第51章
八回まできた。相手チームは五番上本から。下位打線に打力はないが、苦手な左打者が二人いる。ここが踏ん張りどころだ。リズ、頑張れ。
上本は二球目のチェンジアップを叩いて中堅へ、蘭ちゃんがゴロを弾いてワンヒットワンエラーで二塁へ。完全にチェンジアップが読まれている。やはり癖を見抜かれているようだ。
リズはチェンジアップの時だけ腕の動き全体が小さくなる。それがわかりやすい右腕のグラブで言えば、脚を上げてから前へ出る際に、速球では肩のラインまで上がるのにチェンジアップは胸のあたりまでしか上がってこない。
なかなか修正が難しかったので愛ちゃんとも相談したが、この程度の違いなら実戦で使えるだろうという結論だった。ただ、今はその癖があまりにも顕著に出てしまっている。
「タイム」僕は愛ちゃんを呼んだ。防具に身を包んだ愛ちゃんは、やっぱり存在感があって頼もしい。
「愛ちゃん、チェンジアップがばれてる。もう修正は難しいな」
「うん……さっきから何回か言ってみてるけど、試合で直すのは無理だね」
「下位だし、速球だけでいけると思う?」
「あたしはもうちょっとリズを引っ張りたい。って言うより、舞には休んでてほしいから」
「わかった。もし同点まできたら、姉でいく」
「了解っ」
愛ちゃんは笑顔で主審とチームに声をかけた。二点差、下位は何としても抑えたい。




