20話 改めてどうする?
「でさー」
一通り話がまとまったところで、ミリーが不思議そうに尋ねてくる。
「カイ君とルシファル様って、あたしの噂を聞いてここにやってきたのよね?」
「そうですね」
「うむ。我らは悪魔の噂を聞いて、この遺跡にやってきたのだ。そうしたら、ミカエルがいたというわけだな」
「ただの偶然、ってわけかー。なら、これからどうすんの?」
「どうするのだ、旦那様よ?」
「……どうしましょうか?」
外の世界を見たいと言ったものの、なにか明確な目的があるわけじゃない。
現状、ふらふらと気の向くまま旅をするだけだ。
そう告げると、ミリーはダメ出しをする。
「えー、それつまんなくない? ってか、目的ないとダメっしょ」
「ダメですか?」
「ダメダメ。しっかりとした目的を立てて、それに向かって努力することで成長できるし? あたしと結婚したんだから、でっかい男になってもらわないとねー」
「なるほど……がんばります」
もっともな話だった。
僕だけの問題じゃない。
ミリー……それに、ルルも関係している。
二人に見合うような男にならないと、恥をかかせてしまう。
それは男としてダメだろう。
「わかりました。なにか大きな目標を考えたいと思います」
「よろ」
「それなのだが、他の悪魔を探すというのはどうだ?」
ルルが、そう提案してきた。
「妙な縁で、四大悪魔のミカエルと出会い、旦那様の側室になった。ならば、残りの四大悪魔も探し出して、側室に加えてしまうのだ!」
「いえ、そんなさわやかな笑顔で言われても……ルルはいいんですか?」
「なにがだ?」
「僕が側室を迎えることです。今更ですけど」
「構わないぞ? 我ら悪魔は、現世に留まるには人間と契約しないといけないからな。それに、主がいないと色々と困る。そういう意味で、旦那様は我ら悪魔を助けてくれているのだ」
「そうなんですか?」
初めて聞いた。
でも、考えてみれば当たり前か。
悪魔は、全ての点において人間より優れている。
そんな種族が世界の頂点に立たないのはおかしい。
でも、時間制限というものがあるのなら納得だ。
「それに、一夫多妻なんて当たり前なのだ。優れた血を残すためにも、人間社会でも認められていることだろう? それを認めないほど、我は狭量ではないからな」
「それは……って、僕は優れているわけじゃないですよ?」
ただの妾の子だ。
そう思っていたのだけど、ルルとミリーが同時に首を横に振る。
「旦那様は優れた人間……というか、その魂はとんでもなく質が高いぞ?」
「あたしら悪魔からしたら、喉から手が出るほど欲しい魂よね。キラキラと輝いてて、純度が高くて……じゅる、食べちゃいたい」
二人の視線が、なんとなく妖しいような……?
身の危険を感じて、思わず後ずさってしまう。
それにしても、僕の魂は悪魔好みだったのか……
だからルルもミリーも結婚してくれたのかな?
「で、でも勘違いするでないぞ!? 我が旦那様と結婚したのは、その、えっと、あの……旦那様の魂目的ではなく、その心に惹かれて……」
「好き、っていゆーことですねー」
「う、うるひゃい!」
「あはははっ、ルシファル様、激かわいいー」
楽しそうにしている二人を見ると、自然と笑みがこぼれる。
少し前の僕は、生きる意味を見いだせなくて、死ぬことを考えていたけど……
でも、今はもう、そんな気持ちはない。
ルルとミリーのおかげだ。
二人のおかげで、心が温かく、陽が当たるようになった。
感謝してもしきれない。
そんな彼女達の仲間を僕が助けられるというのなら、がんばってみたいと思う。
「なら、ルルが言うように、他の悪魔を探してみましょうか」
「うむ! 各地を回ることになるだろうから、世界を見るという最初の目的も達成できるのだ!」
「ま、仕方ないからあたしも付き合ってあげる。一応、嫁だからね」
二人が一緒なら、きっと楽しい旅になる。
悪魔を探すという目的を大事にしつつ……
でも、ずっと笑顔でいられるようにがんばろう。
「……ところで、旦那様よ」
「なんですか?」
「人間の友達はいたりするか? 大量に」
「いえ……恥ずかしながら一人も」
「ふむ。ならば、この気配はなんだろうな?」
「十を超える人間が近づいてきてるわね」
「えっ」
それはもしかして、ミリーを討伐するためにやってきた冒険者達では……?
「ルル! ミリー! 急いで角と翼を隠してください!」
「え、なによ? いきなりすぎて意味不なんですけど」
「いいから隠さぬか!」
「ふぎゅっ」
ルルにこづかれて、ミリーは角と翼を隠した。
ルルも一瞬で収納する。
それから少しして、武装した冒険者らしき集団がやってきた。
よかった、間に合った……
彼らはミリーを討伐するためにやってきたのだろう。
でも、彼女を討伐させるつもりなんてないし、罪のない冒険者達を傷つけるのもどうかと思う。
ここは、一般人のフリをしてやり過ごすのが一番だ。
そう思っていたのだけど……
「おい、お前がカイル・バーンクレッドか?」
「え?」
いきなり名前を呼ばれて、ついつい反応が遅れてしまう。
そんな僕の態度に苛立ちを覚えた様子で、一団のリーダーらしき男が剣を抜いて、切っ先をこちらに向けてくる。
「カイル・バーンクレッドだな?」
「そう、ですけど……」
「俺達についてこい。これはお願いではなくて、命令だ」
「えっと……あっ」
突然のことに混乱してしまうのだけど……
彼らが身につけている鎧を見て、全てを理解する。
鎧には、バーンクレッド家の紋章が刻まれていた。
つまり彼らは、ドロイドかドロッセルか……あるいは、父親の私兵だ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたのなら、
【ブックマーク】や【評価】をしていただけると、すごく嬉しいです。
評価はページの下の「☆☆☆☆☆」から行うことができます。
反響をいただけると、「がんばろう」「もっと書いてみよう」と
モチベーションが上がるので、もしもよろしければお願いいたします。
次話も読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします!




