21話 おとなしくしろと言われておとなしくした試しはない
「なんだ、こいつらは?」
「なーんか、生意気なんですけど」
ルルとミリーは、不機嫌そうに半眼に。
ギロリと睨まれた兵士は、顔色を変えて後ずさり……
それから、はて? と怪訝な様子で首を傾げていた。
なぜ二人に気圧されたのか理解していないのだろう。
まあ……二人共、見た目は普通の女の子だからね。
どちらも大悪魔なんて、思いもよらないだろう。
「さあ、早く来い」
兵士がそう命令してくるけれど、僕は首を横に振る。
「いいえ、僕が家に戻ることはありません」
「なんだと? 貴様、バーンクレッド家に逆らうつもりか? そもそも、貴様は落ちこぼれとはいえバーンクレッド家の一員だろう。家のため、我が身を粉にして励むという覚悟はないのか?」
「そんなもの、ありません」
以前の僕なら、言われるまま家に戻っていただろう。
でも、今は違う。
ルルがいる。
ミリーがいる。
二人との出会いが僕を変えた。
僕を一人の人間として確立させて、自由にしてくれた。
今の僕は、カイル・バーンクレッドじゃない。
ただのカイルだ。
「……手足の一本は構わん。言うことを聞きたくなるようにしてやれ!」
兵士達はそれぞれ剣を抜いた。
「いきなり!?」
短気すぎやしないだろうか?
それとも、最初からそういう命令を受けていたのか。
どちらにしても、こんな連中に……
今更、バーンクレッド家に関わるつもりはない。
「ルル! ミリー! 逃げましょう」
「む? なぜだ?」
「ってか、もう倒しちゃったんだけど」
いつの間にか二人が動いていた。
その動きは風よりも早く、まさに音のよう。
一瞬で兵士達の背後に回り込んでいて……
そして、兵士達は一人残らず倒れていた。
「いつの間に……?」
「ふふん! このような雑兵、我にかかれば赤子の手をひねるよりもたやすいのだ」
「物足りなさ過ぎて、めっちゃ退屈」
「あ、あはは……」
本当に二人は規格外だ。
頼もしいけど……
でも、ちょっと困ったことになってしまった。
「む? どうした、旦那様よ。なにやら微妙な顔をしているが」
「その……本当は逃げるつもりだったので」
「なんで逃げないといけないのだ?」
「こんなところまで追いかけてくるっていうことは、バーンクレッド家はすごくしつこいと考えるべきです。そんなのを相手にして、二人になにかあったら、僕は……だから、逃げるべきだと思ったんです」
「そっか。カイ君は、あたしらのことを心配してくれたんだね」
「わぷっ」
ミリーは優しい顔をして、おもむろに僕を抱きしめた。
「そういうのポイント高いよ。めっちゃうれしい」
「え、えっと……」
「でも、あたしらを気にすることないから。カイ君は、自分を一番に考えていーよ。ってか、そこらの人間にあたしらをどうこうできるわけないし、カイ君のこともどうにかさせるわけないし」
「うむ、そういうことなのだ」
僕とミリーを引き剥がしつつ、ルルが得意そうに言う。
「我らは、旦那様の花嫁。なればこそ、巻き込みたくないとか、そういう水臭い考えは捨ててほしい。一蓮托生というか……楽しいことも苦しいことも共にするのが夫婦なのだろう?」
「……はい、そうですね。僕が間違っていました、すみません」
ルルの言う通りだ。
彼女達を巻き込みたくないけれど……
でも、僕一人で背負うのは、それはそれで違うだろう。
だって、僕らは夫婦なのだから。
「ちゃんと二人を頼るようにします」
「うむ」
「そそ」
「でも、二人も僕を頼ってくださいね? 力は弱いですが、他に、なにかできることがあると思いますから。困ったことがあったら、遠慮なく言ってください」
そう言うと、ルルとミリーはにっこりと笑うのだった。
「ところで……」
倒れている兵士達を見る。
「殺してしまいました?」
「いや、生きているぞ」
「殺すのは簡単だけどね。ま、カイ君が嫌がるかなー、って」
「ありがとうございます」
ひとまず、倒れている兵士達を一箇所に集めて、まとめて拘束した。
ルルに魔法を使ってもらったので、逃亡はまず不可能だ。
「どうするのだ? 拷問か?」
「あたし、魔界の最新の拷問知ってるわよ?」
「いや、しませんから」
サラッと拷問という単語が飛び出してくるあたり、二人は悪魔なんだなあ、と思う。
まあ、悪魔だとしても、大事な花嫁には変わりないけれど。
「拷問はしないけど、ちょっと聞きたいことはあります」
「……」
「もう起きていますよね?」
「気づいていたか」
二度、声をかけると、部隊を率いる兵士が目を開けた。
「今の僕は……まあ、ちょっと普通の状態じゃないので、意識があるかないか、わりと簡単に判別できますから」
ミリーとキスをしたことで、色々と能力が上がっているのだろう。
力があふれてきて、なんでもできるような気が
「聞きたいことがあるんですけど、答えてくれませんか?」
「……」
「ダメですか?」
「……」
返事はない。
つまり、そういうことなのだろう。
「わかりました。なら、無理に聞くようなことはしません」
「……そこの女が言っていたように、拷問なりなんなりしないのか?」
「そういうのは好きじゃないので」
「俺達は、バーンクレッド家に仕える者だぞ? それなのに、か?」
「それなのに、です」
ドロイドやドロッセル。
そして、父親に対して思うところはある。
でも、彼らの関係者というだけで暴力をぶつけていたら、それはもう、彼らと変わらない。
僕は、彼らと同じレベルに堕ちるつもりはない。
「このまま放置させてもらいますけど、安心してください。たぶん、しばらくしたら冒険者がやってくると思うので」
「……甘いヤツだな」
「非情な人よりはいいかと」
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