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アルカナ・サーガ  作者: いしか よしみ
第2章 少年期 天使で悪魔なお嬢様 編
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薬師始めました

 数日後、こないだ狩った獲物で作った干し肉をフランツさんへ届けに来ていた。

 相変わらず二メートル近い大男が花を笑顔で手入れしていると異様な雰囲気がある。

 

 「おう! ユウ、この前の傷薬な、効果が早くて良かったぞ。また、作ってくれよ」

 「うん、こないだ薬草を調達してきたから、二、三日位で作れるから待っててね」

 「よろしく頼まぁ。あと、ついでなんだが花の虫除け用の薬剤も頼む」


 フランツさんは、俺に傷薬等の作成の依頼をしてくれた。

 このように今の俺は薬師まがいの仕事を受けている。

 前回、山へ行った目的もこの手の薬を作るためだ。

 ここ三年位やった錬金術の勉強の成果である薬学を利用して仕事を受けている。

 傷薬、肩こりや腰痛の痛み止めに初まり農薬関連、なんでもござれだ。

 その為、村での農作業等の手伝いを一切してない。

 

 「干し肉もありがとな。森への巡回も長丁場になることがあるからありがたいよ」

 「長丁場? 巡回そんなに大変なの?」

 「まあな。最近、村近くの森で鹿とかの中型動物が食い散らかされているのが連続で見つかっててな。大型の動物か魔物が居る可能性があるんだ。警戒が必要だから慎重にもなるさ」


 魔物とは、ゴブリンやトロール等の知性を持ち凶悪な者達の事だ。

 その他に最近では普通の動物が、何らかの要因で体内の魔力が狂ってしまい、凶暴化してその後、落ち着いても力等が強いままだとその動物自体を魔物と呼んでいる。

 どちらもこの村ではほとんど出没情報を聞かない。

 俺がよく行く滝方面には、気配も感じなかったしもっと奥に潜んでるかもしれない。

 数年前の魔物を目撃したって言う情報も、結局その後見つからなかったしな。

 今回も無事何事も無ければいいんだが。


 「また、ユウにも整備を頼むからその時は宜しくな」

 「分かったよ。整備だけじゃなく巡回の手伝いでもいいよ」

 「まだまだガキが気を使ってんじゃねえよ。危険な仕事は大人のもんだ。もう少し大きくなったら頼むからさ。それにお前の薬作りの仕事は、この村で重要になってるんだからそっちに力入れてくれ」


 俺は頷きつつ、自分の仕事が重要と言われて嬉しく思う。

 俺の錬金術の成果もこの村で役に立てるんだ。


 「そういやユウが山へ行ってる日な、いつもの商人が来ていたな。また、依頼したい薬があるんだとよ」

 「やったね。このまま定期的に依頼来るようになれば、錬金術で使う器具も買えるようになるから頑張らないとね」

 「そうか、お前さんの頑張りで大将達も助かってるからな」


 そうなのだ。今の俺の収入は、一部父さん達に渡している。

 ちなみに一部であっても俺の年代の一般的な収入よりは多いらしい。

 まあ、そもそも生活がギリギリかというとそうではないんだが、使える生活費は多いに越したことは無いだろう。


 商人が来週また来るそうで、指名してくれるのはありがたい。

 以前、自分で作った薬等の出来が良かったから、商人に売り込んでみたんだ。

 ついでに村の人達から効きが早いとか効果が続く等の評価を得られ、評判が商人へ伝わったのが大きかった。

 最近は今回見たいに定期的な依頼が来るようになってきた。

 

 それも当然である。俺が作る薬は、液体の飲み物だ。

 薬草を混ぜたような普通の作り方では無く、錬金術の中でもポーションの製法を応用して作っている。だから効果が高いのだ。

 実際はちゃんとしたポーションを作って収入を得たい所だが、材料がこの辺りでは手に入りにくかったり、研究室の機材が足らないので作る事ができない。

 この辺の問題は、少しずつ収入を上げ、研究室の設備を充実させていくしか無いだろう。

 商人の人達ともっと仲良くなって依頼を多く貰えるように、薬の品質と性能を頑張っていこう。


 「それじゃ、フランツさん、また何かあったら呼んでね」

 「おう、大将やローザにもよろしく言っておいてくれ」


 俺は、フランツさん家を後にした。

 途中、近所のおばちゃん達に腰痛の薬の依頼を受けつつ自宅に戻った。



 自宅に戻り、母さんへフランツさんに干し肉を届けた報告を終わらせ、自宅脇にある研究室に向かった。


 三年前に爺ちゃんから譲り受けた研究室は、研究室とは名ばかりで倉庫の色合いが強かった。

 なので整理し完全に研究室、書庫、倉庫と区別出来るようにしている。

 ただ研究室では、機材が足らない為に本格的な錬金関連の事があまり出来ない。


 俺は研究室に着くとまず、依頼された薬の調合を始めた。

 各ビーカーに傷薬、腰痛等の痛み止め等の材料を入れ、レシピに沿って混ぜる。


 しかし、出来る様になった薬のレシピを繰り返すだけでは進歩がないな。

 書庫に在るレシピ関連の本は既に読み込んでしまっている。

 これ以上は、新しいレシピや資料が無いと厳しいな。

 ポーションみたいにレシピが分かっても作れない状態だしな。

 あるもので工夫していくしか無い。


 「うーん、やっぱ自分でレシピ開発とかもしていかないと無理かな」


 錬金術は、解析開発する学問だし、薬以外でも工夫して作るかな。

 まあ、まだまだ錬金術も勉強中だ、気長にやっていくか。


 薬の下準備後、ポーションを作る要領で、薬液の抽出を始める。

 あとは二、三日の放置するのみだ。


 次は気分転換をかねて書庫で、まだ読んでない本を読み始めた。

 今日は先史文明の考察について読もうかと思う。

 この三年間で書庫全体の九割程度は読み終わった。

 残りは知識が足らず読んでも理解できないと思った後回しにした物がほとんどだ。


 ちなみに俺は、錬金術と先史文明関連を優先的に読み進めている。


 先史文明関連で分かったのは、今よりかなり進んだ技術を持っていた文明で、現在使われている魔道具はその技術の解析研究の結果である。そして、魔導銃以外にも魔導剣や魔導鎧と呼ぶ様な物もあったようだ。

 さらに驚いたのは、先史文明では空を飛ぶ技術があり、乗り物もあったらしい。

 すごいな先史文明は。まるで魔法を装置で再現しているようだ。


 魔導銃についても分かったことがあり、どうやら当時は実弾を放つというより魔法を放つ装置であったようだ。

 文献にも「光の柱を放つ」みたいに書かれていた。


 今の時代においては、数は少ないが先史文明時代の思われる遺跡が見つかっっている。

 遺跡は見つけた国が厳重に管理しており、おいそれとは行けないようだ。

 俺も行ってみたいが、国の要職につかないと難しそうだな。


 数刻後、読書が終わり、魔導銃の手入れをする。

 これは今となっては日課になっており、ほぼ毎日分解し整備している。

 何故手入れしているかというと、研究の意味合いもあるが、実は実弾を撃てるように改良した。

 錬金術の鍛冶技術の応用で、魔導弾を六発装填できるシリンダーに、作成したアタッチメントを付け、通常使用されている弾をこめられる様にしている。


 もっとも現在は通常の弾しか撃てない状況だ。

 一般に通常の弾より一回り大きい弾も流通しているが、これは俺の体格では撃った時の反動が大きいので、使えないなし戦闘では隙が大きくなってしまう。

 まぁ、大きい弾も使いようによっては使えなくは無いけどね。


 そして魔導弾と呼んでいるのは、魔導銃を発見した時に装填されていた弾で、通常の弾に対して二回り大きくなっている。

 分解して内部の構造を解析しているが、今の所は内部の魔導弾を発射する際の回路部分は理解不能だ。

 あと魔導弾自体に魔力等のエネルギーを注入する方法が分かっていない。

 まだまだ、「光の柱」を放つ事は難しそうだ。


 銃の整備も終わり、俺は家に戻った。

 家に着くと父さんが爺ちゃんから手紙が届いた事を教えてくれた。


 「来月、爺ちゃんが来るってよ。何か勉強に必要な物があったら、手紙を送ってほしいとさ」

 「分かったよ。ちょうど資料や機材とかを相談しようと思っていたから良かったよ」

 

 俺は早速爺ちゃんへの手紙を書くため自室に向かった。


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