはもう、私が判断できる範囲を超えているので……。転送魔法の話も含めて、女神とお話ししてもらえますか? すぐ、応接室に案内しますので」

「わかりました。お願いします」

 やることがはっきりしたのが良かったのかな?

 グリゴリエルさんの表情も落ち着いたようだ。


         ☆


「ソウタ殿をお連れしました」

 天使の案内で、前と同じ応接室へと通された。

 木製のローテーブルと、テーブルを囲むようにおかれたソファセット。

 奥の一人用のソファに座っているのは、この前も会った、魔法の女神のレムリエルさんだな。

 三人掛けのソファには美しい女性が二人、並んで座ってるけど——

「あっ! あの時のお姉さん‼」

「お久しぶりです、創多さん」

 軽くウェーブのかかった栗色の髪。

 白くて大きな布を、身体に巻き付けたような服装。

 間違いない。僕に白い粘土をくれた、綺麗なお姉さんだ。


「みゃあっ! みゃみゃみゃあっ‼」

「にゃああぁ〜‼ にゃ〜にゃ〜」

 ここに来るまでの間、大人しく抱っこされていたルビィが、僕の腕を蹴って勢いよく飛び出す。

 お姉さんの膝に乗っていた白猫も、ぴょんっと床に飛び降りて、良く似た二匹が対面した。

 鼻と鼻をくっつけて挨拶する。

 すっと目を細めて、頬と頬を擦り合わせる。

「みゃああぁぁぁ〜〜」

「にゃあぁぁ〜〜」

 互いの肩に腕を回して、柔道の寝技みたいに転がりはじめたけど、ルビィも白猫も怒ってる感じはなくて……。どっちも楽しそうだね。

 ルビィが赤い首輪をしてるけど、それさえなかったら見分けがつかないぐらいそっくりだ。


「あらあら……。話には聞いていたけど、本当にそっくりなのね」

「だから、そう言ったでしょう? 創多さんはすごいんですよ」

 並んで座っている美しい女性は……姉妹かな?

 髪の色や髪型は違うけど、着てる服は同じで雰囲気も良く似てる。

 僕に白い粘土をくれた栗色の髪の女性の方が、お姉さんっぽいな。


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