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Sheet1:ウミガメのスープ

「ウミガメのスープ?」

スナック『エンター』の店主アキラが常連客の通称"薔薇筆"にサワーのお代わりを出しながら聞いた。

薔薇筆は今日も彼女である育美とこの店で落ち合う算段だった。彼女は少し遅れるそうだ。

「そう、ウミガメのスープです。聞いた事ありません?」薔薇筆はアキラが知らないのが意外だった。

横で聞いていた店員エルも小首を傾げている。

異世界から転移してきたエルフ族のエル。アキラのところに転がりこんで二年ほど経つだろうか。サブカルチャーに詳しい育美とは交流も深く、もしかしたらアキラよりエルの方がその手の流行りに詳しいかも知れない。

「それって不思議の国のアリスに出てくるやつ?」エルがうろ覚えの記憶を手繰るように尋ねた。

「あぁ…そういえばニセウミガメとかいるね。エルさん、また変わった所から返球来ましたね」薔薇筆はエルのこの世界への適応力・吸収力に幾度となく感心させられてきた。


「ウミガメのスープというのは、まぁクイズの一種と言えばいいのかな。出題者が出す不可解な状況に解答者が質問を繰り返して正解を解き明かす…みたいな。質問はイエスかノーで答えられるものに限られます」

薔薇筆の説明を受けて、

「うーん、そう言われれば何となく聞いた事あるかも。何か例題出してみてよ」アキラがそう告げるのと同時に育美がやって来た。

隣にはグッさんこと川口も居る。

「同伴出勤じゃねぇからな」面白くもない軽口をたたくグッさん。

丁度、ITトラブル解決チーム『エクセレンター』の五人が揃った。

育美とグッさんを交え、仕切り直しの乾杯をした後でウミガメのスープの話題に戻る。

育美は知っていたがグッさんは知らない様子で、あらためてルール説明した後、薔薇筆の出題が始まった。


「ある人が心臓を体外へ出されても生きている。やがて笑みさえ浮かべていたという。いったい何故か?…さあ、質問をどうぞ」薔薇筆はみんなを見渡した。

「はい!」育美が胸元で小さく挙手をする。

「その人は人間ですか?」

イエスと答える薔薇筆。

「なぁエル、エルフには心臓外に出しても平気なヤツとか居るの?」アキラがエルに問いかける。

「そんなのいるわけないでしょ!エルフを何だと思ってるの!?」エルが呆れたように返した。

「あっ、解ったかも!」そう言いながら持ち上げかけたグラスをコースターに戻すグッさん。

「その人は外科手術をしてますか?」

「なるほど、臓器移植か。グッさんにしては冴えてるな」アキラが半分茶化しながら言う。

「残念ながら答えはノーです」この質問は想定内だったのか、薔薇筆は淡々と答える。

「じゃあ、私」エルが育美の真似をして胸元で挙手をする。

「その人の年齢は関係ありますか…えっと、例えばその人が子供でもこの話は成立しますか?」

「答えはノーです。エルさん、ナイスな質問です」

長命種のエルフ族、年齢に関しては無頓着かと思いきやそこに着目したのがアキラには意外だった。いや、もしかしたらこの世界に転移したことによって繋がりを持った自分達との(エルにとって)そう遠くない別れが常に頭から離れなくなったのかも知れない。


「その人は女性?」今度はアキラが質問した。性別不詳で通しているアキラが放った質問だけに、年齢を気にしたエルフの時と同様、どこか意外な感じがした。

先ほど茶化されたグッさんが、

「それ聞くんかーい」と、すかさずツッコミを入れた。

「答えはイエスです」

「男性だと成立しない」

「そうですね」

「ふふん、そういう事か」

アキラは核心に到達したようだった。

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