終章 その13 『野山の花々 vs 雪華草 3 シモ・ハユハは眠らない。』
決勝トーナメント一回戦。
野山乃花達のチームとの試合。
第一エンドは雪華草の二点先取で終える。
「リューリサン、ナイスッ!」
セカンドの黄氏青木蘭が手を挙げる。
一応私はハイタッチに応じる。
こんなやり取りをするだけでも、随分と私も進歩したものだと思うわ。
「リューリサン、浮かない顔の方面ですコトネ」
少しぎこちない日本語で黄氏青木蘭が上から覗き込んで来る。
ベトナム人の父親を持つ彼女。
その身体は大きく、迫力がある。
その分スウィープも強力なのだが。
「…分からないわ。でも、何か変ね」
私の最後の一投は狙い通りにハナ達の石を弾いた。
しかし、そこに違和感を覚えたのだ。
何が?と聞かれてもそんなモノ、私にも分からない。
ただ…。
「リューリ!結果は出たケド、もっとハウス広く使おう?」
サードの緑川 紅宇がキンキンと叫ぶ。
雑音。
昨日からの連戦で疲労した身体に、高周波のナイフが突き刺さる。
ちょっと黙っていて欲しい。
言葉にするのにも億劫で、私は目を細める。
ハナと会話をしていたのだ。
氷の上で。
盤面を睨みながら。
初めてじゃないかしら?
ハナとこんなにも話をするのは。
もちろん、私達は一言も言葉など交わしていない。
それでも私達は会話をしていたのだ。
くっつけるショットしてやったら、動揺していたわ。
普段動じないようで、序盤から揺さぶったら慌てていた。
本当にからかい甲斐がある。
次のエンド。
ハナ達の後攻。
そこでもハナと言葉なき会話を交わす。
どう?
石一個分の隙間よ?
あなたに通れるかしら?
通るよ。
お前こそ通れるのかよ?
通るわ。
ホラ。
…あら?
…失敗じゃないかよ?
お前、今日調子悪いよな?
相変わらず体力ないヤツ。
連戦から来る疲労だよ。
あなたのチームならちょうど良いハンデだわ。
それに、あなたには一点しか渡さないわ。
…本当に性格悪いよな、お前。
次は雪華草の後攻。
取り返すわ。
違う。
取られたら取り返す、ではない。
もっと大きな視点を持てよ。
第三エンドでお前さん達が順当に点を取る。
奇数エンドを取り続けて最終第八エンドはどちらが後攻になる?
関係ないわ。
私の狙撃で。
穿つ。
「…ューリ!リューリ!氷が滑ってきてる!コンマ二秒遅く!」
雑音。
「聞いてるの!?リューリ!」
雑音。
リューリよ。
チームメイトの声は聞くべきだ。
だが、緑川 紅宇は喋りすぎでもある。
お前さんの扱いを知らないな。
野山乃花なら。
野山乃花なら!?
でも。
でも、野山乃花は私の敵でなければ困るのよ。
私の弱点も何もかも。
全てを分かっている。
だから野山乃花を乗り越えて私は強くなるわ。
パパの願いを叶えるためにも。
願い?
行き過ぎた願いは呪いだろ?
あと、不器用すぎ。
痛!
お〜イテテ。
お前の狙撃効くなぁ。
БелаяСмертьってか。
正にソレだな。
…減らず口ね。
それで?
どうするの?
第七エンドが終わり、得点は五ー二。
雪華草の三点リードで第八エンドを迎えた。




