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すでに精一杯輝いている俳優が、歌も唄うのですか?

ほとんど学校へいけないリョウが留年しないのは芸能活動が単位に認められているからなのだが、

国際俳優になるだろうリョウのためには英語は大学生並みにしておいて損はない。


サンアントニオのテキサス大学で学んだユウコの専門科目は英語なので、

本人も知らないうちに気づけばTOEICスコアが上がっている、というような内容で英語で会話をしたりスペルをスマホで書かせたりアメリカ人が使う俗語のidiomなどを暇があるとリョウに教えている。


リョウがスポンジが水を吸うように知識を入れるのは台詞覚えの習慣からだと思えるが、

基本的な文化の違う国のコトバを覚えるのには摩擦が少なくおおいに適していて、本当に素直だと感じる。


ただ心配なのは、

リョウ自身の人間形成はどうやって積み上げていくのかということで、

我が儘や自己愛を出すことがあまりに無いものだから、

ユウコにはリョウが潰れて消えてしまうのではないかと不安になることもあるのだ。


学校から戻るといつもリョウの表情は暗い。


ユウコが臨時担任の時は、

他の生徒とかけ離れて仕事が多く忙しいリョウは性格上、烏合の衆には入らないし、

他の生徒もリョウを遠巻きにして話しかけないので体のいい嫉妬から来る虐めのような空気だった。


リョウは小学生の頃から普通の子とは違う、有名人というはずせない仮面を付けたまま生きている自分と、

いつも一人きりで向き合ってきているので、

役の中でしか大声で笑えないし怒れないままずっと生きてきているという異様な状態へのストレス解消法もないまま、

次々と入る仕事に取り組まなければならない日常が続いてきているのだ。


ある日マネージャーのスドウが、

事務所から今一度売り出したい21歳の女性タレントとの恋愛関係捏造の相談と唄の仕事を持ってきた。


リョウが女の子にまるで興味が無いことに気づいているのかもしれない。


リョウは今回も何でも快く受けてしまうが、

もし熱愛記事のために世間の興味の目が強くなるとユウコとの入籍も表に出てしまうのではないか、とか、

内緒の結婚も話題として使っても良いと思われているのかもしれない、などと、

事務所の思惑が測れない妻のユウコにはとりあえず唄のレッスンに通うことに賛成するしかなかった。


俳優に入れ込みたいリョウに、

音痴でない器用な程度の歌を唄わせるということは、結果次第でミュージカル出演が想定されているのかもしれない。


ブロードウェイに何度も行っているユウコには世界レベルの歌とダンスが目に浮かび、

またリョウが利益を得る大人たちの思惑で固められた場所で、身体と心の限界を越えるレッスンを受け入れて進んでいかなければならないのではないだろうかと心配になり、

同時に妻の自分は若いリョウの挑む限界への飛躍を止めてしまうかもしれない存在になって良いのか、と悩み始めていた。

















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