終章 その8 野山乃花 『小なりとは言え、それがチームをまとめる者の役割だ。』
十二月。
私達Wild Flowersは全日本高校カーリング選手権、関東エリアトライアルに出場していた。
まぁ出場するだけなら、届出を出せば良いので大した事ではないのだが。
今日、カーリング場の会議室では大会のルール説明会と抽選会が行われていた。
試合形式は一般的なカーリング大会と同様。
リーグ戦を行い各リーグ上位二チームが決勝トーナメントに出場する。
優勝すれば、来年青森で開催される本戦に出場となる。
リーグ戦と言っても三リーグしかないのだが。
各チームがくじ引きを行い、その結果がホワイトボードへ記載されていく。
私は部屋の隅で壁に寄りかかり、その様子を見ていた。
ふと、隣に人の気配を感じるが、キャスケットを深く被り直して、とりあえず無視を決め込む。
さらに「むふ〜」と鼻息で眼鏡を曇らせる。
そして話し掛けるなオーラ全開。
さぁこれで私の絶対領域は破れまい。
「今回も同じリーグにはなれなかったわね」
しかしそんな願いも虚しく、私の心の防御壁をあっさり乗り越え、隣のヤツ…機屋リューリが話し掛けてくる。
お前…最近輪を掛けて面倒だから。
話したくないんだよな。
リューリ達の、チーム機屋改め雪華草と私達のWild Flowersは別リーグ。
ちなみに今まで公式戦でリューリ達と当たった事はない。
今まで数回公式戦はあったが、その都度リーグは別れ…私達がリーグ戦を突破出来ず…リューリ達とは戦えず終いだった。
いや、私は別にリューリ達と対戦を望んでいる訳ではないのだが。
コイツやたらと絡んでくるんだよなぁ…。
「お前さん達が気にするべき相手はエリートアカデミーチームだろが?私達なんか気にしてる場合じゃないだろ?精々別リーグになるように祈っとけよ?」
私はリューリとは目を合わせず答える。
その絶望的に強いエリートアカデミーがリューリ達のリーグに書き込まれた。
心の中で私はガッツポーズをする。
そしてすぐに反省。
相手の不利を喜ぶ事はカーリング精神に反するな。
カーリングの神様、ごめんなさい。
しかしこれで少しはリーグ戦突破の望みが出てくるというものだ。
「勝ち上がりなさい。決勝トーナメントまで」
「自分達が勝ち上がる前提か。危険だぞ、その考えは」
「私はこの組み合わせなら、最低でも二位で予選通過出来るわ」
「バカメ。負けフラグと言うのだそれは」
「フラグ?なんの事か分からないけど、私は負けないわ」
「私達と言えない段階でお前のソレはただのエゴだ。独りよがりだ」
「最後に私が二投決めれば勝てるわ」
「そんなだからお前さんのチームはチームとして成長しないんだ。スキップならばもっと広い視野を持て。いつまでスタンドプレーしてるつもりだ」
「そういうハナのチームも私には練習試合で一度も勝てていないわ。それに個人技を極めて何が悪いのよ?所詮他人は鍛えられないわ。ならば自分の精度を研ぎ澄ますのみ、だわ」
「カーリングは協調性の競技だ。各自の石は一見バラバラだがその実、全てが繋がっている。個々の石を繋いで線とし、以てハウスを制する面と成せ。これが戦術だ。お前さんのはただの戦闘で勝っているに過ぎん。尤も、それ以上の広い視野でチームを創るのが戦略だがな」
「結構。ならば私は個々の戦闘の勝利で戦術を食い破ってみせるわ。勝ちを重ねて、成長したい人間は私のレベルに追い付けば良い。それが私の戦略ね」
最後はお互い睨み合う。
「わからず屋」
「頑固モノ」
ホラ、見ろ。
周りの奴らこの空気で完全に引いてしまっている。
私はこういうキャラではないぞ。
「なら、私に勝ってあなたの正しさを証明してみせなさい」
「よかろう。売られたケンカと勧められたBL本は買う主義だ。私達がお前を倒す…」
…たぶんね。




