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英雄譚  作者: 枕木きのこ
9/9

キュウ

 あとに残ったのは、首から上と片手を欠損した死体と、どう行動すれば良いのか迷い、呆然とする人々だった。

 僕は教祖の前に跪き、

「能力を持っているのはこの男ではなく、僕のほうでした。これからはあなたに従いましょう」

 言葉を献上する。

 信念もなく、ただ闇雲に悪を倒さんとすることは、英雄のすることではない。まして男のそれは、復讐にほかならない。

 明確な目的があり、それに向かい敵対するものを排除する。それこそが、英雄であり、正義である。

 男は果たして、この教祖を打ち倒したとき、日本の人口のうち半分以上も居る信仰者たちをどう鎮めるつもりだったのか。彼を殺してしまった場合、僕たちも間もなくあとを追うことになっていただろう。それは、男にとって「この宗教を破壊する」という目先の一点にしか着地点がないからだ。教祖の掲げる信念に成り代わるものを、彼は持っていなかった。そんなものについていく人間は誰も居ない。

 あるいは、畏怖していた者たちにとっては、それは救いに映ったのかもしれないが、そんなちっぽけな綺麗事で社会がひっくり返るほどは、易しい世界ではない。まさしく転覆させるには、日本の半分をも手中に収めんとする、力と、カリスマ性が、必要なのだ。眼前のこの男には、それがある。事実、もうほとんど、できているのだ。

 皮肉な話だ。

 親に捨てられた僕が、僕を捨てざるを得ない状況に両親を追いやった今の社会を、許すわけなどなかったのだ。転覆と再生を、望まないわけがなかった。それを、見抜けずに能力を与えてしまうとは、無様極まる。

 この力では駄目だ。それが僕の思い至った結論である。

 ヒーローは必要だが、僕にとってのそれは、僕自身ではない。

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