↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/111

46 ≪テレポート≫した先で

これから、佐伯、雪乃、茉奈の新生活が始まります

夜の廃村に、静寂が戻る。


視界が白から黒へと切り替わった。


一瞬、≪テレポート≫の副作用かと思ったが、すぐに違うと分かる。


茉奈ちゃんが生活魔法≪火≫を使い、小さな灯を生み出してくれたからだ。


淡い明かりが周囲を照らし出す。


そこは見覚えのある場所だった。


雪乃さんが周囲を見回しながら言う。


「ここ、召喚された広間ですよね?」


俺は頷いた。


「そのようですね」


すると茉奈ちゃんが顔を輝かせる。


「じゃあ、≪テレポート≫成功ですね!」


その嬉しそうな声に、俺も自然と笑みがこぼれた。


「茉奈ちゃん、ありがとう」


「おかげで安心安全に移動できたよ」


「ここから新しい生活を始めるっていうのも、なかなか趣があるね」


そう言ったものの、すでに日は落ちている。


今から廃村を探索するのは危険すぎる。


三人で相談した結果、今日はこのまま休息を取ることになった。


茉奈ちゃんが宿から持ってきた毛布を取り出し、一人一枚ずつ配ってくれる。


俺たちはそれに包まり、広間の隅で横になった。


静かな時間が流れる。


しばらくして、雪乃さんがぽつりと呟いた。


「そういえば私たちって、なんでこの世界の言葉が分かるんでしょうね?」


「日本語じゃないはずなのに、普通に話せますし、文字も読めます」


その言葉を聞いた瞬間、俺は目を見開いた。


言われてみればその通りだ。


あまりにも自然すぎて、今まで疑問にすら思わなかった。


茉奈ちゃんも続ける。


「言葉もですけど、私たちの能力もすごすぎませんか?」


「普通じゃないですよね?」


確かにそうだ。


俺たちのスキルも能力も、どう考えても常識の範囲を超えている。


なぜ、こんな力を与えられたのか。


なぜ、俺たちが召喚されたのか。


考えれば考えるほど疑問は増えていく。


俺は苦笑しながら言った。


「根本的な謎が山ほど残ってるね」


「それも明日から少しずつ調べていこう」


二人も頷く。


そのまま会話は途切れ、俺たちは眠りについた。


その夜――


不思議な夢を見た。


何もない空間。


果てしなく続く白い世界。


そこに、一人の女性が立っていた。


年齢も分からない。


顔立ちもはっきり見えない。


ただ、柔らかな光に包まれたその姿は、どこか懐かしく、安心感を覚えさせるものだった。


女性は何も語らない。


ただ静かにこちらを見つめている。


その視線には不思議と温かさがあり、見ているだけで心が落ち着いていく。


どこかで見たことがあるような気もする。


けれど思い出せない。


俺はその女性に近づこうと一歩踏み出した。


すると女性は微かに微笑んだように見えた。


その瞬間――


意識が浮上した。


☆★☆★☆★☆★


目を開けると朝だった。


広間の窓から差し込む朝日が、女神像を照らしている。


俺はしばらくの間、その像を見上げていた。


夢の女性と似ている気もする。


ただ、それが本当に似ているのか、それとも寝る前に見た女神像の印象が夢に出てきただけなのか、自分でも分からなかった。


「考えても仕方ないか」


小さく呟き、俺は女神像の前へ歩み寄った。


教会で教わった通り、胸の前で手を組み、静かに祈りを捧げた。


ここまで無事に来られたことへの感謝を込めて。


しばらくすると雪乃さんと茉奈ちゃんも起きてきた。


二人も同じように女神像へ祈りを捧げている。


何気なく昨夜の夢の話をすると、


驚いたことに二人も似たような夢を見ていたらしい。


「不思議なこともあるもんですね」


そう言って三人で笑い合った。


その後、朝食の準備を始める。


買っておいた保存パンと燻製肉。


そして俺は茉奈ちゃんに頼み、≪次元収納≫から緑色の木の実を取り出してもらった。


「モンペアっていう果物です」


「日本だとサルナシって呼ばれてますね」


「濃厚な甘みと爽やかな酸味が特徴らしいですよ」


そう説明しながら一口かじる。


瞬間、


思わず目を見開いた。


甘い。


この世界に来てから食べた物の中で、一番味が濃い。


爽やかな酸味と強い甘みが口いっぱいに広がる。


気付けば二つ目に手を伸ばしていた。


そんな俺を見て、雪乃さんと茉奈ちゃんも恐る恐るかじる。


そして次の瞬間。


「あまーい!」


「本当だ! キウイみたいな味がします!」


二人の顔がぱっと明るくなった。


そこからは早かった。


三人とも夢中になって食べ続ける。


気が付けば用意していたパンも燻製肉もそのまま。


朝食はモンペアだけで終わってしまったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。