【第13話】ヴィクトルぶちギレる
アリアがリアをすぐに治療したとは言え、かなり血を失ってしまったリアはそのまま気絶してしまった。
そして、教会じゅうを探してもティエサの姿は何処にも無く、残されていたのはティエサが着ていたはずで、魔族特有の青い血に染まった制服と愛用の杖だけで、それが示すところはつまり―
「うそでしょ…?
ティエサちゃんが…死んだ…って…?」
「・・・だが、魔族は死ぬとコアになると聞く。
そしてコアは帝国で高く売れるし、帝国の技術は魔族のコアを使うのが主流だ。
つまりティエサは―
「やめろっ!!」
「やめなさいっ!!」
「…すまない。」
悠希とアリアに言われたアステルは自分の失言に気付き、頭を下げる、が、悠希は怒りを顕に立ち上がる。
「僕は姫様を…ティエサちゃんを追いかける。」
「待ちなさい、悠希君。」
「…僕はティエサちゃんの居場所が分かるんだ。
だって…魔族勇者だもの。
だから僕はティエサちゃんを連れ戻す。」
「だから、待ちなさいって言ってんのよッ!!」
「ウグッ…!?」
アリアはそれだけ言って出ていこうとした悠希の足を銃で撃ち抜いた。
倒れ込んだ悠希にアリアは詰め寄る。
「私の弾丸一発さえ避けられない今の貴女が行って、なんになるって言うのよ…!犬死にするだけだわッ!!」
「だから…どうしたって言うのさ…。
僕が行かなきゃ…勇者の僕が…。」
「勇者…?笑わせないでッ!!」
そう言ったアリアは、語気とは裏腹に涙目だ。
そんなアリアは悠希に治癒術をかけながら、暗い目で続ける。
「あのね…私は貴女みたいな無謀な特攻をして散っていった兵士を沢山知っているわ。
前世では…勿論魔法何て無いから今みたいに足を撃ち抜いてでも止めて、魔法で治したりなんて出来なかったし、
私自身にも狙撃と工作以外に取り柄なんて無かった…。
だから私は死に行く兵士を見送るしか無かったのよ…。」
でも…
とアリアは続ける、その瞳には力強い意思を宿して。
「今の私なら、違う。
兵士を見送るんじゃなくて、共に戦い、生きて帰してみせるわ…!
ティエサちゃんだって…!!」
「…!」
…と、アリアが言葉を切った所で悠希達の脳内に声が響いた。
『聞こえてるかテメェ等!』
「…ムッ…この声は…
「ヴィクトルさん…?」
「え…でも…声色的に女の子ヴィーでしょ…?
何で…??」
『どうやら繋がったみてぇだな!!
良いかよく聞けテメェ等!!
俺様は今からサクラと一緒に姫様を傷付けやがった糞帝国をブッ潰しに行くッ!!
姫様は糞勇者をブッ殺して取り返した後、ルゥに預けたから安心しなッ!!』
「ティエサちゃん生きてるの!?」
『おうともさ!かなりヤベェ状態だがなッ!!
ユウキはどうするよ!?ノエル連れて一緒に殺るか!?』
「…当然だよ…!
あんなに良い娘なティエサちゃんを、私欲の為に殺そうとした帝国なんか…滅ぼしてやる…!!」
『っしゃ!!決まりぃぃッ!!
行くぜ皆ッ!!』
『オォオォオー!!』
「おーっ!!」
「…って待ちなさい悠希君ッ!」
喜び勇んで出て行こうとする悠希を、アリアは腕をつかんで引き留めた。
止められた悠希は不服そうだ。
「何!?僕はこれからヴィー達と帝国をブッ潰しに行くから邪魔しないでよ!!」
「何馬鹿な事を言ってるのよ!?
貴女、帝国民ってだけで罪の無い人達まで殺すつもりなのかしら!?」
「その帝国の意思の象徴である勇者が僕等の魔王様や沢山の罪の無い魔族達を殺して、更に姫様を傷付けたんだから当然の報いじゃないかッ!!!
それとも、『それじゃあ復讐の連鎖だ』何て陳腐で偽善な説教でもするつもり!?
だったら僕等は指を咥えて泣き寝入りしてろって言うの!?
所詮、魔族じゃないキミ達には事の重大さ何て分かんないよっ!!」
「そうじゃないっ…そうじゃないわよ…でも…帝国勇者達だって、私達と同じ日本じ―
「その同じ日本人である桜子をゲーム感覚で殺そうとしたのに!?
それに、そもそも僕だけを止めたって無駄さ!
もう僕達魔族は止められない!!」
「…悠希君…。
ううっ…どうして…こんな事に…。
私が…私達がやってきた事って何だったのよ…?」
悠希はそう言いきり、アリアの腕を振り払って出ていった…。
悠希の…いや、魔族の決起を防ぐことが出来なかったアリアは、その場に泣き崩れた。
そんなアリアを慰める様に、アステルが寄り添う。
「諦めろアリア。
こればかりは悠希の言う通りだ。
あの愚かしい国は、もう取り返しのつかない所まで腐敗してしまったんだ…。」
「でも…ね…それでも…。
帝国民は、何も悪くないのよ…。
オリジナルのクラウスと明日葉が…初代皇帝が造りたかった帝国は…こんな結末で終わる国じゃ…無かったの…
「…恨むなら、あの国を私利私欲の為に乗っ取ったライトリークと、奴に買収された腐った臣下達を恨め。
結局、遅かれ早かれあの腐った皇帝の腐った国は滅んでいたのだからな…。」
そう言いつつも、アステルも苦しそうな表情だ。
彼も頭では理解していても納得はしていないのだろう。
そんなアステルを、アリアは涙に濡れた瞳で、困った表情で見上げる。
「…アステル…。
私…何をすれば良いと思う…?」
「…。」
(クッ…その表情は反則だろう…!?)
「アステル…?」
「…あっ…ああ…。
なら、俺達に出来るのは1つだけだ。
せめて、約束通りにラズウェルとラスとフィー…彼ら3人だけでも王国へ逃がそう。」
「…分かったわ。
アステル、帝都の研究室へお願い。」
「…ああ。」
アリアは、諦めた様に力無くため息をつき、想いを振り払うと、決意を固めてアステルと共に帝都へと転移した。
今度は教会にしっかりと防御結界を張って。




