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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第八章 バラギアン王国 野良ゴーレム討伐戦
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閑話休題 神官戦士の後悔

 ルハンナの街にある、神官戦士団の宿舎。

 一般の神官戦士は相部屋だが、役職持ちには個室が与えられている。


 伯爵への報告を終えてようやく宿舎へと戻ってきた私は、三階にある自分の部屋に入り、ソファに腰を下ろした。

「疲れた……」

 冷たい水を飲みたい。装備を外したい。神官服を脱ぎたい。

 やりたいことも、やらなければいけないこともあるのに、身体が動かない。

 本音を言うと、このままベッドに入って、何もかも忘れて眠りたい。


 こんなに疲れたのは、山賊を追いかけて一晩中走り続けた時以来だろう。

 昨日から今日にかけて、激しい戦闘をした訳でもないのに……。見届け役として同行しただけなのに、とにかく疲れた。



 伯爵からの依頼を受けたのが失敗だったのか?

 部下の中から、誰か代わりに行かせるべきだったか?

 ……神官戦士はその性質から、常に人員が不足している状態だ。

 その上、今は団長が体調不良で自宅療養中。

 引退した元団長に臨時で復帰してもらって、若手の教育を手伝ってもらっているような状況で、腕の立つ団員に余裕はない。

 アンデッドが出るかもしれないという依頼に、経験が浅い部下を送るのも無理がある。

 やはり、副団長の私が行くしかなかったのだ。


 私なら……。若い頃から、それなりに経験を積んできたつもりだ。

 貧乏な片田舎で少し目立つ程度の強さだった私が、たまたま、簡単な治癒魔法を使えたことで神官戦士となり、それから四十年。

 胸を張って自慢できるようなことも、表立っては言えないようなことも経験してきた。

 司祭を守って戦ったこともある。

 アンデッドの集団に囲まれたこともある。

 副団長となってからは中央の神官戦士だけでなく、他の街に所属している神官戦士との交流も増えた。

 そんな自分が、あそこまで驚かされるとは……。


 思い出しただけで鳥肌が立つ。

 あの、大きな鳥は何だ? 鳥に乗って空を飛ぶだなんて、おとぎ話か?

 豹に変身する猫。我々の攻撃では傷一つ付けられないゴーレムを、あっさり破壊した鉄の巨人。

 幼い頃に読んだ、絵本に出てくる話のようだ。

 ……部下に話をしても、誰も信じないだろうな。



 同じ野獣使い(ビーストテイマー)でもあの少年は、私が知っている野獣使い(ビーストテイマー)とは格が違う。

 石像使い(ゴーレムマスター)に知り合いはいないが、あれぐらい普通なのか?

 どう見ても、普通の人間にしか見えない少年が、この地方では知らない者が居ないアイアンゴーレムまで倒してしまった。


 そして、空から舞い降りた天使……。

 治癒魔法こそ使えるが、私は、神の声を聞いたことが無い。

 司祭や神官のように、心の底から神を信じたことも無い。

 田舎に残してきた家族のために、仕事として、神官戦士を務めてきた。

 いや、金のために働いてきたという方が正しいか。


 初めて天使を見た私は、自分でも気付かないうちに地面に膝をつき、祈りを捧げながら涙を流していた。

 ……あの天使はソウタ殿を迎えに来たようだが、そのためだけに、地上に降りてきたとは思えない。

 きっと私を救うために、私を正しい道へと導くために、女神が使わせてくれたのだろう。


 今ならわかる。私は間違っていた。

 甘い誘惑に負け、弱い心につけ込まれた。

 過去を消すことはできないが、まだ、手遅れではないはずだ。

 国のため、家族を守るため、女神のために、できることがある。

 やらなければならないことがある。



 ゆっくりソファから立ち上がり、軽く頭を振って考えをまとめた。

「まずは……。調べるとしたら、補給部隊の部屋からか?」

 神官服を脱ぐにはまだ早い。装備も付けておいた方が良い。

 まずは、証拠を集めるところから……。組織に勧誘されたのが、私だけとは限らない。慎重に行動するべきだ。

 たとえ私が失敗したとしても、いざという時は、あの少年が何とかしてくれるだろう。

 ソウタ殿……。女神に愛された少年が。


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