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ドラムの屋敷にて 4

申し訳ありません。

予約を間違えていました。



開けて翌日の早朝、ドラムの屋敷にて一番早起きなメイが身支度を整え、朝食の用意の為に屋敷の裏に広がるベスの畑に行くと、そこにノイエとベスの姿があった。


「ノーちゃん、どう?気持ちいでしょ?」

「はい、空気もひんやりと涼しくて心地いいです。」

「ふふ、そうでしょ。あ、そこの赤い実はもう食べられるわよ、捥いでみて!」

「これですか?」

「そう、他の実に触らないように、そう、その実をゆっくりと回して、上手よ。ノーちゃんは才能あるわね!」

「あ、あの、ほんとに取ってしまって大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。あれ?もしかして、野菜嫌い?ありゃ、しまった。じゃあ、鶏でも絞めてみる?」

「い、いえ、野菜は好きです。でも、いつも料理された物しか見たことなくて、こんなに大きくて硬いのですね。」

「ん?ノーちゃん、そんなサービスいらないわよ?」

「?」

「あー、天然か、ごめんね、変なこと言っちゃて、よし。じゃあね、もう一つ初めての体験してみよう!その実をそのままガブってかじりつこう!」

「このままですか?あの、ここで?」

「そうよ!そのまま!大丈夫!いつも食べてるものと一緒よ。」

「で、でも」

「3,2,1!ハイ!」

「は、はい!」

「どう?お味はいかが?」

「あ、…、…、美味しいです。」

「そう、よかった。無理してない?」

「…、いえ、本当に美味しかったです。」


おもわず、二人から見つからないようにメイは身を低くした。幸いにも、周りにはメイの身を隠せる程度に、葉が繁っており、メイは二人に見つからずにいた。

久しぶりに見るノイエ様は白かった肌がさらに青白く、長く美しく伸びた青みを帯びた髪も何処か色が抜けて、体調の悪さが伺えた。


しかし、そんな不調な状態でも、ノイエはとても楽しそうに笑いながらベスと共に畑の中を歩く。その様子をメイは隠れていながらも、チラチラと覗きこむ。

やがて、ベスがそんなメイに気づき目配せをする。メイは観念して、ゆっくりと二人に近づく。未だにこちらに気づいてないノイエに向かって少し離れた位置から大きな声であいさつした。


「おはようございます。ベス様、ノイエ様」

「!?」

「はい、おはよう、メイちゃん」

「メイ、いきなり驚かさないでよ!びっくりしたわ!」

「申し訳ありません。お二人が楽しそうに会話されているので、なかなか機会をうかがえずにおりました。」

「ノーちゃんは驚いた顔も、怒った顔もかわいいわね。」

「…、いえ、そんなことは、ありません。」


ベスがメイの存在に気づき余裕を持って対応できたのに対して、ノイエは急なメイの登場に驚き、つい声を荒げる。ノイエのそんな年相応な姿をベスはかわいいと褒めた。

ベスは素直な気持ちで言葉を出したのだが、かわいいと言われてノイエは表情を曇らせた。


「ノイエちゃん」

「はい」

「かわいいは嫌い?」

「…、いえ、その、私はかわいくはありませんから」

「ノイエ様はお可愛らしく、お美しいです!」

「メイ!やめて!」

「ふふ、ノイエちゃんはやっぱりかわいいわ」

「…、違います。」


「ここの畑はね、昔はただのだだっ広いグラウンドだったの」

「はい?」「そうだったのですか?」

「そうよ。ここって昔は騎士団が使う練兵所であの屋敷もその時のものを使っているから、今風じゃないでしょ?」

「はぁ、そういえば」「そうですね」

「旦那様が爵位を頂き、王宮に出仕するようになってこの場所を拝領したのだけど、ほんとに初めは全くかわいくなかったの。」


ベスは2人に昔話を始めた。


元々、ドラムもベスも冒険者として様々な土地を旅していた。ひょんなことから貴族となり王都に居を構えることになり、ドラムの為にベスは貴族としての立ち居振る舞いを学び、貴族の社会に入ろうとした。


しかし、そこは厳しい世界でもあった。貴族として王宮での仕事を懸命に熟すことで評価を受けられるドラムと違い、出自が平民であるベスは努力でどうにもできないもので差別され、それでも、ドラムの為にと耐えた。


やがて、ドラムが正当な評価を受けて様々な役職を拝し、そのドラムに取り入ろうとする者がベスに声をかけるようになる。


相手をおだて、媚入り、褒めたてる嘘の世界にベスは体調を崩して屋敷に閉じこもる。暇な日々を過ごすベスは、かつて二人が冒険者として各地を回った時に手に入れていた珍しい植物の種の存在を思い出し、暇つぶしのために屋敷の裏手の花壇で始めて種を植える。


はじめは、綺麗な花を見たかった。しかし、芽は直ぐに生えてはこず、やがてベスは飽きてしまう。忘れた頃に、そこを見るとに小さな白い花が咲いていた。

また、ベスはその花を構いだすが、花はそのうちに枯れてしまう。また、種を植えて同じように花を育てるが、季節が変わり芽が出ても成長することはない。

今度は、ベスが飽きて投げ出すことはなかった。農作業に詳しいものを招き、勉強してイメの大きな畑を作りだした。


「でね、」

「あの、申し訳ありません。私はお食事の用意が、ノイエ様、」

「ああ、メイちゃん、残念ね。続きは後で話すわね。ノイエちゃんはまだいいでしょ?」

「はい。」


ベスの昔話はとにかく長い。メイは何度もタイミングを伺い、ようやく一呼吸を取る間に脱出に成功したが、ノイエまで救い出すことができなかった。

真面目にベスの話をはじめからうんうんと頷きながら聞くノイエはメイの救いの手に気が付かなかった。


ノイエには愛する人の為にと頑張ったかつてのベスの話や、知らない農作業に悪戦苦闘しながらやがて実を結んだ話はとても面白かった。

ギクリも自分の話をここまで一生懸命に聞いてくれるノイエが愛らしくなり、更に話を続けようとする。

そもそもの本題を忘れ、すでに1時間以上も脱線しているのだが、二人の女性の話は終わりそうもない。


「お食事ができましたら、お呼びしますので、あの、お体は大丈夫ですか?かなり冷えますし、一度屋敷に戻られても?」

「あ、そうね、ノ―ちゃん、続きは部屋で話しましょ」

「はい。ベス様」

「さあ、行きましょ!」


メイは病み上がりのノイエが朝露で体を冷やして、また体調を崩すのを心配していた。なんとか、一旦、話を切り上げさせて2人を屋敷に戻らせる。



屋敷に戻り、ベスとノイエは二人仲良く会話しながら部屋の前に着くと、そこにギクリと寝間着姿ヒノクが立っていた。

「なにしてるの二人とも?」


ベスは訝し気に二人に問いかける。

「?!、え、ノイエちゃん?あれ、部屋にいるはず、」

「…、ノイエ、あれ?なんだ出てきたの?じゃあ、ほら口開けて、ほら、アーん」

「え、お婆様、やめ、」


ギクリは明らかに動揺しているし、ヒノクは寝ぼけているのか後ろから現れたノイエを不審に思わずに診察を始める。

外の異変に気づいているのかいないのかノイエの部屋から、ノイエの声で返事がされる。


「あ、あの、ほんとに体は大丈夫なので、お二人とも戻られては?」

「悪魔ちゃん、ただいま!部屋開けて!」

「えっ!?ちょっ、まって、」

「…、悪魔、騙したの?」

「ちがう、待って、あ、あの、平和の為に、」

「はい、じゃあ次は、おなかを見せてね、お手々を上に、わーい」

「お婆様、起きて、起きてください!」


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