第13章
僕らはみんなから少し離れたベンチで練習を見ながら、反省会。
「姉、もう全力で動くの禁止な」
「うう、だって……」
「禁止な。き、ん、し」
「ごめんなさい。……だって拓が一生懸命投げてきてくれて嬉しかったんだもん」
「反省してないだろ」
「反省はしているが、後悔はしていない」
「……はあ」
いつだって僕は姉に勝てなかった。たまに勝っても、また負けるまで勝負させられた。
そんな無敵の姉に、アキレウスの足首の如き破綻が訪れたのは一年と少し前。ソフトの全国大会、最後の夏、姉が走者で、本塁でクロスプレーになった。捕手と交錯した姉は、決勝点と引き換えに右膝の靱帯を断裂。姉の選手寿命はそこで潰えた。
「……俺が代わってやれたらなあ」
「こら。何てこと言うの。お姉ちゃんはね、拓がこれからも活躍してくれるほうがずっと嬉しいんだから」
「ちょっと膝、見せて」
「え、い、いいけど」姉はストッキングを捲り、膝を出した。
「いや、両方。比べてみるから」
「あ、はい」
「……やっぱ腫れてるな。ここ痛い?」
僕は膝の少し上、太ももの内側を指で軽く押した。
「あぐっ、う」
「あ、ごめん。そんなに?」
「や……あ、もうだめ、いじめないで」
「おい、変な言い方すんなよ」
「びっくりするほど痛かったお」
「姉、医者に言われたストレッチ、サボってるだろ」
「ぎくっ」
「サボってるだろ」
「たまに気が向いたらしてるもん」
「じゃあ最後にやったの、いつだよ」
「……ごめんなさい」
こいつは本当に、いつまでも自分が不死身だと思ってるからたちが悪い。考え方が昭和のプロレスラーに近いな。
「じゃあこれからは、ちゃんと毎日ストレッチしような」
「え、んー……はい」
「……俺がやってやるから」
「ほんと?わあ、拓大好き」
「自分でやるのが面倒なだけだろ」




