第28章
相手のスタメンを確認。
一番 中 牧田
二番 遊 小野寺
三番 投 森田
四番 一 中井
五番 捕 上本
六番 二 伴
七番 三 赤岩
八番 左 岡本
九番 右 松居
こちらの練習時間。ノックは簡単な打球でみんな調子を確かめたが、蘭ちゃん以外は正常に動けている。蘭ちゃんだけは空回りしているが、まあフライの落下点を行き過ぎるのが蘭ちゃんの芸みたいなもんだし別にいいだろう。
相手の練習を見ると、やはり投捕一遊中あたりを経験者で固めている。その他もまあ全員男だし、野球の動きは一応できている。
投手のリズと姉の調子、そして相手次第だな。うちの投手二人が本調子なら、遊びレベルのチームが打ち崩すのは難しいとは思う。ただ、冷静に弱点を突いてこられるとまずいだろうな。
「えーでは、これより村上マイチャンズと坂上大野球サークルの試合を行います。礼っ」
整列して近くで見ると、相手の背番号一、森田は思ったより大きかった。百八十センチ前後か。ただ練習で見た投球フォームは横手に近く、高さは感じなかった。それと今更になって突っ込むが、うちのチームは名前からしてワンマンだな。自分の名前そのままかよ。
うちが全員、定位置についてボール回しと軽いノックで最終確認。右翼からでも姉の声はやかましい。しかし、その声かけのおかげで全員の緊張がほぐれているのも事実だ。姉は味方だと心強すぎる。喧嘩すると鬼になる。
ノックが終わり、僕はスタメンを外れた双子とベンチに戻ってきた。マウンド上のリズがコンパスみたいな長い脚で足元を蹴っている。ちゃんとしたマウンドは初めてだと思うが、投球練習を見る限りは大丈夫な感じだ。
「プレイボール」
主審の宣言で、相手の一番、牧田というチャラ男が右打席でバットを構えた。体を思いっきり開いて立っているが、挑発半分だろう。構えは無駄に大きいし、あの姿勢からまともな打撃ができるとは思えない。
「リズ、遠慮なくいけよ」
僕が声をかけるとリズは遠足の日の小学生みたいな笑みを浮かべてこっちにウインクし、プレートに足を置いた。顔は俯き加減に右脚を高く蹴り上げる。球速とコントロールを共存させるために工夫したフォームだ。
勢いよく前に体重を移動したリズは、愛ちゃんがミットを構える内角へ腕を振った。甲高い捕球音が響く。
「ストライー」
「げっ、普通に速いじゃん」牧田は大きく体を仰け反らせて打席から一旦離れた。あれだけ舐めてたら、驚くのも無理はない。
やや抑え気味の百十キロ程度だったろうが、インハイにうまく決まった。強烈な印象を残したはずだ。
相手ベンチの野次も驚きが半分で、表情が少しは引き締まったように見える。リズはフルカウントまでかけたが、牧田を捕邪飛に打ちとった。
続く二番の小野寺が右打席。小野寺は真剣そのものだった。バットを揺らし、小刻みにステップしながら構える姿を見た時、僕はこの人と対戦したことがあるのを思い出した。中学時代だった。彼は引っ張るのが上手く、強打され三塁線を抜かれた記憶がある。
「引っ張り警戒、前田、桐谷さん、集中して」




