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【閑話】ある幸福な結末※ステラ視点

これは…私、『ステラ=ハーレスト』と、妻である『フレイア=イフリーテ=ハーレスト』がまだ高等部2年生だった時のお話し…。



その日、私はある場所に向かっていた。


大事な友人を…5歳の時からだから、もう12年の付き合いになる幼馴染みを迎えに行くためだ。






その幼馴染みは、心優しくて…臆病だ。


かつての彼女は、何時も自分に自信が無く、放っておくと勝手に劣等感に押し潰されてしまう…

そんな弱い女の子だった。



そして…そんな彼女にかつての『私』は愚かな選択をした。


そんな彼女を突き放せばどうなるか…

分かっていたのに突き放した。

そのせいで彼女は歪み、結果的に彼女の暴走を止めることが出来なかった私は、彼女を『処刑』の名の元に刺し殺した。


その時、彼女はどうしたと思う?


笑っていたのよ?

泣きながら…笑顔で…

私に向かって『ありがとう』…って…言ったのよ…?



私は、そんな結末を“知っている”。

だから、そんな未来を変えたかった。

結果として、彼女が孤独になる事が無くなった。


だけど、まだ問題は残っていたのよ…





「…っ!」


「アンタが…何で悪役のアンタがそんなに幸せそうなのよ!?」


「いきなり何ですの!?

私《わたくし》、貴女に何かしまして!?」




“最悪のシナリオ(私が親友を殺す未来)”を改編した結果、何故か私の親友《フレイア》は、怪しいお嬢様言葉で喋る、気の強い(様に振る舞う)女の子になってしまったのだけれど。


そのフレイアが、何故か女生徒に剣を突き付けられていた。


フレイアは驚きはしているが、泣いてはいない。

昔のままの彼女なら錯乱していたでしょうね。



「とぼけないで!!

ステラは!!アタシの味方であってアンタなんかの親友じゃないっ!!

なのに何でステラがアンタなんかにあんな優しい笑顔を向けているのよ!?」


「なっ…!?

貴女こそステラのなんなのですの!!

ステラは私《わたくし》の幼馴染みで恋人ですのよ!?

ですので私《わたくし》に対して優しいのは当たり前ですわ!!」



フレイアも女生徒も私に気付いていない様なので、そのまま気付かれない様に静かに歩いて近付く。

因みに、私は女生徒の真後ろから近付いている。



「恋人ですって!?

アンタ達は女同士なのにそんなはずが無いわ!!出鱈目言わないで!!

とにかく!!アンタはここで死ぬべきなのよッ!!」


「っ!?」



そう叫んだ女生徒が剣を降り下ろす…

その前に私は、彼女を突き飛ばした。



「させないわっ!」


「ステラ!!」


「大丈夫!?フレイア!」


「ええ!私《わたくし》はご覧の通り、無傷ですわよ!」


「よかった…


「なっ…なっ…何で…ステラがコイツを庇うのよ…?」


「何故ってそれは―ってえっ…?」



私は、改めて女生徒を見て…驚いた。

その女生徒は、私が前世でプレイしていた乙女ゲーム(女性向け恋愛シュミレーションゲーム)、『紅の氷花』の主人公だったのだ。


紅の氷花とは、

よくある中世風(?)の剣と魔法の世界が舞台で、

警察騎士を目指して魔法学校…『王立ウィンドル学園』に入学した主人公がイケメンと恋をするゲームである。

攻略対象は5人+α。


この国の王太子、

その右腕であるハーレスト家の長男で私の弟、

私の執事、

炎の貴族の長男でフレイアの兄、

闇の貴族の長男、

そして、私との友情ENDだ。


そのどのルートを選んでも私、『ステラ=ハーレスト』が主人公の親友ポジションとしてサポートし、

私の幼馴染みで炎の貴族の妹である『フレイア=イフリーテ』が主人公の邪魔をする。


原作ではどのルートでもフレイアは悲惨な最期を迎える。

例えば、王子ルートなら王子の怒りを買って、フレイアだけが炎の貴族の地位を失う。


炎の貴族ルートなら醜いオジサンの嫁にされ、

闇の貴族ルートなら暗殺される。


もっとも悲惨な結末は、私自身や私の弟や執事…つまりハーレスト家関係者のルートを選んだ時だ。


フレイアはどのルートでも、ステラの事が大好きで、そのステラを横から奪い去った主人公を恨んで恋路の邪魔をするって設定なのだけれど、この3つのルートでは…私…ステラが直接フレイアを処刑する…。


私や弟のルートならレイピアで一突き。

執事ルートなら氷魔法で凍死させる。



そのどの結末でも、フレイアは憑き物が落ちた表情《かお》で、健気に笑うのだ。

『わたし…どこで間違えたのかな…?

来世でまた会えたら…皆で仲良くしたいな―


と言い、レイピアで刺された時は、最期に、『ありがとう』と言う…


こんなに悲しい悪役は居るだろうか?

ステラもステラだ、どうしてこうなるまでフレイアを放っておいたのよ?

その上で全てを幼馴染みで親友であったはずのフレイアのせいにした原作のステラもある意味では悪役であろうと、私は思う。


…因みに、このゲームには続きがあって、全ルートをクリアしてからもう一度ステラルートを選んだ場合、主人公に対する妨害やイジメに関する計画が、実は全てがフレイアの兄、『シャルル=イフリーテ』の策略だった事、そしてそれらを全て妹のフレイアの責任にした、と言う事が判明するアフターストーリーが展開される仕様になっていた。


兄の目的は、主人公を巻き込んだハーレスト家の消滅だったそうだ。


フレイアの兄、シャルルは策略家だ。

つまり、どのルートでもフレイアは冤罪であり、シャルルルートの時のシャルルは、自作自演だった事を、フレイアの死後、手記を見た主人公(プレイヤー)とステラは知る事になるのだ。


その後、主人公とステラが協力してシャルルを追い詰め処刑し、『2度とフレイアの様な者をださない為にも、正義の警察騎士となろう。』と誓う…

のだけれど、死後、冤罪だったと分かっても、真の悪役を倒しても、結局フレイアは報われないままだ。


だから私は、ステラに転生したと分かった時に決めたのだ。


『絶対に最後までフレイアの味方で居よう』と。





私は、5歳の時に原作通りに彼女をいじめっ子から助けてから今まで、フレイアが拒まない限りは極力彼女の側にいた。

彼女の為にも友人を沢山つくった。

気付けば…気持ちを押さえられなくて恋人にしてしまったけど…///


その結果、彼女は明るくなった。

線の細い彼女はもう居ない。


今回の失態…彼女が襲われてしまった件での私は、そうやって安心してしまっていたのよ。

もう、フレイアが悪役になる事は無いって…



「それは何よ!?早く言いなさいよ!!」



いきなり驚いた表情《かお》で黙った私に怒鳴ってくる主人公…

原作だともう少し大人しかった気がするけれど。

結果的に、フレイアはこの主人公から私を遠ざけていた事になるのかしら…?

でも…今の私なら、フレイアの味方だと堂々と胸を張っても…良いわよね…?

私は、フレイア抱き寄せ、主人公に向き直った。



「そう…それは私が、フレイアの婚約者だからよッ!!」


「ステラ…!///」



それから私は、主人公に向かって、渾身のドヤ顔で婚約者宣言をしてやったわ。


だけど、そんな私達を見た主人公は、顔を侮蔑に歪ませた。



「はぁぁっ!?

キモッ!!アンタら女同士でしょ!?

どうかしてるわよッ!!」


「あら、この国では同性婚が可能なのよ?

ならば私達の様な百合カップルが居てもおかしくないでしょう♪」


それを聞いたフレイアも、イイ笑顔で同調してくれる。


「そうですわ!

私《わたくし》とステラは、真剣にお付き合いしていますの!!

それに、私《わたくし》は、もうステラに守られるだけの私《わたくし》ではありませんもの!!

貴女が私《わたくし》達の前に立ちはだかるのなら、こちらも全力でお相手させていただきますわよ!?」



そう言ったフレイアは、制服のスカートを小さく捲り上げ、脚に着けたホルスターからナイフを引き抜いた。

それを見た主人公は、今度は驚愕の表情《かお》に変わる。

それはそうよね、だってこの世界のフレイアは、私の父が教えた『投げナイフ』と、私の母が教えた『補助・支援・医療魔法』のスペシャリストなのだから。

原作での何も出来ない彼女とは、もう違うのよ。



「私は、貴女がフレイアを傷付ける気なら、フレイアの婚約者として貴女と敵対するわよ?」



私もフレイアと肩を並べてレイピアを引き抜いた。

そう…私が立つべき所は、ここ。

フレイアの隣なのだから。

それを見た主人公は、何やら指を空中でさ迷わせた後、再び侮蔑に顔を歪ませる。

…一瞬、『フレイアを斬れ』と命令された気がしたけど、出来る訳無いでしょう。



「…何で動かないのよ!?

こんな展開、絶対におかしいわよ!!

私は主人公なの!!

この世界は私の舞台なの!!

なのに何でアンタ達は思い通りに行かないのよ!?」



そう言って半狂乱になる主人公。

そこで私は、この主人公は転生者だと確信した。

正直、最初の言動で怪しいとは思ったけれど。


私は、7歳の時にとある事情で後天的に手に入れた魔眼で彼女を視た。




名前【フリージア=グレンドール】【女】

年齢【17】

種族【人間/主人公(転生者)】

┗道具効果上昇、魔法剣全習得、選択肢進行

└魔法剣全習得…『魔法剣』に分類される剣技を全て使用可能。

└選択肢進行…『魔術:選択肢』を使う事で相手の都合や思考・思想を無視して自分の思う結果や思考・思想へ変化させる、但し、対象の『意志力(こうしようと言う決意)』が強い(自分の意志力を上回る)場合等、『魔術:選択肢』が通用しない場合あり。


クラス【乙女ゲームの主人公(逆ハーレムマスター)】

┗異性に対する魅了(強制魅了可能)、キラースマイル

└キラースマイル…笑顔を見せる事で自分に対する負の感情を全て反転させる、更に意志力を強制的に0にする。



なるほどね…やっぱり彼女は転生者(チート持ち)…

しかもチート能力で人の運命を簡単に変え、自分のミスで向けれた恨みや怒りを…全部好意に変えて上手くやってきたタイプね…

勿論、これは私の思い込みかもしれない…でも、今の彼女の様子からして、あながち間違いでも無いかも知れないわね。

…と言うか…今は怒りやなんかで使ってこないけど、彼女に『キラースマイル』を向けられたら、私は…


いえ…私は…大丈夫、フレイアとの絆は、こんな物《チート》に負けやしない…!!



「貴女は色々勘違いをしているようね?」


「なにをよ!?」


「この世界は剣と魔法のファンタジーな世界だけれど、決してゲーム何かじゃない。

紛れもない現実の世界よ。

だから私も、フレイアもゲームのキャラクター何かじゃない。

私は、私の意志で、私の選択で、フレイアの恋人になったし、フレイアは、フレイアの意志で悪役なんかじゃなく、私の恋人になったのよ。」


「そうですわ!!

私《わたくし》はげぇむのきゃらくたぁでは無く!!

ここに存在する一人の人間!ですのよ!!」


「…っ!?

まさか…貴女達二人も…!?」


「いえ、転生者は私だけよ。

フレイアには、私が前世の記憶が有って、フレイアが大好きである事を言ってあるけれど。

それに、この国には『日ノ国』って言う日本人の組織があるからフレイアはマンガ・アニメ・ゲームの知識も、前世の概念も、ある程度有るわよ。」


「なっ…なっ…それじゃあ…この世界は…?」


「だらか言っているでしょう?この世界は現実の世界。

どれだけ『紅の氷花』に似ていようと、王子はオタクで、炎の貴族は処刑済みで、闇の貴族は私の弟の恋人で、私の執事にはクローン魔法で幼女に生まれ変わった婚約者が居る。

貴女の攻略対象は何処にも居やしないのよ。」



…まぁ…厳密にはオタク王子は攻略可能でしょうけど。

ただ…異常にフィギュアやオリエントなラブドールを愛でてて気持ち悪いわね。

それ以外は比較的まともで、人当たりも良いのだけれど…本当に、残念なイケメン過ぎるわ…


それはともかく、主人公…フリージアは最早血走った目で剣を構えた。



「嘘だ…ウソダァァァァァッ!!

殺してやる…!アンタ達ナンカ…殺シテヤルゥゥゥッ!」


「…愚かね…。」



剣を腰に構え、腹に刺す様に突進してくるフリージア。

動きがド素人過ぎるわ。



「フッ。」


「かかったわね!?

サンダーソード!!」


「―!?」


「ステラーッ!!」



私は、軽く避けて反撃に出ようとした…けれどいきなりフリージアの剣が電撃をまとい、私は感電してしまう…!

単純な構えはブラフ!?

くっ…油断したわ…!



「あははッ!!死んじゃえっ!!」


「させませんわよっ!!」


「はっ!!悪役は消えなさいッ!!

アイスランサー!!フレイムジャベリン!!シャドウエッジ!!ライトニングブレイド!!」


「なっ!?

1度に4種類ですの!?

っ!アースウォールッ!!」


「あハハはハハハ!!これで終わりよッ!!」



痺れた私を助けようとしたフレイアは、フリージアの圧倒的魔術に全く近付けない…


フリージアは憎悪に満ちた表情《かお》で私に剣を降り下ろす…



「っ…!」

(動きなさい…私の身体ぁぁっ!!)


「チィィッ!!」



私は、寸での所でフレイアの医療魔法が届いて横に転がって回避、何とか避けたけどこれじゃあ…!



「ステラッ!!」

「フレイアぁぁっ!!」



(!)フレイアとリンクが発生しました

フレイアとパーソナリティーを共有します

フレイアとテレパシーが可能になりました


…えっ…?


※なんなのこれぇっ!?;


フレイア!?

貴女の声が…私の頭に直接聞こえるわ…!


※わっ…わたしもだよ…!

何だか…力が沸いてくる!!

ステラに抱き締められてる感じがして…安心する…!


私もよ…フレイアが側に居る…それだけで負ける気がしないわ…!



「っ!!やぁぁぁっ!!」


「なっ!?」


「フレイア!!」

「ステラ!!」


『アイスバーン/フレイムボムッ!!』


「きゃぁぁぁぁっ!?」


「っはぁっ!!」



フリージアを氷の溝に落として爆破した私は、一気に距離をとり、フレイアの隣に立ったわ、叫び声に混じってなにか聞こえたから、恐らく今の不意打ち気味の魔術は当たって無いかも知れないわね…。



「…やってくれるじゃない…!

許さない…絶対に…殺してやる…!

オールソードダンシングッ!!

細切れになりなさい!!

フレイム!ウィンド!アイス!アース!ウォーター!サンダー!ダーク!ライト!それそれそれぇっ!!」


「「…!」」



何よこの異常な数…!

空を埋め尽くす様々な色の剣が雨の様に降り注ぐ…!

こんな数…避けるなんて出来っこないじゃない…!


※…それでも…やるしか無い…!

そうだよね?ステラ!!


…ええっ!



私もフレイアもレイピアを構え…お互いに支援魔法をかけ合い…魔法障壁を纏い…



「やぁぁぁぁぁぁっ!!」

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」



降り注ぐ剣を弾く…弾く弾く弾く弾く弾く弾く!!


ひたすら!!がむしゃらに!!

力の限り!!

場所を入れ替え!

時にはすれ違い!

とにかく剣を弾いた!!




「これで!」


「終わりですわっ!!」


「なっ…なっ…なっ…!?」


「「貴女みたいなデイドリーマーに!!私達は負けないッ!!」」


「―!」



私達は勢いをそのままにフリージアへ突進し、殴り飛ばした!!



「はぁ…はぁ…

「っ…く…ぅぅ…



「な…ん…で…よ…。

何で…悪者が…幸せに…なれるのよ…。

悪者は…悪者…なのに…!」


「…っ…ふぅ…貴女も可哀想な人ね…。」


「…。」


「悪者悪者って、フレイアは原作でもこの世界でも!!只の可愛い女の子よ!!

それに気付けず!!

何の罪もないフレイアの死を望む貴女は!!只のクズよ!!」


「―!」



そう言って私は、フリージアの顔面スレスレにレイピアを突き立てた。

それで…フリージアは気を失った…。




「…これで…本当に終わりよ…紅の氷花なんて…フレイアが救われないクソゲーは…!」


「…ステラ…。」


私が吐き捨てる様に呟くと、フレイアが心配そうな顔で近付いてきた…

そんな彼女に、私は真剣な顔で向き直る。


「…フレイア、改めて言うわ。

私の…婚約者になってくれるかしら…?」


「…当然ですわ…

ううん…もちろんおーけーだよ♪

ステラ!!」


「…ありがとうフレイア。

私は…必ず貴女を幸せにするから…。」


「何言ってるの…?わたしはもう、幸せだよ♡」




こうして、私はフレイアを嫁にしたのだ…









ステラ「これが、私とフレイアが婚約した時の話よ。」


ユウキ「うん…。

色々突っ込み処は多いけどとりあえず一言。

気 絶 さ せ た 主 人 公 放 置 し て 何 や っ て ん の 二 人 共 !?;」


ステラ「えっ?勿論あの後病院に連れて行ったわよ?」


フレイア「いくら敵とは言え、それ位は当然の義務ですわよ。」


ユウキ「あぁそう…;」



どうやら二人はマジでシナリオ完全無視の百合√ENDへ行ったらしいです…;










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