1.説明ザッとの「プロローグ」
「──……の、……── リ………どの。──メシ食いに行きませんか?」
「へっ???? あ、はぃ。ぜひ」
瞬きを繰り返す。
強い日差しの中、横を見上げると──。
──すみわたる空よりも青い髪。
爽やかな風でほのかになびく前髪に、硬質な色合いを拡散させるほど人懐っこいほほ笑みを浮かべた青年がいた。
ぽけ〜っとした機能していない思考回路でも、彼を見た反射で「イケメン」の4文字が脳内で紡ぎ出される。
あまり考えずにうなずいたのは、良すぎる顔に魅了されたからか、はたまた優しそうな雰囲気につられたせいか。多分、後者だと思う。
就職前の説明会で一緒だった、第1近衛騎士予定のルイス・ルーベンス様と唯一の同期のよしみで昼食を共にする。そんな偉業は後にも先にも多分、これっきりだろう。
王宮の第12魔法具・魔法書管理局の職員に採用された『ぼく』こと、リリィ・ブランは昼の晴れやかな空の下。社交辞令だったかも知れないと思いいたったのは返事をしてしまった後だった。
──夏の花々が咲き誇る王宮庭園のひとつで、そんな事を考えていた。
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目の保養にしていた
同期のエリート近衛騎士様に
ー【ボクっ娘】
天然魔法使いが餌付けされている件ー
-R15版-
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王宮でも花形の近衛騎士(予定)のルイス・ルーベンス様と昼食を共にする。何でこんなことになったのか。
ことの経緯はぼくの生まれまでさかのぼる。
地方の孤児院出のぼくは、持ち前の魔力量の多さから、王都にある王立学園の奨学制度を利用できる事になった。
勉強は好きだ。読書はもっと大好きだ。ヒマさえあれば未知の知識の詰まった王立学園の図書室に入り浸り、魔術科に通い勉強漬けの毎日を送ることに。
その過程で王国の天然記念物に該当する『魔法使い』の称号を賜った。なんでもヒトの絶滅危惧種に該当するらしい。
広い王国内でも数十年に1人いるか、いないかの確率らしいんだけど。
これに関しては、魔力制御の甘いぼくが使う魔術が主な原因なので、ちょっと不名誉なモノだと思っている。
ただ、称号の付属。この称号ひとつで一代限りの『騎士伯』と同等の爵位が手に入り、貴族の身分が保障され、領地はないにしても、老後は貴族年金が出るので将来安泰。もらえるものはありがたく頂戴する主義のぼくはコチラの方が嬉しかった。
しかし、庶民派生活をしていたぼくに貴族の何たるかが分かるわけもなく。
甘すぎる魔力制御は先生方に矯正してもらい。貴族的なマナーや後ろ盾として、学園で友達になったマリアンヌ様のご生家であるブラン侯爵家の養女として迎えられた。
友達がお姉ちゃんになったわけだけど、元平民。距離感は大事にして行きたい。
独り立ちは必須だったので、早期卒業を果たし。王宮の採用試験に合格して、第12魔法具・魔法書管理局の職員となる運びとなった。
──で、だ。
こんな中途半端な時期に新規採用の王宮勤務の貴族が大勢いる訳もなく。
18歳のぼくよりもふたつ年上だと紹介されたルイス・ルーベンス様と共に、王宮内の主要施設の案内と、仕事関係の説明を騎士団の方が一緒に担当してくれて。
通行手形の発行やら、王宮寮に入るための手続きもあるので、本日はそちらメインになる。
あとは仕事開始までに必要なモノや提出書類一覧などなど。
説明が終わり、各自解散の流れで、その場でザッと必要物品のリストを今一度確認していたら、横にいたルイス・ルーベンス様に声をかけられた訳だ。
「リリィ殿、リリィ殿。騎士団の食堂に──メシ食いに行きませんか?」
と、笑顔で。
騎士団の担当者はお昼を食べても良いと言ってはいたけれど。説明会当日に貴族で利用する方も珍しいと言っていた気もする。
ちなみにぼくはめっちゃ食べる気でいた。
ぼくは王宮内にある図書館の勤務になる訳だけど、あちらは文官用の食堂が近い。
就職したら騎士団の方は使えないという想いと、人懐っこい優しい雰囲気のルイス・ルーベンス様にのまれて「ぜひ」なんて返事をしてしまい。
社交辞令で言ってもらったのかも? ──思考が追いついて後悔した直後。
ほほ笑みから満面の、それはそれは嬉しそうな笑顔を向けられて、「あぁ、本当に食事に誘われただけだった」と理解して安堵した。
この方が同期でちょっと良かったなって思える瞬間だった。
あと、本当にルイス・ルーベンス様が一緒で良かったなって思えたのは、その行動力と思い切りの良さだった。彼が隣にいるだけで、自分ひとりの時より物事がスムーズにポンポンと進む。
食堂に居合わせた騎士団の先輩に使い方を教わり。食事は自分で取るスタイルなので、お盆の上にボリューミーに乗せられた皿の数々をたいらげ、なぜか今、城下にある服屋にルイス・ルーベンス様と一緒にいる。
そう。ぼくの唯一の同期はよく喋る、押しの強い、行動力のある方だった。
仕事で使う制服のサイズ合わせが一番急ぎですから、このあと行きませんか? と、言われて。そんなことを思い至らなかったぼくは「はい」ってまた何も考えずにうなずいたら、ルーベンス家の馬車にご一緒していた。徒歩だったので助かった。
文具などは既製品を買えば済むけれど、直しが入る洋服類は確かに日数がかかる。
ゆったりした王宮指定のローブに、ルイス・ルーベンス様のススメで式典用の方に合わせ、小物類や靴も注文した。
ざっくばらんなショートボブのぼくのピンク色の頭に、店員さんとルイス・ルーベンス様があーでもない、こーでもないと真剣に髪飾りをつけてくれる間。じっと大人しく、こそばゆい気持ちで耐えていた。
何ならいつ買ったか疑問の残るお菓子のお土産まで持たされ、次の約束まで取り付けるくらい、距離詰めてくる感じだった。
それを違和感なく行える爽やか笑顔とスマートさを、ぼくも同期に対して見習わなければいけないのかも知れない。
王立学園にある学生寮の荷物をまとめながら、そんな事を考えていた。
明日の午前中は引越し作業。
午後はルイス・ルーベンス様あらため、ルイス様と細々したものを買いに行く予定。
近場にパンケーキが美味しいと評判のカフェがあるらしく、そちらにも行ってみたいらしい。
ちなみに。騎士団の食堂で食べた昼食は、ボア肉のブラウンシチューがお肉も野菜もゴロゴロで食べ応え満点で幸せだった。明日も楽しみだ。
次回
「2.パスタも食いたくありません?」
リリィは魔術科の高等部を、ルイスは騎士関係の上位部(専門学校と大学の中間みたいもの)を早期卒業しています。同じ王立学園内。




