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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第八章 バラギアン王国 野良ゴーレム討伐戦
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11 天使降臨

 土と苔に覆われたゴーレムに、堂々とした態度で近づくオニキス。

 ……二体が並んだところを見ると、かなりサイズに差があるな。

 森に居たゴーレムは身長が三メートルぐらいで、オニキスは十五メートルぐらいある。

 小さくてもどんな能力があるかわからないし、気を抜かないで……。と、僕が伝えるのよりも早く、戦闘が始まった。



 殴りかかってきたゴーレムの腕を掴み、胸の前まで軽々と持ち上げて、がら空きのボディにオニキスがストレートを決める。

 鉄と鉄のぶつかる重くて鈍い音が、太い幹まで震わせて、ゴーレムの身体にへばりついていた土や苔が、どぼっと音を立てて地面に落ちる。

 露わになった鉄の身体は、既に胸の部分が大きく凹んでいた。


 ——ガゴオォォン…… ガゴオォォオン…… ガゴオォォオオオン……


 建設現場で見かける重機のような音が、辺りに響き渡る。

 オニキスは手を止めようとせず、ゴーレムの身体を地面にたたきつけて、馬乗りの姿勢で何度もパンチを叩き込む。

 ……大人と子どもの喧嘩かな? 心配するほどでもなかった?


 トパーズの眼を借りて見守っていた僕には、鉄の身体から少しずつ、青白い光が抜けていくのが見えた。

 分厚い雲に向けて、ゆっくり上っていく淡い光。


 ——ドッゴオオォォォォンンン……


 ひときわ大きな打撃音が響き渡り、ゴーレムが完全に動かなくなった。

「ふううぅぅぅぅ……。終わった……ようです……」

 自分でも気付かないうちに緊張したのだろう。

 自然と、大きな吐息が唇から漏れた。



 原形をとどめないほどボコボコにされて、思いっきり地面にめり込んでいるアイアンゴーレム。

 鉄の塊が青白い光に包まれ、光が太い柱となって、分厚い雲を突き抜ける。

 周りの木々や地面からも光があふれ出し、光の柱に絡みつき、さらに太い柱となって、高く天へと昇っていく。


 ……魔族大戦の生き残りってことは、二千年? 三千年? とにかく、想像出来ないぐらい長い間、この地を彷徨っていたのだろう。

 こうするのが本当に良かったのか、僕にはわからないけど……。おつかれさまでした。


「あっ……。雲が……」

 そうつぶやいたのはマイヤーだった。

 視界を自分に戻し、雲を見上げる。

 いつの間にか、分厚い雲に穴が開いていて、そこから光が差していた。

 小さかった穴が徐々に広がり、綺麗な青空が見えてくる。

 ゆっくり視線を降ろすと、落ち葉の積もった地面も、森の木々も、そこら中に生えている雑草も、色が変わった訳でもないのに、新鮮で生き生きしているように感じられた。



「それじゃあ……。最後のゴーレムも無事に討伐できたし、あとはルハンナ伯爵に報告すれば、依頼完了かな?」

「はい、そうです。それにしても、こんなにあっさり魔族大戦時代のゴーレムを倒してしまうとは……。それなりに経験を積んできたつもりですが、ソウタ殿には驚かされるようなことばかりですよ」

「すごいのは僕じゃなくて、オニキスやトパーズですが……」

 昨日、オニキスとストーンゴーレムの戦いを見て、頭を抱えて動けなくなるぐらい驚いていたフォルデンさんが、今日は、アイアンゴーレムとの戦いを見ても普通に会話できている。

 個人的には、そっちの方がすごいと思うんだけど……。

 いろいろ経験してきたから、ショックに強いのかな?


「ここのゴーレムからも、欠片を分けてもらって良いですか? ……アイアンゴーレムだから、欠片というより身体の一部になりそうだけど」

「もちろん構いません。ソウタ殿の自由にして下さい」

 昨日の夕方倒したゴーレムと、今日の朝倒したゴーレム。

 後で調べるために、オニキスが倒した二体のストーンゴーレムから欠片を分けてもらった。

 欠片が大きすぎて僕のリュックに入りきらなかったけど、こうなることを予想したマイヤーが、見た目よりも大きな物が入るバッグを持ってきていた。

 もう少しで、持って帰るのを諦めるところだった……。助かった。


 雲が晴れて見通しも良くなったことだし、四人そろって森に入る。

 安全になったのを察したのか、勝手に猫サイズに戻ったルビィが胸元に飛びついてくる。

 僕ももう、大丈夫だと思ったんだけど……。アラベスたちはまだ、警戒を解いてないようだ。

「ちょっと大きいけど、バッグに入るかな?」

「これぐらいなら問題ありません」

 よっぽど強く、オニキスが殴ったのかな?

 アイアンゴーレムの左腕が外れていたので、もらって帰ることにした。

 人間サイズになったオニキスに抱えてもらって、バッグに入れて——


「ソウタ殿! 上を見て下さい‼」

 突然、大きな声を出したのは、アラベスだった。

 言われたとおり、急いで視線を上げる。

 雲一つない青空。まぶしく輝く太陽。

「とり……? いや、違う……。ひと、かな……?」

 アラベスの指差す先に、白い点が見えた。

 小さかった点が徐々に大きくなり、白鳥のような羽が見えてくる。

「あれは、まさか……。天使……?」

 小さな声でつぶやいたのは、フォルデンさんだった。


 白くて大きな翼。頭上に輝く光輪。

 空の彼方から降りてくるのは、天使の特徴を備えた人だけど……。着ている服が上下とも白のタキシードで、なんだか、結婚式の新郎みたいだ。

 ずっと翼を広げたままで羽ばたいたりしてないから、揚力で飛んでるんじゃないのかな? まさか、飾りってことはないだろうけど……。


 どうでも良いことを考えている間に、天使みたいな人が降りてきて、地面から五十センチほど浮いたところで止まった。

「この地に縛られていた魂を解放したのは、あなたたち——」

 整った容姿。丁寧に揃えられた茶色い髪。

 天使っぽい人がにっこり微笑み、僕たちに話しかけてきた……。けど、すぐに言葉が止まった。

 ……見つめているのは僕? どうして、そんなにびっくりしてるの?


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