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天使に変身  作者: だあ
2/5

天使に施し (1)

■あらすじ

主人公のAは家賃を取り立てられていた。

Aは無職。金に困っていた。

ある朝起きるとかわいい天使に変身していた。

そこへ再び取り立ての人がやってきた。


■登場人物

A

・30歳、無職、男性

・ある朝、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身

・主人公

1


「Aさん、いますかー?家賃ちゃんと払えますかー?払えないと今度こそ追い出しますよー!」

女が取り立てにやってきた。

女の名前は金取リツ(かんどりりつ)と言う。

リツは17歳、女子高生。大家の孫娘であり、大家の手伝いのアルバイトをしている。

大家の仕事の一環で、家賃を取り立てに、Aを訪ねて来た。


玄関扉の向こうから、リツが彼を威嚇する。

しきりに玄関扉を叩き、その音を部屋中に響かせる。

しばしば「まだですかー?」とか「居るのはわかってますよー」と怒鳴りつける。

一方で、彼は天使の少女の姿に変身してしまった。

謎の輪っかが頭上に浮いている。

羽らしきものが背中から生えている。

着ているものはブカブカのTシャツ一枚だ。


鏡に映る自分の姿を観察していた彼は、リツの声に驚き、転んでしまった。

(どうしよう…どうしよう…)

リツの声はトーンを上げた。

「聞こえましたよー!いるんですねー!早く出てきてくださーい!」

彼は思わず叫んだ。

「すみません、すみません、今出ます!」

すると、威嚇の音がピタリと止んだ。

少しの間を置いて、リツの声がした。

さっきより少し優しかった。

「あの、大家ですけど、Aさんはいませんかー?家賃の支払いが止まってましてー。」


2


リツの態度が変化したことを察知し、彼は少し冷静になった。


(ああ、そうか。オレの声を聞いて、Aとは別人だと思ったのか。

そうだ、Aとは別人のふりをすればいいじゃないか。それで取り立ては乗り切れる。

今のこの姿で、オレがAだなんてバレっこない。)

彼はひとまず下に何か履くことにした。

タンスをあさってジャージを引っ張り出した。

ジャージを履いて、腰と裾のゴム紐を限界まで絞った。

(しかしこの状況…なんて説明すればいいんだ?)

リツの声がする。

「あのー、すいませーん。聞こえてますかー?」


どう説明するか、考えがまとまらなかった。

彼は考えるのをあきらめて、恐る恐る玄関扉を開けた。


3


扉を開けるや否や、

「え、何この子、かわいー!」

という声がした。

リツは彼に抱き着いた。

金属バットが倒れる音が鳴り響いた。

リツの髪の毛が彼の顔に当たった。

「く、くるしい。」

と彼がいうと、リツは彼を開放して

「ごめんね。」

と言った。

リツは彼が今までに見たことない笑顔を彼に向けていた。


リツは、活発な女子、という感じだ。

肌は少し焼け、肩くらいの黒髪を後ろに縛っている。

ジーパンとTシャツに作業エプロンをしている。

ポケットにはペンや定規が挿してある。

健康的な体つきをしており、いかにも運動ができそうだ。


リツはかがみ、彼の両肩に手をかけ、彼に訊いた。

「あなたは誰?Aさんはどこにいるの?」

彼は黙ったままだった。 

「ちょっとここで待っててね」


リツはAを探して、部屋の中に踏み入った。

残された彼はあっけに取られていた。

(相手によってこうも態度が変わるのか…)


4


リツが部屋を捜索する間、この状況でどう振舞えばいいか、彼は思案した。

(やっぱり天使ってことにした方がいいのか?)

(Aとの関係はどうしよう…)

(なんにしてもボロを出さないように説明するのは大変そうだな…)

ふと彼はひらめいた。

「そうか。説明できないなら、記憶喪失ってことにすればいいのか。」

声が出たのに気づいて、彼は口をふさいだ。

部屋に誰もいないことを確認すると、リツは彼のもとに戻ってきた。


「あいつ、逃げやがったな。」

恐ろしい口調に戻っていた。

リツは彼の方に向き直って、表情を直して、また屈んだ。

「あなたは誰?何者?Aさんのことを知らない?」

彼は首を横に振った。

「ごめんなさい。私何も覚えてなくて…」

「どういうこと?」

「今朝気が付いたらここにいて、自分のことも、Aさん?のことも覚えていないんです。」

「そう…」

リツは立ち上がってそっぽを向き、首元をかいてため息をついた。

「どうしたもんかな」

リツは彼の方に目をやった。

「えーっと、服はどうしたの?」

「これはその、何も着てなかったので、勝手にお借りしちゃいました…」

リツは屈み、彼の頭に手をのせた。

「とりあえずその格好を何とかしなきゃね。うちに来て。」

彼はうなづいた。


彼にまともな服をあてがうため、リツは彼を連れて金取邸に向かった。

彼はやはりあっけにとられた。

ちょっと会話しただけで、他人から服を手に入れた。

元の姿ではあり得ないことだ。

彼は決心した。

そのかわいらしい見た目をフル活用して生きていくと。

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