第26章
みんな練習に熱が入り、僕も監督に指名されただけあって全力でチームをまとめようとした。試合形式のケース練習を増やした。みんな自主トレやルールの勉強をしてくれているのがはっきりわかる。
内野は一塁、三田村の捕球が劇的に良くなっていて、ワンバウンドもうまく掬い上げてくれる。元々まったく球を怖がらないし、上手くなると思ってはいたけど。これで二遊間が安心して、思いきった送球もできる。いい流れだ。
外野も蘭ちゃんの成長が目覚ましい。とにかく速いので、打球に対して行き過ぎてから戻って捕球するくらいの反応。しかし長谷川は万能だし、リズの身体能力も高い。これだと双子に外れてもらうことになるか……
試合まで最後の練習日。僕はスタメンを発表することにした。
一番 遊 佐伯美嘉 右投両打
二番 二 桐谷薫 右投右打
三番 三 前田小百合 右投左打
四番 右 村上舞 右投右打
五番 捕 伊藤愛美 右投右打
六番 投 秋山リサ 左投両打
七番 左 長谷川遥 右投右打
八番 一 三田村瞳 右投右打
九番 中 早坂蘭 左投左打
「沙織、詩織。二人は……控えに回ってもらう」
「拓ちゃん」
「拓ちゃん」
「何だ?いいよ、思うことを言ってくれて」
「拓ちゃんもう、気い遣いすぎやねんから。あのな、うちら、それでいいと思ってるで」
「せやで拓ちゃん、そんな、悲しそうな顔せんといてーな。うちら、いっぱい声出すし、いつでも代打の準備しとくで」
「……ありがとな」
「えへへ、うちら、このチームで野球できて十分楽しいねんで。ほら拓ちゃん、そんなんで泣かんときや」
「わー拓ちゃん泣いてはるー泣いてはるー」
「こら泣いてねえよ、いい加減なこと言うな」
「タクマ、ありがと。私スターターねっ」
「うん。いけるとこまで投げてもらう。合わせられたり、乱れたらすぐ姉と交代する。もし三点以上ビハインドになったら、俺が投げるかな」
「えー拓、うちは女の子だけっていうのが売りのチームなのに」
「あれ、俺って監督じゃなかったっけ?選手起用は監督が決めるよな?」
「ふにゅう……圧倒的大差で勝つからいいもん、貴様の出番はない。んーっ」
姉は頬をふくらませて拗ねていた。幼稚園児か。




