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25.キラからの依頼

読んで頂きありがとうございます。

この章から読まれた方は、是非【ユキア・サガ 航海① ネフシュタンの魔片 第一巻 第1章】から読んで頂けますと、幸甚です。


 モノマキア第2回予選大会の翌日。

 オレ達はロックを仲間に迎えることは出来なかった。

 銀の匙から一歩も出ない。

 こうなってしまうと、一日も早く船の完成を待つしかない。

 オレ達はソッジョルノの定位置に座っている。

 トゥルケットを飲みビスコットに手を伸ばしながら、時間を潰している。

 高窓は全て開け放っていた。

 風が運んでくれる新鮮な空気で部屋を満たす。

 今日もつつじの甘い芳香が優しい。

 オレは聖ペトロ大聖堂に行ってみようかと思った。

 でも、レイやザザに黙していくことは出来ない。

 ロックを仲間にすることができず、寂しかった。

 だから、今はレイやザザと離れて動く気になれない。

 2人の仲間の存在が、かけがえのない温もりだと感じて大切にしたいと思う。

 そんなオレの襟懐には、新たな悩みも生まれている。

「んー出ない訳にはいかないしなー」顰め貌のオレ。

「王者大会の報酬は最低5.000万ドエルン貰えるからなー。

 でも今はロックと闘う気分じゃないしなー。

 どうしたらいいかなー」

「ユキア様」ザザは閉じていた目蓋を開けた。

 ユキアの貌色を観察しながら「なーなー言っても仕方ないでござる。

 5.000万ドエルンは我等にとっても、ロックにとっても必要でござる。

 勝敗についてはもう決まってるようなものでござる。

 ロックの今の苦境を考えれば、お分かりでござろう。

 間違ってもユキア様が勝ってはならないでござるな。

 ロックはまだ円形闘技場で、闘わなければならぬでござる。

 王者大会の勝利者賞金1億ドエルンを稼ぐ必要があるでござる故」

「や、でも負ける気ないしなー」オレはちょっとむっとしてむくれた。

「や、実際負けないしなー。

 や、王者にもなりたいしなー。

 や、実際なれるしなー」

「なーなーなーなー煩いっ!」レイに一喝された。

「いくら負けず嫌いでもザザの言う通り、ロックに勝ってはなりませぬ。

 そんなことより、」

「は? そんなことって何だよっ!?」オレは緋隻眼を尖らせた。

「オレ柔拳術で勝つ自信満々よ?

 それどころか、億奥兆兆よ?

 昔と違って剣槍術だって、今は最低でも五分五分の自信有り有りよ?

 然も、小烏丸持ってるよ?

 ほんと行けるよ?

 やっちゃうよ?

 モノマキアの格闘王になちゃうよ?」

「あーもうっ!」レイのこめかみがピクピクしている。

「何ですか、自信億億兆兆って?

 そんな言葉は有りませぬっ!

 自信満々を、万万と間違えてるのではありませぬか?

 それから、一々、よ? よ? って疑問符の連発にも苛っときます!

 王者大会でに出場するなら、ロックに勝ってはなりませぬ。

 この話題は以上!

 それよりキラさんが我等に依頼したいことがあるそうです。

 もう直ぐこちらにお見えになるので、頭の切り替えを」

「おぉ……」ザザは感心しきり。

「突っ込みながらも確りとユキア様を制御してるでござる。

 レイも大変でござるな……」

「ザザ余計な口を挟まず、命を大事に致せっ!」

 レイの殺気に背筋を伸ばした。

 「怖いでござるよぅ……」小声で嘆く。

ーーその時部屋の西洋扉をコン、コンと叩く音がした。

 ザザが扉を開ける。

 キラが威厳と優雅さを感じさせる男と一緒に現れた。

 その男は60代くらいの年齢で、純白の髭を胸元まで伸ばしている。

 キラはいつも腰掛けるディヴァーノにその男と座った。

 男の両眸は、知性的で穏やかな光を溢れさせている。

 年齢を霞ませるような筋肉美を誇る体躯。

 その所作には優美さがあった。

 キョウがキラと男に、トゥルケットを給仕する。

 二人は揃って会釈した。

 その後リオの目はキラとキョウとの間を行ったり来たり。

「ユキアが探していた闘技場の王者屋の件、今朝例から聞いた」

 キラが同情するように、

「残念だったね。

 でも、ユキア達とロックの問題を解決できる方法はあると私は思う」

 話を知り出したキラの意外な言葉に、オレは前のめりになった。

 先刻まで、だらだらしていたのを忘れてしまっている。

「その前に彼を紹介するね」

 キラは自分の右隣に一度振り向いて、

「トレジャー・ハンターの一人で私の仲間なの」

「リオ・ダ・トスカーナと申します。

 私は、ノブシゲ・サナダの応援団の一員だ。

 モノマキアでの戦いは素晴らしかった。

 会えて光栄だ。

 私のことはリオと読んで欲しい」

 キラはその光景を見て本題に入った。

「ユキア私達は実はある者を入手したいと考えてるの。

 この冒険に、ユキア達の力を借りたい。

 成功報酬は5億ドエルン。

 勿論冒険中の必要な費用は、すべて私が負担します」

 キラは海賊ユキアに持ちかけた。

「ごっ、5億ドエルンでござるかっ!」

 ザザは立ち上がって固まっている。

 レイは眉根を寄せて訝し気に首を傾げていた。

 話の続きを待ってるらしい。

 オレはチュチュの背中を撫でている。

 が、キラの話の話に集中していた。

 キョウは沈黙したまま、じっとキラとリオを観察している。

「驚くのは無理ないけど、ユキア達は海賊でしょ?

 世界中の海賊達は、財宝を求め海原で船を走らせている。

 山賊だって大地を駆け巡っている。

 ユキア達はこの世界にある財宝を狙わないの?

 一獲千金を狙わないの?」

 オレは「狙いますとも!」俄然、鋭気が漲ってきた。

「5億ドエルン……」レイは慎重に思量しているように見える。

「確かにそれだけあれば、ロックの保釈の問題は解決できるが……。

 然れど我等には船がありませぬ故、海には出れませぬが。

 成功報酬からは挨拶するに、任務には相応の危険がある筈。

 尚のこと、闘える船が必要では?」

 リオはまだ10代の少年の冷静な判断力に驚いている。

「君の言う通りだ」と感心する。

「レイ・ネブラと申しまする。

 レイと呼んで頂ければ」と応じるレイ。

「オイラはザザ・ヴォラーレ。ザザと呼べばいいでござる。

「聖獣ビオリス一族レンの妹で今キョウと申します。

 キョウと呼んで下さればよろしいかと」

 リオはキラとキョウが瓜二つなことに喫驚していた。

「人間と聖獣が変貌した人型の姿が、どうしてこんなにも似ているのだろう?

 神のお戯れなのか?」

 キョウは何も答えず静かに微笑む。

「レイ船ならあるでしょ?」キラはその謎を棚上げした。

「あなた達がクレブリナ海賊団から勝ち奪ったあの船が」

 がレイは言下に切って捨てた。

「あの船はクレブリナ海賊団のファルカンが申していたでしょう?

 海賊船として闘える船じゃありませぬ」

「それは私も分かってる」

 キラは皓い歯を零し「モンテにユキア達と闘える船に改造をしてもらってる。

 だから以前と同じ船ではない。

 4本の帆柱のうち後ろから二番目の帆は縦帆に変更。

 船体も以前より細くするみたい。

 大砲も3倍増しして長距離砲と中距離砲の2種にするんだって。

 船尾にも大砲を追加するみたい。

 それでも他の大型海賊船と比べれば見劣りするかもだけど」

「ん、じゃあ決まった」オレは決断した。

「船のことは気にする必要はないさ。

 闘い方は一つじゃない。

 この話、ロックにも教えたいなー。

 どうだろ?」

 キラはオレの提案に「勿論よ。彼とはすぐに連絡取れるの?」と快諾。

 オレはキラの反応を見て察した。

 どうやら、オレがロックに聲を掛けるのを想定していたらしい、

「あっ! セルモの番号を聞くの忘れてた」

「ユキア様問題ないでござる」

 ザザは立ち上がり、

「ロックは円形闘技場の地下にいるでござるから、オイラひとっ走りするでござる。

 野生児のザザにとって、外の空気を味わうのに丁度よい好機だったのだろう。

 ソッジョルノの高窓から飛び出して、ザザは円形闘技場へ向かった。

 レイは書斎から肘掛椅子を持って来て、ザザのディヴァーノの右側に置く。


 ※※※※※


 円形闘技場まで往復で3マイルはある筈だが、10分と立たぬうちにザザはロックと共に、今度は客室の西洋扉から入ってきた。

「宿のカメリエーレ達は、闘技場の英雄の登場に驚いていたでござる」

 ザザはいつも座る席をロックに与え、自分は肘掛椅子に落ち着く。

「会えて嬉しい、キラ・ユ・ガイヤよ。

 キラと呼んで欲しい」

 キラは軽く会釈した。

「本名はロック・マリスだ。俺のことはロックと呼んでくれればいい」

 ロックも会釈を返す。

 が、キョウとキラが見ているのを驚くというより、訝しんで厳しい目色だ。

「リオ・ダ・トスカーナと申します。リオと呼んで欲しい」

 リオは、ロックが登場することは夢想だにしてなかっただろう。

 でもそれが、前夜私がリオとトバルに、驚喜する結果が待っていると宣言していたことに、想到した口振りだった。

 リオがロックに右手を指しだすとロックも同様に応じた。

 闘技場から銀の匙まで一気に駆け付けたロック。

 休まず往復を走り続けたザザ。

 二人の呼吸の乱れは全くなかった。

 汗すら滲んでいない。

 私とリオはロックとザザ君の間で、瞬きを忘れ目線が行き交う。

 忍者の走力、持久力に舌を巻いた。

 そんな私達に、ロックは遠慮することなく要求する。「ユキアの呼び出しだから出向いてきたが、俺は闘技場の守り人を務めている。

 本来あの地下から自由に動きなわれない立場なんだ。

 話はできるだ簡潔に頼む」

 キョウが給仕したトゥルケットを一口飲み、ロックは煙草を吸い始めた。

「ロックにとって良い話だ」ユキアはウキウキしている。

「詳しい話をキラ達から訊かせて貰おう」

 ロックは呆れかえり「何だよ。話の詳細も訊かずにザザを寄こしたのか?

 頼むぜ、全く」

「や、善は急げっていうだろう?」

 ロックに険しい眸で突っ込まれても、ユキアは恬然としてまったく気にしない。

 ユキアは私が「ロックの問題を解決する方法が、待った気な糸は言い切れない」

 そう言った言葉に信を置いてくれてるのだろう。

「キラ」ユキアが目配せした。「冒険の詳細を話して欲しい」

「分かった」私は語る。「ロック、私とリオはトレジャー・ハンターなの。

 世界中の秘宝を探索している。

 今私達が入手すべく動いてるのは、非常に貴重で、危険でもある魔遺物よ」

「ちょっと待ってくれ」ロックが問う。

「貴重で? 危険な? 魔遺物ってのは一体何なんだ?」

 リオが温和な容顔と静穏な声調で、淀みなく解説する。

「魔遺物とは、聖遺物や幻玉同様、特殊な効果や能力を与えるが、その言葉通り、聖遺物とは対極をなす。

 堕天しサタンとか、悪魔神と呼ばれてるルキフェルの祝福が与えられている。

 従って、魔遺物が我々人間に善良な物ではなく、危険だと断定してる。

 だから、魔遺物は各国首脳の極秘案件となっている」

「成程。確かに物騒なものだな……」

 ロックは腕を組み黒蒼眼を閉じた。


 ※※※※※


「そうなの」キラはロックに肯じて「今回の冒険、私達に力を貸して欲しい。

 成功報酬として、5億ドエルン用意してる」

 ロックは昨夜の話で知っていた。

 クレブリナ海賊団から奪った船を買い取ったのがキラだということ。

 キラがサンクトゥス銀行の小切手の持ち主だということも。

「ほぅ……その任務を成功させれば、ヴィオーラ達の保釈金返済に充てられるってことか」

 ロックのその聲はどこか懐疑的だった。

 オレはそれに気づき、何故なのか考量する。

 成功報酬の支払いを疑っているとは、オレには思えIないんだよなぁ。

 もしかすると、標的となる魔遺物が何なのか?

 或いはそれが本当に存在するのか?

 その辺りを訝しんでいるのかもしれない。

 でも、オレはこの話に乗る。

「うん、そそ」オレは胸中を明かさず「俺はこの冒険に行く。

 ロックにも力を貸して欲しいんだよ。

 成功報酬はロックが自由に遣えばいい」

 が、ロックは何も答えず瞑目したまま。

 キラは「話を進めてもいいかな?」遠慮がちに聲を掛けた。

 オレは少し顎を引き静かな沈黙で答えるが、好奇心にそそられていた。

 キラは持参してきた読み込まれているのが人目でわかる、革製の聖書を大事そうに開く。

「旧約聖書、民数記第11章4節から9章に次のように書かれている」

 キラが読み上げた物語は、神とモーセに逆らって非難する民に、神の怒りによって放たれた『炎の蛇』が襲い掛かる話だった。

 然し、民の願いを受けたモーセの祈りを神は受け入れた。

 その結果、神はモーセに青銅の蛇を造らせ、民を救ったという。

「ユキア、あなたはこの話を知ってるよね?」

「うん。不思議な話だからなー。炎の蛇は生き物だったのか?

 モーセの造った聖堂の炎蛇が、どんなものだったのか?

 なぜそれが、神の放った炎蛇からイスラエルの民を救えたのか?」

 オレは、肘掛に右肘を立て、その拳の上に頬を乗せ、考え厭む。

「この物語には続きがあることも知っているよね?」

 敢えてキラは、オレに訊いているみたいだな。

 オレは直感した。

 きっと、仲間のリオに俺が、

 ・確り聖書を読んでいること。

 ・信仰心も篤いこと。

 この辺りを認めさせたいのかもしれないな。

 聖書をも魔遺物も聖書に登場するもの許りだから。

「確か列王記下だったと思うけどモーセの造った青銅の炎蛇は、打ち砕かれたって書いてあったと思う」

「さすがね」キラは満足気に「列王記下第18章4節、ヒゼキア王の時代の話。

 モーセの青銅の炎蛇はネフシュタンと呼ばれ、それに香をたいた民もいたみたい。

 それが偶像崇拝と見做されてしまった」

「でもさ」オレは得心できない。「どうしてネフシュタンは破壊されなきゃならなかったんだ?

 神の赦しがあって作られたものだよね?

 幕屋や神殿にあった契約の箱には、十戒の石板、アロンの杖、マナの壺もあった。

 それにも香はたかれていたのに。

 ネフシュタンは、それこそ契約の箱の中に入ってもおかしくない聖遺物だと思うな」

 キラとオレの会話に口を挟まずにいたリオが、徐に口を開く。

「実はその破壊された青銅の炎蛇欠片を、入手したい」

 今回の冒険の標的(ターゲット)が明かされた。

 キラが補足する。

「それは、偶像崇拝の対象となっていたとされていたから『ネフシュタンの魔片』と呼ばれていて、魔遺物だと認識されてるの」

 全員の反応をさり気無く窺う仕草をして、キラはオレの推考に同意する。

「ユキアの言う通り、民の命を救ったネフシュタンの破壊が何故起こった、確かに奇しき話よね。

 ネフシュタンは、契約の箱の中に入れられていてもおかしくない価値があると、私も思う。

 そうしてれば、偶像崇拝対象とはならなかった筈……」

「でしょ?」オレはキラと意見が一致したことが嬉しかった。

「でもネフシュタンの欠片は魔片って呼ばれるようになったのかな?」

「その理由は二つある」リオはトゥルケットで喉を潤してから「一つは先程から話しに出ている通り、偶像崇拝の対象となっていること。

 もう一つは、伝承によると魔片をすべて集めた者には、あの蛇が一度だけ力を貸すと言われていること。

 それがどんな力なのか、判然としてないが」

 オレの頭の中で鋭い閃光が走った。

「あの蛇!」オレは確固とした語勢で推断する。

「それはエデンの園の蛇のこと?

 それともヨハネの黙示録の蛇のこと?

 オレはどちらも同じ蛇で、ルキフェルを象徴してると思ってるけどさ」

 ロックが断言した。

「何れにしても……悪しき心魂持つ者が所有すれば、極めて危険な惨事をもたらすのは間違いない。

 それが魔遺物で、ユキアが言うあの蛇とやらが力を貸すのであれば」

 オレもロックは正鵠を射ていると思う。

 だけど、本当に魔遺物なのか、今一つオレは自信に欠ける。

 主イエスは、ネフシュタンとご自身を準える御言葉を残していた筈。

 確かーーモーセが荒れ野で蛇を上げたように、人の子も上げられねばならないーーと。

「だが、ちょっと待ってくれ」ロックは疑念を含め「それは本当に実在するのか?

 海滅時代をさらに遡る超古代に存在しただけで、証拠はない。

 どうやってその類の情報を掴んでいるのかわからないが、ガセだって可能性も否定できないだろ?

 オレは立場上ハズレを引く訳にはいかないんだ」

 ロックが慎重に判断せざるを得ないのは当然だなとオレも思った。

 俺達と違って、闘技場の守り人をしているロックは、自由に動くことは赦されていない。

 それにロックはまだ懸念がありそうだな。

 レイが辛そうに言葉を置いていく。

「聖書に記録が残っている以上、それが過去のお事実だと思いまする。

 私も民数記を読んでる故疑ってはおりませぬ。

 然れど、約一か月後にはモノマキアの王者大会が控えております故、遺憾ながら今の情報だけで冒険するのは難しいかと」

 ザザもレイと同じ考えに見える。

 二人ははキラとリオに申し訳なさそうに、目を伏せた。

 でもオレは、仲間達を制す。

「まだ二人の話は終わってない。

 どこにネフシュタンの魔片があるのか?

 キラの情報源がどこなのか?

 どっちも訊いてない」

 オレは、キラが女性でも義の篤い志を持ち、温良な人だと心底信頼している。

 クレブリナ海賊団との闘いは、オレ達だけじゃなくキラも一緒に闘っていたんだから。

 万が一、俺達があの時負けていたら、キラは自信をクレブリナ海賊団に差し出していた。

 然も、絶美の麗人だし。

 ってそれは今のはなしに関係ないな。うん。

 更に、レイとザザは忘れてしまっていることがある。

 キラは海帝に狙われ、何度もその危局から自力で脱出していた。

 どうやってそれを成し遂げたのか、それは不明だけど。

 何らかの能力が、キラに備わっているのは間違いない。

 それもキラを信頼できる要因の一つだ。

 加えて、キラは、たとえ海帝を敵に回しても動じてない。

 その状況で秘宝を追い求めているのは、それが夢幻では無いからだ。

「ユキアありがとう」キラは嬉しそうに言う。

 「では改めて話を戻します」

 キラは落ち付いて話を確認しながら継なげて行く。

「聖なる力が宿っている聖遺物ロして、先刻の話にでた、

 ・十戒の石板

 ・アロンの杖

 ・マナの壺 

 ・聖杯

 ・聖骸布

 等が有名ね。

 呪われた魔遺物の霊として、

 ・イエスの聖体を傷つけ極悪と呼ばれたフラグラム

 ・偶像崇拝の対象となってギデオンのエフォド

 ・反逆者の弓となったイエフの弓

 。ネフシュタンの魔片

 等がある。

  幻玉の例としては、

 ・白金真珠(プタチリータ)

 ・緋紅玉(プーニクルス)

 ・黒金剛石(ブラックダイアモンド)

 ・桃金剛石(ピンクダイアモンド)

 でも、聖遺物、魔遺物、幻玉は他にも存在する」

 皆、真剣にキラの話を傾聴している。

 誰も口を話そうとする者はいない。

「それらは全て、所有者に何らかの効果、能力を与えるとされている。

 だから、破格の値がつけられているの。

 因みに美貌と若さを保つとされる桃金剛石は100億ドエルンの値がついてる。

 だからその情報を入手のは、簡単ではないことを理解してもらえるかな?

 誰もが入手した情報を洩らさない。

 競合者を増やすことになるから」

「成程」ロックはkらの説明に納得しているものの、やはり信じ難いという思いが聲に潜んでいる。

「つまりそれが存在している、という情報そのものが、耳に届くのは難しい訳か」

 加えて、それ以外にも何か引っ掛かるものがあるようだ。

 峻厳な面魂のまま何な言いたそうに見える。

「心配することはありませぬ。」聖獣ビオリス一族のキョウが厳かに告げた。

「ネフシュタンの欠片は聖書にある通り、海滅時代の始めとされている時代をさらに遡る、超古代から実在しています。

 おそらくそれは打ち砕かれて、三つの欠片になっているようです。

 全てバラバラに、ずっと人の手を渡り歩いいています。

 ですが、妾はそれらがどこにあるのかは存じませぬ」

 キラはロックの貌が和らいだのをちらりと見て、再び話し始めた。

「聖遺物、魔遺物、、幻玉には、それらが所有者に能力や効果を与えるという以外にも、隠されている秘密があるらしい。

 でもそれは今、私達が議論することじゃないかな。

 話を先に進めます」 

 透かさずユキアは「えーっ!? 気になるなー」

「ネフシュタンの魔片の主な情報源は」キラはオレの抗議を無視して話を戻す。

 が、蠱惑的な瞳は笑みを帯びている。

「クィーンズティアラ海軍と、神聖ロムルス皇国海軍なの。

 尤も、クィーンズティアラ海軍の情報はほんの一部。

 その殆どが神聖ロムルス皇国海軍から得た情報。

 でも、この点については私も引っ掛かるものがある」

「なに故に?」レイは率直に疑問を呈す。

「海軍情報なら、寧ろ信用できるのでは?」

 キラは直ぐ様レイに応じる。

「神聖ロムルス皇国海軍にネフシュタンの魔片を入手しようとする動きが全く観えないから。

 神聖ロムルス皇国は、聖遺物、魔遺物、幻玉の捜索・入手には特に力を入れている国。

 メシア教カットリチェシモを国教として、その総本山ラティウム都国を守護している。

 だから通常こういう場合特殊部隊等を編成する等して、極秘裏に動く筈……」

 ロックは「俺が海軍にいた頃、魔遺物の存在は知らなかったが、キラの言う通り聖遺物、幻玉の入手には相当力を入れていたことは知っている」訝しんでいる。

「そうかー」オレは話の続きを促す。

「で、ネフシュタンの魔片はどんなもので、どこにあるんだ?」

 オレもキラの話に、ロック同様釈然としないものがあった。

 でも、まずはキラから、今回の冒険の全貌を訊くべきだな。

 オレはこの冒険に行く。

 ロックの為にも5億は必要だ。

 それに魔遺物を野放しにはできない。

 キラはユキアの問いかけに答えていく。

「まずそれは、青銅を鋳造した者であること。

 炎をまとった蛇にの形で、大きく口を開いているだろうということ。

 大きさは今のところ判然としてないけど、数日中に分かる。

 仲間の一人が、それを再現すべく模造品の政策準備をしているから。

 それから場所はテュッレーニア海のクルクス島とサル・ディ・ニア島の中間海域のアヴィス群島の一つ、アシオー島という小さな島。

 港は一ヵ所のみで、そこ以外は断崖絶壁になってる」

 ロックが「海賊の根城に、打って付けの島だな」と反応。

「さすがロックね」キラが麗顔を嬉しそうに綻ばせた。

「実はその通りなの。

 海軍が動かないことが気なって、ずっと調査してたんだけど、判明したことがいくつかある。

 一つ目は、ネフシュタンの魔片を所有してるのは、神聖ロムルス皇国の海軍賊だということ。

 船長以下主だった幹部は、元神聖ロムルス皇国海軍の海兵達よ。

 ということは海軍が動かないのも、」

「もう既に」オレがキラの先を読む。「両者が取引交渉に入っている可能性があるな」

 キラはオレに双瞳でそれを肯定しながらも「ただ、その期間が長すぎる。交渉に入っているなら、もう一年近い」理解に苦しむという感に観える。

 キラは疑念を一旦棚上げして「それから二つ目は、アシオー島に城塞と城下町を築くべく、神聖ロムルス皇国海軍の任務を何故か、その海軍賊が任命されているの。

 正規海軍もいるんだろうけど、実務は海軍賊が仕切っているみたい。

 おそらくは、その近海を荒らしているガリアス王国の海軍賊対策だろうと思う。

 海軍賊達は、アヴィス群島全てを巻き込んで、島民を連行して強制労働につかせている。

 そして三つめは、一つしかない港には侵入してくる敵船を沈める為に、確り大砲を配備してるってこと」

 ザザが貌を顰めた。「島に乗り込むのは、容易じゃないってことでござるな」

「無理だな」ロックは二本目の煙草を吸い始めた。「ネフシュタンの魔片を神聖ロムルス皇国海軍のの海軍賊から奪取する冒険、オレは立場上動けない。

 海軍から離れた今も、全く無関係って訳じゃない。

 ユキア、悪いがそういうことだ」

 ロックの結論にオレは「気にしなくていい。フェリクスの耳に入ったら大変だろうし。

 でもオレは行くよ。

 相手が海賊なら遠慮しなくていいからさ」

 レイはオレを翻意させることは出来ないとわかっているからだろう。

 諦観の面持ちで口を開く。

「ユキア様、お気持ちはレイにもわかりまするが、敵となる海賊がどんな連中なのか、どのくらいに戦力なのか、我等は情報がありませぬ。

 勿論、我等3人で闘える相手だということを前提に、キラさんがこの依頼をなさっておられるのだろうと、拝察しておりまするが……」

 ロックが「レイに言う通りだ。敵を熟知し、己の力量を測って戦術を練る者が勝利を手にするんだ。

 よく考えろ」

 自分の為に動こうとしているオレを止めようとしているのは、居並ぶもの全員が感じているだろう。

 キラは恰もこの時を待っていたのか、その美貌は妖艶に微笑む。

「レイやロックは正しいと思う。

 情報は全て共有しておく必要があるから話しておく。

 標的の海軍賊はウルティオー海賊団。

 船長は元神聖ロムルス皇国海軍少尉ウィル・フライという男で、手下には、」

「驚き、桃ノ木、山椒の樹でござるっ!」ザザはまた立ち上がり、ロックを観てからキラに貌を向け「ウルティオー海賊団は、ロックが追っていた海賊でござるっ!」

 オレ、レイ、キョウ、リオはロックの表情を追う。

「ロックがキラの話を引き取る。

「副船長は、サミー・コールド。

 甲板長は、混血鳥人アレク・ミッチ。

 操舵手は、岩松にの木人フール・コンディ。

 船医は、ドクター・ポイズン・グリンヴィール。

 この4人がフライを支えている。

 手下は総勢200人を超える。

 船はカロネード砲を44門装備した5本帆船のリベンジ号。

 フェリクスの手配で、海軍から与えられた軍艦だ」

 さして驚くこともなく、キラはロックの話に耳を傾けている。

 オレは、キラのその姿を見て想到した。

 キラは、ロックとウルティオー海賊団の浅からぬ因縁も、既に情報収集していたのだ、と。

 キラの情報収集能力は、オレ達忍者と比肩するかもしれない。

 明眸皓歯、容姿端麗な絶美の佳人だということが、大いに役立っているのは間違いない。

 それを差し引いても、かなり優秀だと言えるな……。

 以前キラは出自について、オレ達パークスの者達と同じく、極東の島国ヤマトに所縁があると言ってた。

 ひょっとすると忍者の血を受け継ぐものなのかも?

 その知謀も素晴らしいと言わざるを得ない。

 きっとオレがロックに聲を掛けるか、或いはキラ自身から働きかけて、その力を借りることも織り込み済みだったに違いないな。

 キラは、パークスのくノ一顔負けのトレジャー・ハンターだ。

ーーロックの話は続いている。

「敵としては厄介な相手だ。

 然し妙だな。

 フライは海軍との結びつきは強い。

 問題なく取引は行われる筈だが……。

 一体何が起きてるんだ?」

 キラは、ロックの疑義に対する自らの考察を客観的に述べ始めた。

「海軍賊、ウルティオー海賊団は、神聖ロムルス皇国海軍所属だから、ネフシュタンの魔片は高額報酬と引き換えに、神聖ロムルス皇国に売却されるのが、自然の流れの筈。

 その取引は極秘のうちに行われ、取引が完了するまでそもそも情報漏洩は有り得ない。

 それを奪取する敵から狙われる危険を回避しなければならないから。

 だから私は、情報が海軍から洩れていることが引っ掛かっている」

 リオもキラやロック同様、懸念を口にする。

「神聖ロムルス皇国は、国家としてネフシュタンの魔片を入手しなければならない。

 もしウルティオー海賊団は、が取引で値を吊り上げてきたとしても、それなら海軍賊としての資格を剝奪し、、一戦交えて強奪すればいい。

 然し、そうしようとはしていない。

 真実は分からないがはっきりしていることが一つだけある」

 皆がリオを注目している。

「ウルティオー海賊団が、ネフシュタンの魔片を手放そうとしてないことだ」

 ウルティオー海賊団の目的は不明だ。

 が、リオの言う通りだと思った。

 キラが自説を展開する。

「私が思うに、神聖ロムルス皇国としては、海軍賊として稼ぎ頭でもあるウルティオー海賊団から、ネフシュタンの魔片を奪取することは、列強大国の筆頭株として、カットリチェシモを国教とする国としても、できないと結論を出しているのではないかなと。

 けれども、ネフシュタンの魔片の情報が漏洩して、ウルティオー海賊団が他国海軍や、海軍賊、或いは海賊から標的とされたら、彼等は神聖ロムルス皇国の取引に応じるかも?

 もし取引に応じなくても、他者がウルティオー海賊団から奪ったネフシュタンの魔片を、神聖ロムルス皇国が奪い返しても、それをウルティオー海賊団に返還する必要はない。

 だから情報が漏洩してるんじゃないかな」

 レイが口を挟む。

「然れどそれはウルティオー海賊団も気付くことでは?

 それでもネフシュタンの魔片を手放さないのは、

 誰に狙われてもいい。

 と腹を括っているのではないかと思えてなりませぬ」

「そうね。私もそう思う」とキラは微笑む。

 レイとキラの推論を俺が論断する。

「答えは、海帝だ。

 ロックが言ってただろ?

 奴等が海帝と結びつきがあるという情報を掴んでいたって。

 海帝と組んでるなら、神聖ロムルス皇国海軍や、海軍賊、他の海賊連中も恐れる必要がない」

 ロックも「ユキア冴えてるな。俺もそれが正解だと思うぜ」断定した。

 リオは煩悶をその両眼の奥底に湛えて呻いた。

「海帝……か。一体何者なんだ?」

「現段階で」キラは決然と「その答えを出すことは出来ないけど、もう一つの答えを私は持っている。

 ネフシュタンの魔片を奪取して、海帝陣営にこれ以上魔遺物を放置できない!」

 てことは、他の魔遺物も海帝は入手してるってことか。

 それは危険だと、オレも思う。

「オレも!」オレが続く。「ウルティオー海賊団は何れ叩き潰そうと考えていたから、丁度いい!」

 この冒険を依頼されてから、オレは一切迷わずにぶれることなく志を貫く。

 そんなオレに向けて、キラの視線は希望と信頼の光輝が溢れていた。

「オイラもでござる!」

「レイもお供いたしまする!」

 2人は目を合わせて笑みを浮かべ点頭する。

「おいおい!」ロックが面白そうに「決めてたっていつからだよ?」

「ん? 昨日の夜から」

 オレは当然と許りに「ロックやマンゾが信用できない奴の部下だった連中だろ?

 だとしたらろくな奴等じゃない。

 オレは、フェリクスも間違いなく海帝と手を組んでると、ここで断言をしておく!」

 ロックは「一つ確認しておきたい」

 この冒険の内容を知ったとき同様、懐疑的な姿勢を崩さず問い質す。 

 キラは何か問題でも? といった目顔で「どうぞ。何でしょう?」

 ロックは黒蒼眼で相手の底意を見透かすように、

「あんた達はネフシュタンの魔片をどうする心算なんだ?

 ユキアはキラのことを信用しているから、オレも信用したい。

 本当のところを教えてくれないか?」

 確かにロックの問いは、この冒険における大切な核心を衝いてるとオレも思った。

 そう言えばその点について、オレは何も訊いてない。

 きっと、破壊するか封印するかの何れかだろうと思うけど。

 キラはロックの問いを喜んでいるようだった。

「私達は、守秘義務契約があるから顧客の素性は明かせないけど、ネフシュタンの魔片は一旦封印することになってる。

 ユキアが今日指摘した通り、ネフシュタンの魔片は聖遺物の可能性もある。

 もしそうなら、保護管理しなければならない世界の秘宝の一つになるから。

 でもやはり魔遺物だと判明した場合、破壊することが目的なの。

 ただ、現時点でその実存がはっきりしているネフシュタンの魔片は一つしかないから、聖・魔の判断が下されるまでは、厳重に封印されることになる」

「分かった。ならばオレも行く!」晴れ晴れとした顔容でロックは誓った。

「だから一度ヴィオーラに会っておく。

 ユキアすまないが協力してくれないか?

 俺達はお互いに立場上、自由に会うことは赦されていない。

 だが、レムスを離れるならフェリクスの許可がいる。

 そうなれば、ヴィオーラも知ることになる。

 だから、ヴィオーラが心配しないように、事情を話しておきたい。

 フェリクスの野郎が、ヴィオーラに何を吹きむかわかったもんじゃないからな」

 ウルティオー海賊団幹部は、マンゾ事件の真相を知っているとオレは睨んでいた。

 その事件の真相をすべて暴きたいとロックは決心しているのが、オレにひしひしと伝わってくる。

 それは、ロックやヴィオーラに姉妹にとっての宿願に違いない。

 だからオレは、ウルティオー海賊団の名を耳にした以上、捨て置く訳にはいかない。

「うん。大歓迎だよ! 協力の件もOKだよ!」

 キラは」にこにこせずにはいられないといった概だ。

 リオと一緒に、喜びを満喫しているのがオレの緋隻眼に映る。

「ロック、あなたが私達と行動してくれるのは、とっても心強い。

 この冒険の成功は決まったようなものね」

 リオは「昨夜君が言っていた通り、もう一人同行するという私とトバルが驚喜することが起こった。

 早くトバルに伝えたい。

 全く君には脱帽だよ」帽子をとる仕草をした。

 オレは「キラはロックが力を貸してくれると、思ってたってことか。

 どうしてそう考えたんだ?」 キラの逆賭は凄いと思う。

 キラは「私もロックの所在を捜していたの。

 だからロックと、フェリクス、ウルティオー海賊団のについての因縁も情報入手してた。

 今日その話をして、ロックを呼んでもらおうと考えてた訳」さらりと言ってのけた。

 やっぱりキラの情報入手能力は優秀だな。

 オレは内心大いに感嘆している。

 レイ、ザザ、キョウも、キラの答えに一瞬息を呑んでいたが、直ぐに空気が変わった。

 丸でザザは遠足に行くみたいに大はしゃぎ。

「4人揃うのは、久方ぶりでござるな!

 オイラ出発の日が、もう超楽しみでござる!」

 然しレイは冷静に「ロック協力とは?

 我等は何をすればいい?」

 話が流れが戻り、ロックがレイに説明する。

「フェリクス邸に侵入、ヴィオーラに会う。

 オレがあいつと外で話してる間、一人はヴィオーラに変化して待機。

 万が一を考えると、影写しノ術では危ない。

 1人はオレとヴィオーラに結界を張って護衛を頼む。

 1人は、この2か所の連絡と援護を頼みたい。

 ヴィオーラはオレが侍忍者だと知らないから驚くだろう。

 ま、いい機会だ」

 ロックの言う通り影写しノ術ではでは危ういと、オレも同感だった。

 影写しノ術は、姿形はほぼ完璧に変身できるけど、言葉は話せないからな。

 もし、誰かが部屋に訪れて話し掛けたら、万事休すだと俺も思う。

 が、レイは露骨に眉を顰めた。

 その理由は直ぐにわかる。

「ん、じゃあ変化はレイ、結界はザザ、オレが援護って感じで」

「女人への変化は」ザザは横目でレイに「レイの右に出る者はいないでござる。

 それ故、格を考えると全体を指揮する援護はユキア様で、結界を張るのはオイラでござる。

 レイ、仕方ないでござるよ」

 レイは当然オレの命令に拒否できない。

 が、ダメを押すザザに腹を立てて、怒りの眼矢を突き刺す。

 女人への変化が常に自分の役割になっているのも、苦々しく思って風でもあった。

 ロックはその辺りを察知しているからこそ「レイすまん。宜しく頼む」頭を下げた。

 「承知」レイはぶっきら棒に短く答えた。

 ★★★男性があ女性に変化するのはていこうもあるのだろう。

 キラはレイの心中を慮っているのか、さり気なく話題を変える。

「諸っ発は7日後でも大丈夫かな?」

「ヴィオーラと話を済ませたら・ロックは張りのある聲で「一両日中にフェリクスと会って、暫く闘技場を離れると伝える。

 それが済めば出発はいつでも問題ない」

 ユキアは「オレ達はいつでも動けるよ。

 あっ、でもピッコロ達には暫くレムスを離れることを、知らせておかなきゃだなー」

「ユキア様!」元気いっぱいのザザが手を上げる。「オイラが伝えて億でござる!」

「冒険の準備、我等も手伝います故、何なりと申し付けて頂ければよろしいかと」

 レイは変化の一件を頭からラ追い出す様相で申し出た。

「レイ、ありがとう。助かる」キラは礼を口にして「今回の冒険には私も同行します。

 でも、船の船長はユキアを任命する。

 それから、今回の冒険の指揮の全権もユキアに委ねます。

 みんな宜しくね」立ち上がり一礼する。

 リオはかぶりを振り「一緒に行けなくて本当に残念でならないが、君たちの成功を私は確信して疑わない。

 キラが君達の力になることも、私は確信している。

 ユキア船長、朗報を待ってるよ」

 リオは立ち上がりオレ、ロック、レイ、ザザ一人一人と地下強く握手した。

 キョウとも握手しようとしたが、笑みを浮かべながらも、何故か首を振ったのでリオは戸惑う。

 オレ達にはその訳を分かっていた。

 ユキアは「安心して待ってればいいよ。強力な助っ人も加わったことだしさ」

 一時的にではあっても、ロックは頼りになる男だから、オレは心から嬉しく思う。

 その思いは、レイもザザも同じに違いない。

 ロックも数年ぶりに気の置けない仲間達と行動できることを、口には出さないが赤心から感謝しているのが、オレにはことなは無くとも、その波動を感じ取っていた。

 宿願だったウルティオー海賊団のとの対決を考えれば、オレ達程心強い仲間は他にいないだろうと、オレは察している。


 ※※※※※


 ★★★一同を静かに見守ってたキョウは、チュチュを呼び寄せ、つつじの芳香を運ぶ涼風を招いている高窓から、オロアルマダ階段を見下ろす。

 チュチュはキョウの両方の掌の上で、小さく開けた口から舌を見せ機嫌のよい笑顔だ。

「チュラ様」キョウはチュチュにしか届かない聲で、残地7人のうち3人は元気にしているようですが、残りの4人はどうしているのでしょう……?」

ーーチュチュは何も答えない。

 密やかな笑みを湛えて、キョウはチュチュの背をゆっくり撫でる。

「妾の仕事は」キョウがレイに向き直った。

「レイ、もう終わったようですね、

 名残惜しくはありますが、妾はレン姉様の元に戻ります。

 あなたの成長を、レン姉様は楽しみに待っていることでしょう。 

 妾もレイの成長を誇ることが、楽しみでなりませぬ」

 今日はチュチュをユキアに戻す。

 ユキアは、定位置の左膝の上にチュチュを乗せた。

「キョウ」レイは束の間ふっと寂し気な表情を見せたが「感謝している。レンに一刻も早く会えるよう奮励努力すると伝えて頂きたい」

「わかりました。ユキア殿、ロック、ザザ、キラ、リオ、どうかレイのことよろしくお願いいたします」

 キョウは一人一人と目を合わせ、最後に一礼した。

 それから、「開きなさい」と口にした。

 すると、その背後に渦巻く時空間への入り口が開いて、皓い閃光を放つ。

 そこから観えたのは、吹雪舞う純白の雪山。

 その方向にキョウは顔を向けることなく、とんっ、と跳躍し瞬く間に消え去ってしまう。

 白銀に煌めく粉雪が舞い上がって踊った。粉雪はさらさらと滅し、雪山にひっそりと咲く、皓き水仙の美しき馨を残す。

読んで頂きありがとうございます。

駄作ですが、批評も含め、ご感想を頂けると喜びます!

評価✩✩✩✩✩やブクマをして頂けると更に喜びます!

長い物語ですが、様々な要素で楽しんで頂けるよう努力してます。

これからの物語も是非読んで頂けますように・・・。 m(_ _)m

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