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全てを捧げた男は神の如き力を手にし、世界を統べる  作者: 神無月 瑠奈
第3章

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第48話

時は流れ、聖教国イェルセシスの中枢機関のある教都の検問所の列にユーティア並んでいた。


「それにしても長いわね……」

「仕方ないですよ。今の時期はどうしても混雑してしまいます。恐らくこれでも少ない方だと思いますよ?」


十五歳を迎え、回復・解呪に特化した天啓を授かった若者の大半は、まずこの聖教国イェルセシスに来る。そこで人体に関する知識習得や実践的訓練。その他にもイェルの教えを学び、身体を清め聖職者を目指す。聖職者の需要は高く、絶対数が少ない故にこうして小まめに教国に足を運び見習いに媚びを売る者が多い。この行列のほとんどがそれだろう。特にこの時期はそれが顕著である

国というより国規模の学校と考える方がしっくりくるかもしれない

因みに実力次第では元が平民だったとしても伯爵級の地位をえられることすらあるらしい。


「なんでわざわざこんな時期にしたの?それならもう少し遅くしても良かったんじゃない?」


ルーチェは額に汗を垂らしながら愚痴を垂らす。


「いや、寧ろこの時期じゃ。この時期は有望な聖職者見習いをスカウトしようとこぞって大勢やってくる。普段見かけない連中がどこをうろつこうとも目立たず動きやすくなる」

「うぅ~ん……けどなぁ」


ルニエルの言葉もイマイチピンと来ていない様子で項垂れ続けるルーチェを横目にユーティアは聖杖を強く握る。


「ユーティアさんはこちらの出身ではないんですよね?入国しようとは思わなかったんですか?」

「えぇ、一応考えはしたのですが、ローランと旅に出るの二択でしたので………」


そう言うと少し照れ臭そうに頬を赤く染める

その反応を見たルーチェは先ほどの鬱々とした感情はどこへやら。その後、検問の順番が来るまでの数時間。ローランとユーティアの関係性について根掘り葉掘り追及し、検問所にたどり着く頃にはルーチェの鬱々とした感情が乗り移っていたかのようにげっそりしていたのだった


・・・・・・・・・・・

時は少し巻き戻り、ユーティアたちを地上へ降ろしてすぐのこと


「それで、貴様はどうするつもりだ?」


ぶっきらぼうな口調でレオンへ問いかける


「おっ、珍しいじゃないか。君から話しかけてくれるなんて」

「ふざけるな。どうするつもりか聞いている。早く答えろ」

「随分抽象的な質問だな。最終的な目的は言ったはずだけど?あと今準備をしているところなんだ。少し席を外してほしいんだけど」


レオンはローランを見向きもせず、淡々と手元の作業を進めながら答える


「確かにお前は強い。癪なことに今の俺では貴様に手も足も出ない。しかし、貴様が手に入れようとしている天使は遥か昔。神がまだこの地を闊歩していた神話の時代からその身に仕えた存在だ。いくら貴様が強かろうと所詮は人間だろ?」

「…………何が言いたい?」


装備の点検をしている手を止め、ローランの方へゆっくりと視線を動かし、腹の底から静かに問う。


「ッ!」


その迫力にローランは威圧される。

レオンが本気で周囲に放つ圧は近づくだけで死を疑似体験させる。そんなレオンの圧をほんの少しでも浴びてしまえば疑似体験とまではいかずともそれに近しい感覚を覚える


「そんな存在がおとなしく人間である貴様の配下におとなしく降るとは思えないんだが………」


震える声で提言する。


「従うさ。それが出来るのが俺の力であり、目的遂行が今も俺の生きる意味だ」


しかし、その程度ではレオンは止まらない。否。もはや止まれないのだ


「力による支配なんてものに意義はあるのか?」

「さぁね……少なくとも俺の守りたいものの中に天使はいない。極論俺の中でのあれらの価値なんて役に立って死ねばいい程度でしかない。だから使うんだそれが全てだ」

「それなら……人間はどうなんだ?貴様の中に入らない人たちを使おうと何故思わない?矛盾していないか?」

「簡単なことだよ。有象無象がいくら集まっても意味がないどころか逆に邪魔なだけ。邪魔しなけりゃ、こっちから危害は加えないよ。オリアン王国は俺の逆鱗に触れたからね。明確な敵意には敵意で返すんだ」

「無関係の王都の人々はどうなんだ?」

「無関係じゃない。あそこに住まう人間は例外なく全て同じ穴の貉だ君は知らないだろうけどね。闇っていうのは案外身近にあるものだ。」


前の時間軸でレオンは見てきた。同じ人間であるはずなのに鎖で繋がれ人権を捨てられた人を。人間じゃないからと迫害されボロ雑巾の様に使いつぶされてきた亜人を。力を示すことで畏怖を以って存在を確立させた獣人王。対局にその美貌と叡智を示し、敬意を以って敬われたエルフの女王ルニエル。しかし、この二人が例外なだけであって未だ、亜人を攫い奴隷とする輩は多い。その世界をレオンは見た。だからこそ言える。あそこにいた連中はソレを知って尚王都を、オリアン王国を出ようとしない。つまり同族の集まりなのだと。


「王を殺すついでに軽く掃除をしただけだ。どうせ、いても役に立つどころか邪魔にしかならない連中だ。せいぜいが肉壁程度が関の山。そんな連中いらねえよ」


量より質。ただ、ひたすらに、貪欲にレオンは質を求めるのだった。


「貴様は悪魔だ」

「俺としてはあそこの連中にこそその表現はふさわしいと思うな。まぁ、なんとでも言えばいいよ、ルニエルにも言ったけど俺は目的の為ならそれ以外の生き死には問題ない。勿論守りたいものの中に君のご両親も入っている。そこは安心していい」

「貴様が歩む道の先が地獄だったとしても進むのか?」

「承知の上だよ。例えそれが君の進む正道ではなく、邪道だったとしても。すでに戻る道は絶った」


そう言うとレオンは踵を返し、その場を去ってしまった。残ったローランは一人静かに何もない壁を見つめる他なかった


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