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ファクターズ・オンライン

ファクターズ・オンライン ~ゲーム初心者の俺がなぜか優遇。そんな中でも日は昇る

作者: 八ッ坂千鶴
掲載日:2026/06/01

ジャンル別週間ランキング。日間ランキング1位を獲得した作品の第二弾です!

 このゲームはどこかおかしい。


 至って凡人で、戦闘スキルもない俺。


 だけど、周囲にいる奴らが弱すぎる。


「タクト! ヘルプ!」


 桃色髪の少女サクラが俺を呼ぶ。


 パーティは合計4人。


 基本話すのは俺とサクラだけなので、他除外。


 今いるのは原っぱが広がる場所。


 ここは最近話題になっている、『ファクターズ・オンライン』の世界。


 その中には、メモリアというアイテムが存在する。


 メモリアは、持ち主の思考を具現化したもの。


 俺のパートナーAIが、そう教えてくれた。


 そして、俺の願いが『強くなりたい』。


 そのせいか、不自然に戦闘能力が上昇している。


 パートナーAIも理由がわからないらしい。


「ねぇ! タクト! 早く早く!」


「お、おう……」


 強くなりたいと願ったのに、俺の戦闘能力が上昇する。


 他プレイヤーから見れば、至って正常らしいが……。


「そういえば、最近レジェンドスキル使いが現れたんだってね……」


「レジェンドスキル? なにそれ?」


「どうも、10歳の少女が発動したらしいよ? グランドウルフを一掃だって」


「ぐ、ふら……」


 驚きすぎて、しっかり発音できなかった。


 10歳の少女がレジェンドスキルを使用?


 そんなの、異次元すぎる。


「サクラ。その少女の名前は?」


「ライトって名前らしい。パートナーAIはアイって名前。昨日始めたばかりみたい」


「しょ、初日でレジェンドスキル!?」


「ほんと馬鹿げてるよね。そもそもレジェンドスキルって、発動条件が不透明すぎる。攻略掲示板も情報屋が焦ってるみたい」


「そりゃ焦るぞ。未開拓区域をこじ開けられたもんだからな」


「それそれ!」


 俺との会話では、いつもサクラは笑顔で応える。


 それがいいのか悪いのか、正直言って謎でしかない。


 そもそも、サクラと俺は住んでる場所が違う。


 いわゆるゲー友ってやつだ。彼女のそれ以上を俺は知らない。


「そういえば、タクトの願いってどういう感じなの?」


「俺の願い? ま、まあ……、サクラを助けられるのなら、それ以上でもそれ以下でもないな……」


「そう……」


 本当のことを言うと、俺はこのゲームに興味を持っただけ。


 興味を持った分、楽しめればそれでいいと思っていた。


 目の前のホロスクリーンには、人数が表示されている。


 これが何を表しているのかはわからない。


 だけど、さっきから嫌な予感がする。


 プレイヤー格差をつけるのも、なにか間違っていると思う。


 このパーティの中で、俺が一番強い。


 次にサクラ。彼女は戦闘経験があるようだが……。


 本人が言うには、このゲームでは希望通りに動いてくれないようで。


「なんで、このゲームは玄人に優しくないのかな?」


「まあ、サクラはフルダイブ経験多いって言ってたもんな……」


「うん。これまでに色んなゲームしてきたけど、こんなハードモードのゲームは初めて。なのに、初心者のタクトはチート級だよ」


「チート級?」


「うん。きっとどこかでインフレしてるよ」


「は、はぁ……」


 俺は、アルファの文字を書いてステータスを開く。


 ✧✧基本データ✧✧


 プレイヤーネーム:タクト

 レベル:8

 性別:Mail

 年齢:16(課金制限有)

 誕生日:10月10日


 ✧✧ステータス✧✧


武器:未装備


 防具:始まりの軽装服

 HP:1500

 MP:1000 

 ATK:500

 DEF:500

 INT:100

 RES:100


 ✧✧所有スキル✧✧


 該当なし


 ✧✧✧✧✧


「うーん。そんなに変わったところないけどなぁ~」


「そう?」


「ああ、どこもおかしいところはない」


 俺はなんども繰り返し読んだ。


 しかし、変なところはどこにも見当たらない。


 レジェンドスキル。その存在自体が謎で、解明する余地が有り余っている。


「サクラ」


「なに?」


「いや、なんでもない……」


 一度言おうとした言葉を何度も飲み込む。


 変に悟られたら困る。俺だって隠したいことは多い。


 それでもサクラは、吸盤でもあるかのように俺にくっつく。


 彼女の身体はほんのり温かく、ゲームなのに気持ちを和ませた。


「私。このゲーム好きだよ」


「は?」


「タクトのことも好き。だから、ずっと一緒にいる」


「急になんだよ……」


「なんでもない!」


 彼女が何を言いたかったのか。何を伝えたかったのか。


 それがよくわからない。わからなくていいと思った。


「そろそろ行こうか」


「だな」


 俺たちはフィールドをあとにする。


 ブイ字型に隊列を組み、広大な世界を歩く。


 ふと、俺たちの近くを少女が通り過ぎた。


 ひときわオーラが違う。そこらへんにいるような人じゃない。


「ねぇアイ。どんなクエストするの?」


「ん?」


「うんうん。それいいかも。だけど……」


 俺よりも背の低い少女。自信なさげな顔はまだ幼い。


「タクト。あれって。ライトじゃない?」


「ライト?」


「あの。私のこと呼びました?」


「『!?』」


 小柄な少女から、そよ風が発せられる。その優しい声色が肌を撫でる。


 振り向けば怯え交じりの笑顔が見えた。


 サクラの余計な一言。このタイミングで『ライトじゃない?』はマズい。


 萎縮した身体は震えている。


 ―――――


「サクラ。確かだけど。そのライトってやつは人が苦手なんだよな?」


「うん。そうみたい。まあ、会うのはレアだし、私は声かけるけどね!」


 ―――――


「サクラ。やめとけって」


「でも……」


 サクラは俺の顔を見ると、気まずそうに顔をすぼめた。どうやら自覚はあるらしい。


 事前に話していたからこそ、変に思われるのは回避できたけど。


「えーと。桃色髪のお姉さんがサクラさん?」


「え、あ、はい……。先ほどは……」


「だ、大丈夫……です……」


 ライトは、小走りで走り去っていく。その背中は、少し丸まっていた。


 彼女がレジェンドスキルを使ったなんてありえない。


 だけど、その空気感の引きつりは確かにあった。


 ライト。彼女はものすごく強い。心の弱さを理解している。


 そんな気がした。


「タクト。さっきの……」


「嫌われたな……」


「そうだよね……」


 落ち込むサクラ。彼女の頬には、涙が伝っていた。


 まるで、『せっかくの機会だったのに』とでも言っているような。


 俺は慰めようか悩んだが、少し様子を見ることにした。


 このパーティは、あくまで応急処置。残るも抜けるも自分の意思だ。


「よし。大丈夫」


「立ち直ったな」


「うん。高望みはいけないよね」


「その通りだな。俺もあのライトってやつに認められるよう頑張らないと!」


「私も!」


 俺たちは街へ向かった。そこで新しいクエストを受注する。


 レジェンドスキル。使ってみたい気持ちはある。


 だけど謎は多い。俺でも使えるのか?


 クエストを受注したあと、俺たちは明日の攻略に向けてログアウトした。


 このパーティでは、事前受注で情報収集をしてから攻略をする。


 それだけで、攻略のペースは早くなるというサクラの提案だ。


「今日もいろいろあったなぁ……」


「タクト様。現在時刻は午前8時です」


 俺のスマホがしゃべる。そこに入っているのは、俺のアシスタントAI〝塁〟。


「ありがと。塁」


「ありがたきお言葉。感謝いたします」


 彼に任せれば、時間管理も確実。俺が小さい時から一緒のいる。


 朝に弱い俺。最近は学校にも行けてない。


 完全に昼夜逆転している。そんなことはどうでもいい。


「塁。ファクターズ・オンラインでのライトってやつを検索してくれないか?」


「承知しました。検索モードへ移行します」


 その間に俺は朝食の準備をする。お母さんが作ってくれたサンドイッチ。


 そこに俺は淹れたてのコーヒーを用意する。


 ミルクがテーブルに置かれていたが無視。するわけにはいかなかった。


 俺はミルクをコーヒーに入れる。今日も学校か……。


 親に願って入れてもらった通信制の高校。


 俺も俺で人見知りなんだよな……。


 ライトの気持ちはわかる。だけどあそこまで極度ではない。


「さて、塁。検索は終わったか?」


「はい。マスター」


「じゃあ結果を報告してくれ」


「かしこまりました」


 ✧✧基本データ✧✧


 プレイヤーネーム:ライト

 レベル:3

 性別:Female

 年齢:10歳(課金制限有)

 誕生日:2032年8月5日

 

 ✧✧ステータス✧✧


 武器:未装備

 防具:始まりの軽装服

 HP:1000

 MP:1000 

 ATK:100

 DEF:100

 INT:100

 RES:100


 ✧✧所有スキル✧✧


 該当なし


 ✧✧✧✧✧✧✧


「ふむ……」


 レベルが3ということは、まだ始めたてってことか……。


「塁。さらに詳細を提示できるか?」


「試みましたが、これ以上の情報はありませんでした。申し訳ございません」


「そうか……」


 もうすぐで授業が始まる。皿とカップを洗い、部屋へ戻った。


 昨夜から開きっぱなしのパソコン。


 ディスプレイとキーボードの接続部が熱い。


 冷却をしたいけど結露は避けたい。


 まだ肌寒い空間。だけど、暖房は苦手。


 部屋の温度は18度。冬場なのを忘れていた。


 何故こんなにもパソコンが熱くなっているのだろう。


「推測します。長時間の起動。同時にゲーム内でも異常が検知されました」


「ゲーム内で検知?」


「はい。ライトとの遭遇時。彼女から不自然な周波数を感知しました。以降熱暴走が起きたとみられます」


「は?」


 ライトから不自然な周波数。


 それは一体どういうことなのか。


 俺は塁が集めた資料を確認する。


 通信時の電波の周波数。


 たしかに俺がライトと出会った時間。


 ほんの数秒間だけ波が高くなっていた。


 そこからの低下は急だ。


 彼女は一体何者なのか。


 それが分からない。


 パソコンならサブがある。


 煌々とついている開きっぱなしのパソコンをシャットダウン。


 もう一つを開いて、学校にアクセスする。


『ねぇ。ファクターズにやばい人出たって』


『それまじ?』


「もしかして、ライトってやつか?」


「『うんうん!』」


「俺会ったぞ?」


 これ以上のことは言えない。


 俺は授業のテキストを開く。電子工学。


 将来は精密機器の開発。


 塁を作ったのは――この俺だ。


「塁。ファクターズの今後を考察してくれ」


「ファクターズは今後も勢力拡大していく模様です」


「それだけか?」


「以降さらなる強敵が誕生する恐れもあります」


「俺でも攻略――」


「今のタク

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