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目の不自由な令嬢は仮面の聖女となる  作者: ハナショウブ
事件後
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事件が終わって

リリア=フラクトル伯爵令嬢の誘拐は表立って公表されることなく、貴族裁判が行われてミリア=ルナソル伯爵令嬢はこの国で一番厳しいと言われている辺境地の修道院に入ることになった。

カイル=キックスとの婚約は当然白紙に戻り、ミリア個人の誘拐事件とは言えルナソル家にも大きなダメージを与えた。

「あの伯爵家は当分の間社交界には出てこられないな。もしかすると名前すら聞かないで衰退する可能性もある」

「娘の管理ができなかったんだ。没落しても誰も助けてくれないだろうね」

今日は珍しく父も兄も休みが取れたため、中庭で家族4人でのお茶を楽しんでいた。

お茶を飲んで一息つくと父が報告された内容を話してくれていた。

それに同意するようにレイルも頷いている。

「だいたい、婚約者がいる身で他の男にいつまでも恋慕しているのはどうかと思うぞ」

「婚約者も幼馴染も両方という考えがおかしい。潔くアルベルトに告白して玉砕されていれば、こんなこじれたことにならなかったはずだよ」

男性2人は厳しい評価を下している。

「アルベルト様は何も気づいていなかったのかしら?」

「ずっと幼馴染という感情以外は持っていなかったそうよ。確かに行き過ぎている言動はあったらしいけど、注意もしていたし、ここまでの感情を持っていたなんて想像していなかったみたい」

サラの疑問にリリアはアルベルトがどう思っていたのかを聞いていた。

彼はミリア=ルナソルを幼馴染み以上に見ることはなかった。カイルと婚約したことで2人で幸せになればと友人として願っていたという。まさか自分に恋情を持っていたとは思っていなかった。

リリアを見下すような発言をされた時は釘を刺しておいたが、嫌がらせでもするようならば何か対応をしなければとも思っていたらしい。実際にドレスにワインをかけられるという嫌がらせは受けたがリリアが誤魔化してしまったため何もできなかったのだ。

あの時の騒動はアルベルトがリリアの見舞いに来た時に打ち明けていた。もっと早くに伝えていれば今回の事件まで発展しなかった可能性もあると考えると、リリアは判断ミスをしたと謝った。だが、アルベルトは今回のミリアの様子を見て、何か対応していたとしてもリリアに危害を加えていた可能性が高いと言っていた。もっとしっかり護れなかったことを逆に謝られてしまった。

「はた迷惑としか言いようがないな」

吐き捨てるようにレイルが言うと、一気に空気が重くなった。嫌な話をすると気分まで沈んでしまう。

「さぁ、この話はここまでよ。せっかくのお休みで気分を重くしても仕方がないわ。ここ最近の楽しい話をしましょう」

ぽんと手を打ってサラが話題を変えた。

「そういえば最近アルベルト様はお見舞いに来ないわね」

「仕事が忙しくてなかなか時間が取れないみたいなの」

誘拐事件のあとフラクトル家に戻ったリリアはしばらく静養をすることになった。その間に1度だけアルベルトが顔を出してくれたが、事件の後始末があるためにお見舞いにはしばらく来られないと言っていた。

それからもうすでに5日は過ぎていたが、あれ以来彼と顔を合わせていない。

「その代わり毎日お花は届いているけどね」

来られない代わりに、アルベルトが来た次の日から毎日花束が届くようになった。夏は花の種類も豊富なので、いつも違う花が届く。会えなくても自分のことを気にかけてくれていることが嬉しかった。

「アルベルトは誘拐事件で勝手に部下を率いて第2騎士団の管轄での捜査を行ったからな。それに対して第2騎士団が抗議をしてきた」

緊急事態ということもあったが、王都周辺の警備は第2騎士団の管轄だ。勝手に動かれたことに騎士団も良く思わなかったらしい。それに、彼が所属する第3騎士団も単独行動に対してアルベルトに説明を求めてきたという。

「でも、お父様が収めてくれたのでしょう?」

「彼が動いたのは私がリリアの誘拐された情報を伝えたからだ。責任があるとするなら私にもあるからな」

オルファはアルベルトが動くことを予想したうえで情報を伝えていた。事後報告でリリアにもしものことがあった場合後悔するのは彼だろう。そのため責任は自分にあると考えてすぐに第2騎士団と第3騎士団に頭を下げに行ったのだ。

元第2騎士団長のオルファが目の前で頭を下げるのだ。騎士団長達は驚きと戸惑いの表情を浮かべて、アルベルトに対する処分をとても軽いものにしてくれたという。

「勝手に動いたのだから、それに対する始末書と誘拐事件の後始末、犯人たちへの事情聴取など第2騎士団が行う捜査の手伝いで許してもらった」

処分が軽く済んだのはよかったが、そのせいでリリアと会う時間が取れなくなってしまった。リリアへの事情聴取も行われたのだが、第2騎士団の騎士が訪ねてきただけで、アルベルトが姿を見せることはなかった。

「もう、せっかく楽しい話をしようと思ったのに、振り出しに戻っているわ」

話題を変えたはずが、また誘拐事件の話になってしまっていた。

拗ねるサラにオルファは苦笑して肩を擦っている。

本当に穏やかな時間だ。誘拐された時はもうこんな風に穏やかな生活が戻ってくるとは思っていなかった。すべてが必死でアルベルトと再会できたことに感情が上手く追いつかなかった。

感情に任せて彼の腕で思い切り泣いてしまった。今振り返ると恥ずかしい。

会いたい気持ちはあるのだが、自分のせいで余計な仕事を増やしてしまった負い目があって、会いたいとは言えないでいる。

花のお礼にお菓子を焼いて届けてもらおうと考えたこともあったのだが、料理長に相談すると病み上がりだから駄目だと却下されてしまった。買い物に行きたいと言ってもエルは首を縦に振らないし、家族も言葉にする前に雰囲気で拒否しているのがわかった。

実はリリアは屋敷に戻ってきてから一度も外に出ていなかった。

あまり外出することがないリリアでも、いい加減外に出る許可が欲しいものだ。

家族は楽しい話を探していたが、秋の収穫祭が近づいてきていることを思い出して、その話で盛り上がり始めていた。

夏も終わり秋に差し掛かった時期。もうすぐ収穫祭があることを思い出してリリアは空を見上げるのだった。


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