第二部 高校生編 プロローグ 野山乃花『始まれば、いつか終わるのだがな。』
四月。
私は地元の公立高校に進学した。
中学校の卒業式と変わらない、寒くて長い入学式が終わる。
「ハナっち〜」
体育館を出ると、後ろから声を掛けられる。
そこには。
写真部で三年生の伊勢原 真紀先輩。
髪は長く、ポニーテールで後ろに纏め頬にうっすらそばかすが浮かんでいる。
活発に動く彼女の動きに合わせて、ポニーテールもぴょんぴょんと跳ね回る。
正に馬の尻尾のようだ。
「にへへ〜♪よ〜やく一緒の学校になれたね!歓迎!歓迎!」
と少し歯並びは悪いが真っ白な歯を見せ、笑う。
こういう笑顔を“屈託がない”と言うのだろう。
私には真似できないが。
「ほら、玲二、門司、挨拶!」
真紀先輩の後ろから見知った顔が現れる。
背が低くて爽やか百パーセントの山城 玲二先輩と、やたらと背が高くて無愛想な長門 門司先輩。
どちらもカーリング部所属。
そして昨年の関東中部エリアトライアルでは私がコーチに就いたのだった。
全く勝てはしなかったが。
「あ。その帽子被ってくれてるんだね?」
頭に乗せた黒いキャスケットをもふもふと触る。
昨年、先輩達のコーチを引き受けた報酬(?)として先輩達から渡されたものだった。
寒さしのぎになるし、私は気に入っていた。
この高校は私服だから、被っていても何も言われないし、寝癖も直さなくて済むし。
「はい。まぁ、使えるので」
こういう時に気の利いた言葉が出てこないな、私は。
「改めてよろしくね、野山さん…いや野山コーチ!」
眩しいくらい朗らかに、山城先輩が微笑みかけてくる。
「それで、カーリング部入ってくれるんでしょ?」
「ええ、まぁ。他にする事もありませんし」
「一年間だけだけど、よろしくね!ハナっち!」
「考えるまでもなく歓迎するぞ」
それぞれの表現でそれぞれが私を迎え入れてくれる。
私はキャスケットを目深に被る。
…照れくさい。
「あ、ハナっち照れた」
そして伊勢原先輩は私の頭をもふもふと叩くのだった。
さぁ、私の高校生活が始まる。




