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緋華の追憶  作者: 浦 かすみ
黒き龍

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番外編 上手い話には裏がある

番外編です。次話から本編に戻ります。


丙琶から燦坂に一度戻って来た時に、霊術師団の事務員さんに、私が提出した新術に関する書類があるから取りに来てくれ…と言われたので霊術師団に緋劉と一緒にお邪魔した。


霊術師団の詰所は軍の詰所とはまた違って、お香の匂いや、怪しい匂いがする…若干怖い建物だった。


「何か怪しいね…変な匂いがする」


「うめき声とか聞こえないか?あれ術の練習かな…こえぇ…」


コソコソ二人で話しながら建物内に入ると、すぐ横に事務室と書かれた看板が上がっていたので、コンコン…と手で扉を叩いてから


「特殊遊撃隊の彩 凛華小吏、入ります」


と声掛けしてから中に入った。すると事務室内に居た数人の方が一斉に私を見た。な、何?


「いや~~待ってたよ!君が噂の彩 凛華かい!?」


横にも縦にもドーンと大きいオバちゃん…と言っていいのか分からない年齢不詳のオネエサン?がドスドス…と走って来て私に突撃した!


「つ、潰れるぅ…!」


「りっ…凛華!」


オネエサンの圧から庇われるように緋劉に抱きかかえられて、圧死を覚悟する。緋劉と一緒に死ねるなら本望だぁぁ!


むぎゅうぅぅぅ…と緋劉越しのものすごい圧迫を感じる。ぐるぢぃぃ…。


「あらやだっ…若い男の子ごと抱き付いちゃったわ…でも役得!」


おいっ…オ…ネエサン…私達を圧死させる気かっ!


「彩 凛華は霊術師団に入団してくれると思ってたのに軍に行っちゃうんだもんなぁ~。まあいいか~こうやって新術の開発してくれてるしね!あ、はい。これね~新術の認定書と契約書」


「契約書…」


オネエサンから冊子を受け取って緋劉と二人、案内してもらった待合室?の長椅子に腰かけた。


緋劉が冊子を読み始めると、オネエサンはまあまあ大きい籐籠を持って来た。


「はい。これが今月の提出分ね~締切は二十日後よ」


締切?何?…と、籐籠とオネエサンの顔を交互に見ているとオネエサンは小首を傾げた。


「あれ?知らない?新術って申請して受理されれば報奨金が毎月支払われる代わりに、その術式を規定数式紙に描いて納めないといけないのよ?だって報酬が渡されるのに、対価が無いはずないじゃない?その描いた術式を霊術師団(うち)が販売して利益を上げるのよ?あなたの新術は汎用性が高いから、その分報酬も高額じゃない?」


「嘘…」


「ホントだ…ここに書いているよ、凛華」


緋劉が指差す契約書の冊子の一文を慌てて見た。確かに、確かに書いてある…!


オネエサンはニッコリと微笑んだ。


「もし毎月この術式を描くのが嫌だ…てことならば新術の権利を放棄…てことで買い取らせて貰うわよ?その代わり報奨金は一年分だけね」


「あくどい!」


「すげえぇ!」


私と緋劉の声が重なった…。すごい商売魂だ…いや、この術に関する規定を決めた役人の方がすごいのか?


術式は誰もが使えるものではない。ある程度の霊力が無ければ式紙の媒体無しでは発動しないのだ。


私や禁軍の凱 霧矛様や李 洸兌様ぐらいの霊力の持ち主なら紙媒体無しでどんな術でも使うことが出来るが、普通の術者や一市民などは術式を描いた式紙がないと使えない。


その為に私の描いた術式紙が売れるのだ。


「どうする?」


緋劉が聞いてきた。答えは一つだった。今、権利を失って一時金を頂いても、生涯貰えるであろう報奨金を棒に振るにはあまりにも勿体なさ過ぎる…。


「術式描きます…」


「はーい、毎度あり~。じゃあ契約成立ってことで、こっちのココとココに署名してね」


何たること…世間の厳しさが骨身に沁みるわ…。


「ところで、彩 凛華さん」


問いかけられて顔を上げると、オネエサンの横にオネエサンとは対照的なほっそい体のおじさんが立っている。すごい対比だ。


「君は何か他にも術式を持っているとか?」


「い、いえいえ~もうこれ以上はありません!」


「…ほんとに?」


「本当にです!はい!」


署名をして籐籠を受け取ると緋劉と急いで霊術師団の詰所を飛び出した。


籐籠は重いので緋劉が持ってくれている。私は、籐籠に重力を軽減する術をかけた。


「え?何?こんな術もあるの?…凛華…」


緋劉は私の手を取って歩きながらじっとりと睨んでくる。


「さっきさ、霊術師団の人に新術はありません!とか言ってたけど、こんな風にさ…。まだ隠し持ってるんじゃないの?」


籐籠を手の平の上に置いて見せてきた緋劉に、私は目線を合わせずに…さあ?とだけ答えた。


「ふ~んまあいいか。でも便利な術は出し惜しみしないで登録すれば?勿論お金にもなるし…それでもって色んな人の役に立つしな。それに…式紙描くのが面倒くさいなら俺も手伝ってやるし…」


「本当?手伝ってくれるの?じゃあ…霊術師団に提出する…」


緋劉は優しい笑顔を向けると、私の手を引っぱって歩き出した。


ああ、本当に緋劉は優しいな…。私この人のこと本当に好きだな…。


「緋劉…ありがとう。大好き…」


緋劉は足を止めると私を顧みて…そして空を仰いで目を瞑っていた。何してるの?


おまけに空を仰ぎながら小さく何か呟いている?ソッと緋劉に近づいた。


「なんだっくそっ…めっちゃ可愛い…くそ…あぁ…我慢我慢…ここは我慢だ…。耐えろ俺…」


私は無防備に上を向いている緋劉の綺麗な横顔を見て…悪戯したくて背伸びをすると頬にチュッと口づけをしてすぐ離れた。


「緋劉~いつまでも固まってるなら先行くよ!」


緋劉が籐籠を地面に落とした音が後ろでしたけど…構わず歩き出した。


「り…っ凛華!おいっ…今の…おいっ!?待てよっ…。嘘だろ~~!」


とか何か叫んでいたけど…うふふ。


術式描き起こすの面倒だな…と思っていたけど緋劉と一緒に描くのならそれも楽しいかな?



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