第20話
……と、過去の記憶を掘り返しつつ今や魔物の一匹すらいなくなり、自身で整備した魔の森の中を歩く。その行先はこの天空雲城の中心。エルフ族が建造した建物。千年孤塔と名付けた塔へと向かう。
塔へ入ると最上階まで急ぎ足で上る。レオンが談話室と呼んだそこは魔力暴走の一件以来魔力だまりと化し、この天空雲城の中でも特に魔力濃度が高くなってしまった。そして、現在。そんな人が入れば卒倒しかねない魔力濃度の場所に三つの大きな卵がそれぞれのクッションの上に置かれている
「うん、元気に魔力を吸収し続けているな」
レオンはそんな卵たちに触れ、魔力を吸い続けて言うかの確認をする
そう。この過程こそドラゴンが最強種と呼ばれる所以なのだ。ドラゴンは卵の頃に母竜から大量の魔力を吸収する。この量によって成長の速度や成長後の強さが変化する。大量に吸収すればそれだけ強く……そして、より強力な能力を持って産まれる。逆にこの時点で魔力の吸収量が少なければ孵化後も弱く。他の同時期に孵化したドラゴンに殺されるか、体を動かすだけの魔力を保有できず衰弱死する。
弱肉強食は孵化する前から始まっているのである。
その点。ここは三つの卵に満遍なく魔力を吸わせられるだけの量と質がある。それに魔力だまりが消えかかるほど吸収されたとしても一日に一度レオンが魔力を放出するだけで元通りとなるのでレオンが地上で増殖する魔物を狩りに行ったとしても問題なく卵たちは魔力を吸うことが出来るのである。
レオンは内心少しワクワクしていた。産まれてくるドラゴンが強ければ強いだけ戦力の補充にもなるし、もし歯向かってきたとしても黙らせることが出来るだけの自負があった
「俺の魔力をたっぷり吸収して産まれて来いよぉ~」
そう言って三つの卵をゆっくりと。優しくなでるのだった
・・・・・・・・・・
「って言ってどこかに行っちゃいました」
「…………」
ルーチェの報告にグランテは無言で頭を抱える。その傍にはレオン以外このファーストテイルでは誰も受けられないA級やS級の高難易度依頼の用紙が山のように積まれている。
「一応周辺の魔物は定期的に狩ってくれるそうですけど……」
ルーチェはそういいながら一歩、二歩と後ずさり始める。それもそのはず。グランテから漏れ出る魔力が周囲に圧を与えているのだ。
「す、すいません。他の冒険者の依頼精査がまだ残っているので失礼します」
そう言って、一礼するといそいそとその場を離れようと後ろにあるドアへ歩く速度を上げる。しかし、
「待て。君にはそれ以上に重要な案件を任せたい」
「……それって任意ですか?」
天を仰ぎ、目を伏せながら一縷の希望を胸にグランテへ問いかける
「もちろん……」
そこでルーチェは満面の笑みを浮かべるが、次の言葉によって地獄へ突き落される
「強制で」
いやゃゃゃゃゃ~~~~!
その日、支部長室から聞こえてきた悲鳴はその外にまで響き渡りあらぬ噂が広まりかけたのは叉別のお話
・・・・・・・・・・・
「ん?」
レオンは卵を撫でる手を止め、耳を外へ傾ける
「空耳……だよな」
一瞬誰かの悲鳴のようなものが聞こえたレオンだが、そんなことはありえないと首を横に振り、さらに魔力を放出する。ここ最近魔力だまりの魔力の減る速度が急激に上昇しており、一日に一回の補充でよかったはずが二回、三回と数を増やさないといけなくなった。おかげでここ数日魔物狩りに行けず、ずっとこの塔に引きこもっている
ちなみに食事は予め用意していた非常食……ブレスレットにため込んだ魔物の肉を調理し食べている
「これはルーチェに頼み込んできてもらった方が良かったか?つきっきりじゃ日常生活すらままならない」
レオンは少し悩む。しかし、それもあと数日の辛抱だろう。このペースで魔力を吸い続ければこの卵たちは数日後には完全に魔力の吸収をしなくなる。つまり孵化の前兆だ。ドラゴンの孵化は魔力吸収がストップしてから凡そ二日から三日ほど時間を置く。そして、さらにそこから数時間かけて自力で分厚い卵の殻を割る。
「あと数日……まぁ、食料もまだまだあるしいいんだけど」
そうして、数日間レオンは絶えず魔力を供給し続けた。そしてついに………




